正月の振り返り(Pさん)

 薬になる酒を毎日飲んでいる。
 薬用養命酒というのがあるけど、それではないがほぼ同じような成分の、陶陶酒というのがある。同じように就寝前などにショットグラス一杯くらいの量、飲んで健康になるというのがウリなのであり、何に効くのかは全くわからないけれども飲み続けており、大人を殴り殺すのにちょうど良いくらいのサイズの瓶をかれこれ三、四本は空けている気がする。
 期間にしてもう半年か一年は続けていて、何か健康面で変わったところはあるのかといえば、全くわからない。
 けれども飲み続けている。これは、一つには全く健康に差し障りのない状態というのは、主観的に感じるところがないけれども何かしらの不調があったとたん、無性に気になり始めるという性質がどうしても人間にはあり、つまり今陶陶酒のおかげで健康が底上げされているにも関わらずそれをどこも感知してないのであるが止めたとたんにどこかに不調が来るのかもしれないという自分でも雲に棹を差すような疑いだと思いながらもどこか否定しかねるところがある。
 正月休みという雰囲気はだいたい吹き消された。テレビでも、少し豪華な特番が、いつもの周期でやっているという程度である。アメリカとイランが大変なことになっている。諸説飛び交っているけれども実際のところどういう状況なのか、深く勉強してみなければわからない。この二十年の静かな戦争の延長と見れば、大枠は理解出来たつもりになるのかもしれないけれどもそれで充分と言えるのか、そこから今年、何かが踏み越えられてしまうのか、やっぱり、周りの人間の語感から判断してはいけないという気はする。
 それに関する正確な理解というものが、本当に必要なのかどうかもわからない。現況が正しく判断されて、さて何をするかといえば、決められた時間に職場に顔を出し、帰ってから余暇を楽しむということには変わりないのだから、という気もする。
 餅が焼けたところを映像ですらほとんど見なかった。正月周りの数少ない休みも急な仕事で潰れた。近所のインドカレー屋の店員がなんかの都合でメンバーチェンジした。スパイスというものに、改めて感心した。スパイスというのは、辛いものばっかりを指すのではない。何か苦いとか、変な匂いがするとか、なんも味しないけど渋いとか、いろんなパターンがある。
 

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