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海の中の本、2冊読みました

皆さんこんにちは!
ヘキ・ハリです。

最近なぜか精神状態が不安定なので歌みたや曲作りをちょっとお休みして本を読んでいました。
とはいえ、長編小説にのめりこんで云々、ということではなく、文字数が少なくて写真が多い本を少しずつ読みながら、近いような遠いような世界に没入していました。


何を読んだかというと

読んだのは下記の二冊です。

木下紗佑里(2017)『ひと息で挑む紺碧の世界 ――さらなる深海へ』カナリアコミュニケーションズ
シルビア・アール(伯耆友子訳)(2010)『深海の女王がゆく 水深一〇〇〇メートルに見たもうひとつの地球』日経ナショナルジオグラフィック社

どちらも海に関する本をぼんやり探していたら見つけた本たちです。


『ひと息で挑む紺碧の世界 ――さらなる深海へ』

こちらはフリーダイビングという競技の選手によるエッセイです。
この本で初めて「フリーダイビング」という言葉・競技を知る私にも親切で、本の冒頭に競技についての簡潔な説明がありました。潜水距離を競うもの、遠泳距離を競うもの、息を止めていられる時間を競うものがあり、その中でまた分類分けがなされているそうです。

この本を読んでみると、著者・木下さんが本当に潜ることを心から楽しんでいるのが伝わってきました。
もちろん、海というのは危険な場所でもあるので楽しいことばかりではなく、トラウマになるようなことも経験していらっしゃいます。しかし、それでもその恐怖心をありのまま受け入れてまた潜ることを楽しむ木下さん。
その様子をエッセイで見て、「この人は潜ることでマインドフルネスな時間を体験されている人なんだなあ」と感じました。
潜る前には自然と呼吸に意識が向き、潜っている間はひたすら自分と向き合う。
まさにマインドフルネスに必要なことを潜ることで実践されています。
「マインドフルネス瞑想やるぞ!」と意気込むのではなくて、こんなふうに好きなことをやっていく中でたまたま「マインドフルネス」な時間が過ごせた、というのが私の理想です。

また、美しい写真が多いのも印象に残っています。
単に景色として海が美しいというのもありますが、やはり潜っている木下さんの海への愛が伝わってくる写真の美しさも好きです。ほんとうに、すごく楽しそうなんです。海の中にいる木下さんは、人間というよりは水生生物という感じ。それくらい自然に、海の中にいる。

この本を見て私も潜ってみたくなりました。
昔からスキューバダイビングをしてみたいという気持ちはあったのですが、呼吸のための機材を身に着けないフリーダイビングも、私の「いつかやってみたいこと」に仲間入りです。

こちらの本、出版社の記事がnoteにありましたので共有しておきます。


『深海の女王がゆく 水深一〇〇〇メートルに見たもうひとつの地球』

こちらはダイバーではなく、海洋学者のお話です。「Her Deepness(深海の女王陛下)」というニックネームを与えられたシルビア・A・アールさんの著書の翻訳に、日本向けの独占インタビューが追加されている……というものだと思います。多分原著は『Dive! My Adventures In the Deep Frontier』なのですが、Amazonで調べたら値段が……すっごく高いのと結構安いのとで差が激しくて、洋書のお買い物に不慣れな人間は安心して買えそうにない……。

まあそのへんはおいといて。
アールさんも本当に海がお好き。純な心で海と海の中の動植物を観察し、愛し、守ろうとしている姿勢がすごく好きになりました。
知るために現地に赴く――潜水艇や装置を使って潜る――ことを重要視し、水圧の問題で長時間連続で潜っていられないことをもどかしく思う文言がよく出てきました。実際に潜ってアールさんが見たものは、美しい海のいきものたち……だけではなく、死にかけたサンゴ礁や海底に捨てられたまま掃除する人がいない人間によるゴミなど、課題もたくさんでした。
本の後半のQ&Aも含めて「海のためにできることから」と読者に思わせるメッセージが詰まっています。それも、いかにも感情に訴えるような下心が見える感じではなく、淡々と、しかし力強い意思、それから無邪気な愛によるメッセージに感じられました。
これには文体も買っていると思っています(原文を読んでおらず翻訳文からのみの感想になりますが)。シンプルで、しかしゴツゴツした感じがない文体がすごく私好みでした。そして私のみならず他の読者にもメッセージをスッと受け取ってもらうために適切な文体ではないかと思っています。
メッセージだけでなくて、本の中の世界に身をゆだねやすいと感じたのも文体のおかげかもしれません。


この二冊を読んでみて

どちらも写真多めでページ・文字数少なめなのでサクッと読めてしまいます。それでいて、ふと本から顔を上げた時に、意識がまだ海の中に残されている感覚があります。私はこういう読書体験が好きです。

ここ数年は、海水浴にもプールにも行っていなくて、しばらく「水の中」を経験していません(浴槽は除く)。一時期クラゲについて調べていたら、クラゲに刺されると私の大好物が食べられなくなる可能性が高いことを知って海に入ることに対してかなり臆病にもなっています。眺めるのは大好きなのですが。
しかし、この二冊を読んでみて、「私も海の中に行きたい!」という気持ちが強くなりました。機会を見つけてぜひともまた海水浴に足を運んだり、ダイビングを体験したりしてみたいです。

また、自分の体で海に親しむだけでなく、海についてきちんと知りたいという気持ちも強くなり、図書館で見つけて読みかけたままにしていた海洋学や海洋生物学の入門書にもまた取り掛かってみたいと思います。
海についてしっかり知識を持っていれば、守るための行動も具体的に分かりやすくなるでしょうし、先述の「海に対する臆病さ」も減ることでしょう。人間は「知らないもの」に対して恐怖心を抱くのですから。


なんだか思ったより長い記事になってしまいましたが、同時期にパッパッと読了してしまったので、一つの記事にぜんぶ書いちゃいました。
ウーン、読者のことを考える思いやりに欠いている。


紹介した本の各種リンク

木下紗佑里(2017)『ひと息で挑む紺碧の世界 ――さらなる深海へ』カナリアコミュニケーションズ

出版社による書籍ページ

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シルビア・アール(伯耆友子訳)(2010)『深海の女王がゆく 水深一〇〇〇メートルに見たもうひとつの地球』日経ナショナルジオグラフィック社

出版社による書籍ページ

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