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「自分で」選ぶという純粋さ

今、私は会社を休んで自分の力で生きるための模索をしている。

会社員になってもう8年にもなる。会社員は本当につらい。心に一切の余裕もない。やる気も会社への貢献したい気持ちもまるでない。家族やパートナーに当たってしまう日も多々あった。きっと友達も傷つけた。

それでも会社に属す以上、「やる気あります」「なんでも挑戦します」「利益たくさん出します」と叫ばなければならない。

実際、別に叫ばなくても会社員として働くことはできるんだろうけど、バカ真面目で手の抜き方が分からない、自己嫌悪が激しいHSPの私にとっては、その生き方は全く向いていなかった。

仕事のデキる人は、飲み会で必ず言う。

「別に失敗しても、しぬわけじゃないんだからさ」

そうやって、強く生きられない。だって失敗したら涙が止まらない、未だに夢で見る。

更に病弱と来た。私は会社員に向いていないと断言できる。

会社員という肩書にはメリットがたくさんある。ローンは組めるしクレジットカードや家の審査にも困ったことがない。

そのメリットにすがって、私は「自分が選ぶ」ことをずっとしてこなかった。
自分で選ぶことには、責任が生じるからだ。


高校だって、教育系の両親が怒らない、父の卒業した大学の付属校を選んだ。そのままエスカレーターで大学に進学した。部活は母の好きな音楽系、就職はなんとなく「通るであろう大企業のグループ会社」だけに絞り、暮らしもなんとなく。無難に選んで生きてきた。

私が選んだことって、本当にない気がする。洋服とか?コスメとか?住む家とか?本当にそれくらい。でもそれだって、「雑誌で見たから」「Youtubeで見たから」「それしかなかったから」選んだもの。

人生を、自分の力で選んだことって本当に呆れるくらいにない。
だから、両親に何かを相談したこともないし、失望させたこともない。

ただ、「好きなこと」だけは、とっても大事にしてきた。


そんな私が、今、会社員を辞めて「自分が好きなもの、こと」で生きていく選択をしようとしている。
この選択に至るまで、実に15年は掛かった。

15年前の学生時代から、こんな暮らしができたらいいのに、と思っていた暮らし。初めて自分で選ぶこと。

心を突き動かしたきっかけは、1年半前の2023年8月に起きた。


ある日。甥っ子が手芸にハマり、「デパートで体験したレジンが忘れられない」との連絡が姉から入った。嬉しい!おばさん張り切っちゃうぞ。ランプや液、モールドもパンパンに袋に入れて、実家に向かった。

甥っ子+ゲストの姪っ子に向け、実家でレジン教室を開催。姉たちが見守る中、たくさんのパーツを作って、待ち時間(私がバリを整えてトゲを無くす間)に彼らは外で走り回る。

夕方になり、そろそろ晩御飯の時間だから片付けしようというときに、こっそり甥っ子が耳打ちした。

「お母さんに、何か作りたい」

心がぐわんと動かされ、脳からの信号か分からないが手が震えた。「作ろう、ばれないように。」

きっと作りやすいのはブレスレット。念のため大量に持ってきたビーズを広げて、甥っ子の真剣な姿を見守った。ゴム製のテグス(ノビロン)にビーズを通していく姿を見ながら、「お母さんはピンクが好きだよね」と助言しながら。

甥っ子は一つ一つ、大切に選んでいた。デリカビーズの大き目なパーツを一つ一つ選ぶのは、なかなか大変なこと。でも、全部同じ色にすることもできただろうに、一つ一つ選んで、つなげていく。

その姿が尊く、そして純粋だった。

このパーツかわいいよ、と勧めたものを受け入れたり、「これはいい」と拒否したり。私はそのひたむきで純粋な感性が楽しく、構い続けてしまった。ごめんね、甥っ子。邪魔だったでしょ。

ブレスレットができる頃には外遊びに付き合っていた姉も帰ってきており、隣で見守っていた。「へえ、ピンク好きなんだね。☆のパーツ持ってきてよかったね」と声を掛けている。

大切に結んだあと、姉に「はい、これ、お母さんに」と渡す。

甥っ子は小学生。反抗期や思春期を間近に控えた男の子が、自分で選んで、自分の手で作った、お母さんへのプレゼント。

姉はびっくりしながらすごく喜んでいて、私は泣きそうだった。家で帰って、思い出しながら、姉にLINEで事の顛末を伝えながら、泣いた。

そう、手芸はお手本に沿って色んなものが作れるけど、自分で選んで「相手にプレゼント」することができる。私も色んな人に提供できたら、幸せなことだなと思った。


そんな出来事があり、それから異様に手芸に熱中した。絵を描くこと、水彩、油彩、なんでも手を出した。アートってすごい。自分がしたことが目の前に現れる。それを色んな人に見てもらえる。

やっぱり私は、手仕事が好き。

初めて自分で実感した、自分だけが愛する、自分で作り出したもの。

私は、会社員を辞めて、手仕事を頑張ります。


#自分で選んでよかったこと


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