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2024年7月のひとこと映画感想日記


街の上で

『アンメット』での圧巻の演技も記憶に新しい、若葉竜也さんが主演の映画『街の上で』。

先月、綾辻行人さん原作の『十角館の殺人』を観るためにHuleに登録したので、せっかくなら観たい映画は観ておこうと思って視聴した作品。

観るのは『愛はなんだ』以来の今泉監督作品が描く世界は、いつだって現実と地続きにひっそりと存在している気がする。

あまりにも自然に下北沢に溶け込んだ日常は、ちょっとした悲しみや喜びに気を取られて、足元がおぼつかなくなってしまう。

情けないけど、憎めない。
そんな若葉竜也さんの演技。良い。

ルックバック

まったく事前情報を入れずに観にいったのだけど、とうてい涙を堪えきることなんてできなかった。横の同い年くらいのお兄さんは、上映時間の半分くらい泣いていたような気もする。

小さいころに感じていた自意識、ただ好きなことに熱中する時間。そして、自分の得意なもので優越感を抱く瞬間。あまりにも身に覚えのある光景。

ただ、たいてい成長するにしたがって、自分よりも圧倒的に才能があるように思える人間が、自分よりもはるかに努力していることを知る。

そして、そんな現実を目の当たりにすると、想像しているよりも簡単に心は折れてしまう。

今までの日々は何だったんだろう。
あの、たゆまぬ努力は何だったんだろう、と。

それでも、“たったそれだけ“と思えることで、自惚れも気恥ずかしさも乗り越えて、いくらでも日々を費やせる瞬間がある。

子どもから大人まで、いろんな人に映画館で観てほしい作品だった。

キングダム 大将軍の帰還

数少ない自分が原作を最新まで追っているマンガである『キングダム』。世間での人気とは裏腹に、仲の良い友人で原作を読んでいる人がいなくて、もっと話したいのに話せないのがずっと悩み。

そんな『キングダム』が何年か前に実写映画化されると聞いて、ずっと観たかったエピソードが今作だった。

秦の大将軍・王騎にフォーカスした今回の映画は、最初からアクセル全開で大迫力のアクションシーンが続く。

そして、何よりも王騎役の大沢たかおさんの見事な演技。画面の奥に確かに王騎将軍が存在していた。ところで、次作はどうなるんだろう。

メイ・ディセンバー ゆれる真実

確かめるすべのない真実ほど、恐ろしいものはない。
登場人物、誰もかれも見事なほど見え方が変わっていく。

そして、事実を作品へと変化させることへの違和感が、画面とミスマッチな音楽とともに、観ている自分にも流れ込んでくる。

この作品を観ていると、フィクションとノンフィクションの境目は「事実」であるかどうかだけではないのかもしれないと思わされる。

鏡のシーン、怖かったな。

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

孤独に寄り添うとは、寂しさを埋め合うの ではなくて、溢れそうな想いを互いに受けとめてあげられることだと教えられる。

何よりも音楽がすごく良かった…当時を想起させるようなノスタルジックなサウンド。60年代の音楽をもっと聴いてみたくなった。

冬休みでみんなが帰省するなか、残った寮生が秘密を分かち合うという設定を見ると、恩田陸さんの小説『ネバーランド』を思い出す。

ただ、この作品で冬のホリデイで居残ることになったのは、悪ガキの男子学生と生徒から嫌われている偏屈な教師、一人息子を亡くして悲しみに暮れる寮の料理長。のほほんと休暇を過ごせるはずもなく。

それでも、3人で過ごした日々、彼らだけが知っているアントルヌー(フランス語で”ここだけの話”という意味)が、この先の人生をきっと豊かにしてくれる。

そう願ってやまない、ステキで愛おしい映画体験だった。

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