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福丸小糸から自己肯定感の問題を見る

(2021年02月20日追記:今更ながらpSSR『[おみくじ結びますか]福丸小糸』実装に伴う加筆修正、およびその他の修正を行いました。)

こんにちは、ソメヤです。
何か月か前に、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下シャニマス)というゲームを始めました。

所謂「アイマス」シリーズ、名前自体は結構昔から認知してたのですがゲームそのものはやったことがありませんでした。やってきた感想として、これからする主題に繋がるんですが、『シャニマス』ってアイドル一人ひとりに漫画みたいに物語上分かりやすい個性とかじゃなくて、現実的な、色々な悩みとかを抱えこんで出来た複雑な個性があって、それがめちゃくちゃ良くて、私の想定していたアイドルプロデュースゲームとは良い意味で乖離があって…(略)

本題に戻ります。今回書き連ねるのは福丸小糸ちゃんについてのお話。
福丸小糸ちゃんはこの子です。↓

note_福丸小糸1

内弁慶な小動物系の女の子。真面目な努力家で、勉強が得意。騙されやすく、幼なじみによくからかわれている。高校1年生。(公式HPより引用)

可愛い~~~~~!!!!

小糸ちゃんは最近新しく追加された「ノクチル」というユニットのメンバーで、4人は幼馴染という設定です。他の3人についてもそのうち書きたいな…

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この「幼馴染」という設定が重要で、小糸ちゃんのプロデュースシナリオは他の3人との関係性や自身の過去を中心に語られていきます。

今回は小糸ちゃんの話を「自己肯定感」というテーマを通して、要約や感想を含めて考察していきたいと思います。

注1)以下、この記事では福丸小糸の通常のプロデュースシナリオに関してのネタバレと、2021年1月1日実装分([おみくじ結びますか]福丸小糸)までの福丸小糸関連コミュの若干のネタバレが含まれます。ご了承ください。
注2)あくまで一般人でニュービーな一オタクの考察に過ぎないので、結構考察に抜けがあるかもしれません。なので、足りないと思った部分は「こういうシーンもあったよ!」とか「こういう視点もあるよ!」みたいな形でコメントとかで補足をしてくださると嬉しいです。人はみな一人では生きていけないから…


『何者でもなかった彼女』

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ある日、アイドル事務所283プロにアイドルオーディションにやってきた福丸小糸。彼女がアイドルを志望した動機は、「幼馴染たちがアイドルになったから」。ここでいう幼馴染とは先述した通り、浅倉透をはじめとした後のノクチルメンバーのことです。
彼女がオーディション会場に駆け込んだのは「このままでは幼馴染たちから取り残されてしまう」という焦燥感からの行動で、正直なところ小糸自身はアイドルになるつもりは無かったのです。
それゆえ、彼女の「アイドルとしての目標」はクソほど不明瞭で、プロデューサーからの「どんなアイドルになりたいか」という質問をその場で答えられず、今後の活動の課題として与えられてしまいます。

このように、序盤からすでに小糸ちゃんの「自己肯定感の低さ」が垣間見えてしまっていますね。

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↑学力は確かなもののようで、高校はなんと新入生総代!
 しかし彼女はそれを当然と考えていて、驕る様子もほとんど見られません。


『束縛』

アイドルとしての生活が始まってから少し経った日のこと。
彼女は家庭に対してややネガティブな印象を持っているようで、自分がアイドルになったことを両親に伝えられないままでいました。

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↑露骨に両親の話題を避ける小糸ちゃん。きっと書類も自分で書いてきたのでしょう(それはヤバくない?)

アイドルになる以前は勉強一筋であったことを伺わせる発言や、親にアイドル活動のことを話していないという展開を重ねると、彼女の家庭は厳格であり、アイドル活動などに関してもあまり肯定的な立場ではなかった(少なくとも小糸ちゃんはそう思っていた)ことが推測できます。


(厳格といっても、恐らく小糸ちゃんの家庭は虐待親・毒親といった崩壊した家庭の類ではなく、むしろ世間の目には「両親に大事に育てられたお嬢さん家庭」に見えたのではないかと思います。学校にもちゃんと行かせてるし服装や仕草からも育ちの良さを感じるので。しかし、「あなたならできる」といった手放しな期待で、彼女の家庭は知らず知らずのうちに彼女の自己肯定感を削る環境になっていったのではないかと思います。実際に教育学等の分野においてもこういう問題は度々議論が挙がっていて、他人が付け入る隙がほぼ無く、両親が好意でやっているので結構厄介だったりします)


…さて、ここで問題が発生。やはり確認は取るべきだと思ったプロデューサーが小糸ちゃんの家に電話をかけてしまい、遂に両親アイドル活動の件がバレてしまいます。プロデューサーは両親が何も知らなかったことに驚き、両親は娘がいつの間にかアイドルになっていたことに驚き。

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↑「中学校はみんなと違う学校だった」という発言。彼女のみ他の幼馴染とは違う「進学校」に進学した?

