〈葛の糸に撚りをかけていない事について〉
糸には撚りがかかっているのだ
という事を初めて知ったのは羊毛を紡ぐことを習ったときでした
(参考・「葛布に辿り着いた経緯」
https://sessou-kuzunonuno.tumblr.com/post/190193038702)
一本では頼りなく細い繊維が、束ねられ撚りがかけられると 魔法のように強くなる事を体験した時は感動しました
それまで、「糸」を、知らなかった訳ではもちろんありません でも 糸は糸としてしか見ておらず その成り立ちなど 想像もしたことが無かったのだと思います
そういう訳で、「糸」というと 普通は撚りがかかったものを指すと思います
しかし 私の習った、そして今もそうしている 葛布織りでは 葛の糸に撚りをかけません
静岡の方には 「葛ツグリ」という 葛布織りのための葛の糸の独特なまとめ方が伝統的にされています
それは テープ状に平たい葛の糸に 織る時に出来るだけ撚りがかからないようにするための方法で、織りの中では特殊と思います
その「ツグリ」を習った時に 葛の糸も撚りをかければもちろんとても強くなるが 撚りをかけない方法が伝統的に残ったのは 恐らく 強度を犠牲にしてでも 光沢を優先してきた結果であるのだろう という話を伺いました
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ものづくりだけでなく 仕事は何でもそうだと思いますが、やろうと思えばどこまでもやる事があり際限がありません 織りひとつとっても奥が深く幅も広く 人ひとりの一生など短かすぎると感じるほどです
そのような中 自分は何を根拠に何を選び取っているのか?という事は 常に考えるし 常に終着点がありません
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葛布八寸帯地 無地 「blanc」
https://kuzunonuno.com/blanc/
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