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「Twitter」⇒「X」へ!?~名前の変更と商標権について~

編著者:King&Wood Mallesons法律事務所・外国法共同事業
弁護士 山本雄一郎(第一東京弁護士会所属)
弁護士 岸知咲(第二東京弁護士会所属)
弁護士 志村翼(第一東京弁護士会所属)


1. 「Twitter Japan」から「X Japan」??

最近、Twitterの動向に注目が集まっています。公式アカウント名が「X」になり、Twitterのロゴマークとして親しまれていた青い鳥(アプリアイコンでは白い鳥)も、「X」のロゴに変更されました。それだけに留まらず、運営会社も「Twitter, Inc.」から「X Corp.」に変わっています。

中でも、日本ではTwitter の日本法人の会社名や公式アカウント名がどのように変更されるのか、話題になりました。もともと、Twitter の日本法人の会社名は「Twitter Japan株式会社」で、公式アカウント名が「Twitter Japan」でした。今回、「Twitter」が「X」になったことで、会社名は「X Japan 株式会社」などになるのか、という話です。仮にそうなると、ロックバンドの「X JAPAN」と被るのでは?商標登録してあるのでは?という指摘が多数されています。

確かに、調べてみると、「XJAPAN」の語は、株式会社ジャパンミュージックエージェンシーを権利者として、商標登録(登録商標第4750523号。以下「本件商標権」といいます。)がされています。

そこで、今回は、仮に、日本法人の会社名や公式アカウント名が「X Japan」になった場合、本件商標権を侵害しないのか、について、簡単にコメントしたいと思います。

2. 商標権について

そもそも、商標権とは何でしょうか。この点、まず、「商標」とは、簡単に言えば、事業者が、自己の取り扱う商品・サービスを、他者のものと区別するために使用するネーミングやマークです[1][2]。商標は、特許庁に出願して商標登録がされれば、「商標権」という権利になります。
よく誤解がある点として、商標権は、あくまで、商品や役務とセットの権利です。何を言っているかというと、例えば、ある商標Aについて、商標権を取得する場合、どの商品(指定商品)や役務(指定役務)について使用するのか、を決める必要があります。権利の範囲も、決めた商品・役務の範囲に限られます。例えば、化粧品について商標権Aを取得した場合は、権利の範囲は、あくまで、化粧品(や、これに類似する物品)についてのAの使用に限られ、それ以外の、例えば、文房具の使用については、権利の範囲外となります。

3. 商標権侵害について

さて、本件商標権ですが、特許庁のサイトで調べてみると、以下に一部抜粋するような商品が指定商品となっていました [3]

第9類
業務用テレビゲーム機、アーク溶接機、自動販売機、消火器、保安用ヘルメット、眼鏡など

第28類
遊戯用器具、ボードゲーム、チェス用具、おもちゃ、釣り具など

(Twitterの日本法人が行っている業務の内容を全て把握している訳ではないので、断言はできませんが、)一見すると、Twitterのサービスとは、重複していないようです。そうすると、現状、日本法人が「X Japan」の名称を使っても、商標権侵害の問題は生じない可能性が高そうです。

ちなみに、現在、日本法人の公式アカウント名は、「X Japan」ではなく、単に、「Japan」と表示されています。

4. コメント

以上のとおり、現時点では、日本での商標権侵害は、問題になる可能性は低そうです[4]
ただ、商標権は、国ごとに登録・発生する権利です。Twitterは、世界的に展開していますので、日本で問題がなくとも、他国では問題になるかもしれません。その意味では、Twitterは、リスク覚悟で、思い切った決断をしたのではないでしょうか。
 
色々と話題のTwitterですが、Xが定着するのかも含めて、今後の動向に注目したいと思います。


[注釈]

[1]
特許庁ウェブサイト「商標制度の概要」

[2]政府広報オンライン「知っておかなきゃ、商標のこと!商標をわかりやすく解説!」

[3]: なお、音楽関連の指定役務がないではないか、と思われるかもしれませんが、ロックバンドの「X JAPAN」については、文字商標としての「XJAPAN」(登録商標第4750523号)の他、図形商標としてロゴマークも商標登録されており(商標登録第3346645号など複数)、そちらの商標権には、音楽関連の指定役務が含まれています。ただ、Twitterの「X」のロゴマークとは、デザインが異なります。

[4]:本論からは逸れますが、実務的には、同一ないし類似するネーミングについては、商標権の他、不正競争防止法(2条1項1号:混同惹起行為、同2号:著名表示冒用行為)などもチェックする必要があります。


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