見出し画像

「児童相談所」の大きな権限と厳しい責任

 市のボランティアセンター主催で、児童相談所に長くお勤めになった方による講演があり拝聴したので、内容とともに感想を記します。

 児童相談所の仕組みをご存知でしょうか。私はほとんど知らず。

 小中学生の自殺や、親の虐待による子の死亡などの悲しいニュースで、「児童相談所は保護を見送っていた・・・」などと非難の矢面に立たされるあれです。

 児童相談所は都道府県に置かれる児童福祉の専門機関ですので、そこで働く人は行政職員ということになります。他に、精神科の医師や児童福祉司といった専門職員で構成されているそうです。

 驚くのは、その権限の強さ。児童福祉法第三十三条には、児童相談所の所長は、必要によって親の同意なしで子どもを保護できるとされています。

 これは、警察に置き換えれば、「犯罪を犯しているっぽいので一度逮捕します」ということができる権限が与えられているようなものです。確かに虐待などの事実があった場合は、少しでも早い子どもの適切な保護が期待できる半面、とても大きな責任を伴うということです。

 厚生労働省の集計では、虐待死は全国で年間100人未満だとされていますが、日本小児科学会は、約350人に上るという推計を出すなど、見逃されているケースも多いと考えられ、こうした子どもに対する虐待は深刻な問題。通告を受けた児童相談所が一刻も早い対応に迫られる事情にも納得できるわけです。

 しかし、この権限の大きさや責任の重さ、多岐に渡る業務の抱え込みは問題だとも感じました。保護者と子をめぐる問題について業務が集中しすぎていて、さぞかし大変だろうなと。

 その業務は、相談窓口から調査、面接、診断、判定、その間の子どもの保護や援助、親への指導、さらに親権喪失や停止の家庭裁判所への請求、児童養護施設への入所、里親への委託などに渡ります。

 しかも対応する相談件数は年々増加。全国210か所の児童相談所で対応した件数は13万件超えです。

 私の住む愛知県刈谷市には、「刈谷児童相談センター」という名称の相談所が設置されていますが、その管轄は周辺の5市に渡り、年間1800件近くの相談に20人の職員で対応しているとのこと。

 講演では、「今日、社会が子どもを育て、明日、子どもが社会をつくる」という思いのもとに、その責任の多い業務に長年従事した苦労も語られました。

 児童福祉法では、市町村の対応強化についても書かれていて、私の住む市では、要保護者対策協議会が設置されています。その下に児童部会、DV部会など4つの部会を構成して、地域レベルで家庭問題に対応できる体制をつくっているようです。

 しかし前述のように、家庭問題が見逃されているケースが多いと指摘されていることも事実。さらに細分化された地域レベルでの役割分担や、対応を検証する独立機関の設置など、現状の児童相談所の業務を分割する必要が考えられそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?