最終的にこの件は、「アイドルと勉強を両立すること」という事を条件に穏便に収まったのですが、この条件は彼女の「ちゃんとしなきゃ」という気持ちと、「幼馴染に置いていかれたくない」という気持ちを増幅させることとなり、彼女をさらに苦しめることになります。


補足:『幼さ』

彼女の初のSSR『【ポシェットの中には】福丸小糸』を手に入れることで見ることができるコミュで、小糸ちゃんは「遊びたい」という気持ち(ギャル的な意味の遊びたいという気持ちではなく、自然的な意味での遊びたいという気持ち)が人一倍強いことが明かされます。

プロデューサーと事務所に戻る途中(?)に公園を見かけるのですが、彼女はそれに強い興味を示します。

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↑高校一年生の身でありながら公園に食いつく小糸ちゃん。冗談で言ったつもりのプロデューサーもやや引いている

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↑スプリング遊具に初めて乗ったかのような発言。みなさんは乗ったことありますか?

勉強による『束縛』は、彼女の本来成長とともに消えるはずの『幼さ』を取り残させてしまったのではと推測できます。

小糸…これからはいっぱい遊ばせてやるからな…


それとこれはややこじ付けに近いですが、小糸ちゃんはお菓子も好きなようで、プロデューサーや幼馴染(特に円香)からよくお菓子を与えられています。
事務所内には園田千代子さんを筆頭にした甘いもの好きアイドルが多く所属していて、お菓子が飛び交うのは日常茶飯事だったので特に違和感は感じなかったのですが、これがもし両親にお菓子を禁止されていた反動だとしたら悲しすぎる。マイナスな妄想ばかり広げるの良くないな。

追記:『コンプレックス』

2021年1月1日実装のpSSR『[おみくじ結びますか]福丸小糸』から。

みての通り小糸ちゃんは実装されているアイドル内で最も背が小さく、見た目からも子供っぽい印象を受けるのですが、そのことに対し彼女自身は強いコンプレックスを持っているようでした。

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↑念願のモデルの仕事!しかし、それは彼女が本当に望んでいたものとは異なっていて…

コミュを見る限り、彼女は他の人が持つ高身長や大人っぽさに対し強い羨望を持っており、対して自分の幼さ=不足していると無意識のうちに認識しているようでした。
もちろん、「大人っぽくあること」が絶対的に優れているかというとそんな事はなく、彼女の持つ幼さも個性の一つで、ある意味強みではあるのですが、彼女はそういった自分の良さを上手く認められていないのが見て取れます。

その後彼女が『子供』としてのモデルの仕事を経てある“気づき”を得るのですが、詳細は是非コミュを見て確かめてみてください。全編通して良かったです。

『努力とは』

彼女が勉強漬けの毎日から逃げ出さずにそれを「是」としていた背景として、幼馴染の存在がありました。幼馴染の3人はいわゆる天才肌で、才能や適応力が自分(小糸)と比べて段違いでした。しかし、自分にはその才能が無かったから、地道に努力を積み重ねて、何とか追いつくことしかできなかった。(まあ天才肌という点も結局のところ小糸ちゃんの主観的視点でしかなく、実際は他の3人も3人なりに悩みや欠点を抱えているのですが)

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↑努力をしている、頑張ってると思われたくない小糸ちゃん。新入生総代で驕らなかったのもこういう気持ちの動きがあったのだと思います。

