学校という「ハコモノ」が日本を救う!
「未来を担う子どもたち」をとりまく現状
お子さんをお持ちの親御さん、お子さんは放課後や土日、夏休み等はどちらで過ごしていますか?もし通いなれている学校が、子どもたちの遊び場として、習い事の場所として機能してくれたら安心だと思いませんか?
子どもの体力低下は調査依頼最低水準にあり、深刻な問題と言わざるを得ません。 さらに、教育格差や貧困問題、人的交流不足など子どもを取り巻く課題は山積しています。将来を担う子どもたちの状況を放置しておくと、日本の未来は明るくありません。
それでは、現在の国や自治体の子ども施策はどうなっているのでしょうか。構想や計画は作成しますが、それらを解決に導く具体的な戦略・戦術は乏しく成果があがっていないのが現状です。
これら諸課題を分析し、解決の糸口をちりばめた提案書としてこのほど、『学校という「ハコモノ」が日本を救う!』=写真=を上梓しました。
私は、教育の専門家ではありません。公共政策「ハコモノ」の専門家として論を展開しているため、学校教育の内容には一切触れていません。人口密集地に鎮座する地域住民に最も身近な公共施設としての「ハコモノ」に着目し、そこを子どもたちの教育・スポーツ・交流の場として生まれ変わらせます。
さらにそこに民間事業者のノウハウやコンテンツを呼び込み、地域に住む大人たち、高齢者、障がい者までもが交流する場に転じれば、日本が大きく変貌することを具体的に提案しています。
学校は年170日使われない
学校を利用できるメリットは数多くあります。広々とした校庭や体育館、さらには保健室、図工室、音楽室、調理室、会議室(学習室)など、さまざまな使い方ができる場があります。これらを備えている公共施設は学校をおいてほかにはありません。
しかし、その充実した施設は1年のうち170日は使われておらず、授業が終わった15時以降も、あまり使われていない状況です。 これまでも「学校開放」という名の下に、一部は地域に開かれてきていましたが、公共施設の有効活用という社会的要請に迫られた消極的な「貸出し」に過ぎません。有効利用に関する法的制約などほとんど存在しない「学校施設」の可能性を改めて問いたいです。
日本では就職したあと、再度、何かを学び直す機会が少ないのと同時に、学び直し自体の習慣も育っていません。しかし、企業人として生き抜くためには、リカレント教育は必須です。 「リカレント教育」とは個人が必要なタイミングで教育を再び受けること。それが実現すれば労働者の資質も向上し転職や起業の成功例も増え、社会全体も活気を帯びてくるでしょう。
日本の教育を考えるうえでは、学校での教育に加え、その延長線上として一生涯学び続ける仕組み(制度)も同時に検討すべきです。子どもの体力低下や教育格差問題、大人への教育、これらに大きな成果をもたらす総合的な施策が必要であり、その場は、日常的に通える学校という「ハコモノ」が最適です。
民間事業者を呼び込む
本書では、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ※)や特区、SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド※)の解説に加え、刑務所に民間ノウハウが導入された事例を紹介しています。
山口県美祢市にある「社会復帰促進センター」では、刑罰担当は当然刑務官ですが、民間業者がその他管理業務に従事しています。この仕組みにより刑務官の仕事負担は激減し、民間のノウハウを得た入所者は健康を保ち知識を得て社会に戻るという仕組みを実現しています。
また、佐賀県武雄市の図書館には、「TSUTAYA」と「スターバックス」が指定管理者として運営に参加し、自治体の直接運営当時と比べ、250%の利用者増を達成しました。 同様のことは学校においても十分可能です。 専門のセキュリティー会社が安全を守り、不登校児には外部の専門家が対処し、貧困家庭の子どもたちには、調理室などを使っての食事を、教育格差解消のための空き教室を利用する塾、音楽室でのピアノ教室、休日下校後の体育館や校庭、プールの使用などなど、実際に決断すればできることはたくさんあります。
「学校PFI」を提案
近年の学校は、教育の質を高めるために、教室などの学習空間に加え、体育館、音楽室、図書室、調理室など多くの機能を充実するようになってきました。このことに対し、私は大賛成です。しかしそれらが数百人の子どもと教員のためだけの空間であれば、非常にもったいない。
今後は、学校教育専用棟「教職員室・教室・専用学習室」と地域との共同利用施設「体育館・音楽室・図工室・調理室・ランチルーム・会議室・学習室」に分離して建設することを私は提案しています。具体的には、未来の学校を想定した「学校PFI」です。公教育として学校が機能を発揮し、私教育は民間事業者が担当する仕組みを最も実施しやすい施設整備です。
その運営者が展開する仕組みを本書では「地域交流デパートメント」として解説しています。
この「ハコモノ」が日本を救ってくれることを信じ、今後も官民協力して未来の子どもたちのための環境を作っていきたいと考えています。