そして、この記事を書くにあたって再び小糸ちゃんをプロデュースし直したことで気が付いたことなのですが、小糸ちゃんは休ませようとすると

「あ、えっと、ですね……わ、わかりました……」

と何か嬉しくなさそうなリアクションをします。休みなのに。
これにはちゃんとした理由があり、自己肯定感が低い子の特徴として「必要以上にがんばり過ぎてしまう」というのがあります。
小糸ちゃんにもその傾向があり、シナリオのほぼ全てのレッスンシーンで自分でも加減が分からないまま、とにかく必死にレッスンを行っています。まるで自分はこうして必死に努力をすることでようやく価値が生まれて、休んでしまったら自分の価値(居場所)が無くなってしまうんだと言っているように。

プロデューサーの「休んで良いよ」という声は、当初彼女にとっては「君は必要じゃないよ」という風に聞こえていたのかもしれません。

また、公式HPのキャラ説明で記されていた「内弁慶」という点、小糸ちゃんがプロデューサーや幼馴染に対して「私がいないとだめなんですよ~」なんて言うのは「弱みを見せてはいけない」という、自信の無さの裏返しから出ているもの(もはや虚勢のそれですが)のように取れます。

ですが、そんな小糸ちゃんの在り方は、プロデューサーとのアイドル活動を通じて徐々に変わっていきます。



『確立』

「努力ができるってことも、特別な才能のひとつだ」

このプロデューサーの一言に、小糸ちゃんは救われます。努力を「必然」と考えていて、あまり他人にも見せようとしなかった彼女は、それを才能としてプロデューサーに認められたことに戸惑いを感じましたが、同時に喜びも感じていました。

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↑俺も嬉しい!!!!!!!!

自分の努力=才能と結び付けられるようになった彼女は徐々に自分を認められるようになっていきます。

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↑今までひたすらやってきた(やらされてきた?)勉強も、「努力ができる」という能力を養っていたという意味で、決して無駄ではなかったという気付きを得ます。

自分の「価値」をようやく見つけることが出来た小糸ちゃんは、徐々に理不尽に自分を責めることも少なくなっていきます。


(個人的意見↓)
私は小糸ちゃんのシナリオを最後まで見て、ある「教育の問題」を思い浮かべました。このシナリオは現在の社会に蔓延る、学力主義への反命題であると。

かくいう私も高校時代、小糸ちゃんのように「勉強は出来るが自己肯定感が著しく低く、自分の未来のビジョンが不明瞭」な同級生を死ぬほど見てきましたし、自分にもその傾向がありました。学力を重視するあまり、子どもたちの肯定的な評価を疎かにしてしまっている環境がどこかで出来上がっていたのだと思います。事実、世界的に見ても日本の子どもは10代を過ぎると急激に自己肯定感が下がる傾向にあるという研究結果があり、これはちょうど中学受験と高校受験の時期に重なります。受験戦争の波に飲み込まれ、自己肯定感を徐々に削られていった方はきっとそう少なくないはずです。

小糸ちゃんはアイドル活動を通して自分の価値を見つけ出しましたが、もしプロデューサーと出会わなければ、彼女はずっと自己肯定感の低いまま、幼馴染に対してもびくびくしながら社会を過ごすという状況になっていたことでしょう。

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アイドルの頂点を決める祭典、W.I.N.G.優勝後の話に移ります。

優勝後お決まりの夜の公園で、小糸ちゃんは自身の「アイドルとしての目標」を語ります。

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↑プロデューサーの「どんなアイドルになりたいか」という質問に対してのアンサー。この子優しすぎるよ…

「居場所」のない子たちの「居場所」になるという形でアイドルとしての答えを得た彼女。かつて見つからなかった自分の「居場所」を見つけることができた自らの経験を糧に、アイドルとしての道をこれからも歩んでいきます。小糸、幸せになってくれ……


まとめ

長々と書いてきましたが、まとめると小糸ちゃんのプロデュースシナリオは、彼女が自分の「努力ができる」という点を才能として認識し、自己肯定感を高めていく物語、というふうに解釈できるかと思います。

しかし、とりあえずのアイドルとしての答えは得ましたが、依然として彼女の行動ルーティンには「幼馴染」という存在が組み込まれており、独立という点ではまだ出来ていない雰囲気があります。なので、今後は更に「自分」というものを確立させていくことが彼女の課題になるかと。これからのノクチルやシャニアイドル全体との関わりに期待ですね。


…メチャクチャ長くなってしまった。何日間かに分けて書いたので、もしかしたら誤字とか表記ゆれとかあるかもしれません。既に記したように、他の意見があれば、ぜひコメント等で教えてくださると嬉しいです。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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