あなたならできる。その言葉に励まされた|「海外」とのつながり
学生たちには、一人ひとりに大切な「つながり」があり、物語があります。
さまざまな人々と出会い、それぞれの経験を積み重ね、自分らしく輝く学生の姿を追いかけます。
思い出すだけでも愛おしい、夢みたいな時間
いつかまた、イタリアに帰りたい。
留学先で過ごしたあの日々は夢みたいな時間で、思い出すだけで、愛おしい気持ちになる。今となってはイタリアは自分にとっての第二の故郷とも言える、大切な存在だ。
神奈川大学の派遣交換留学制度を利用して実現した、イタリアのベネチア カ・フォスカリ大学への1年間の留学。入学当初から海外への漠然とした憧れがあり、大学生のうちに何か刺激的な体験や新しい挑戦をして自分を変えたい。そんな気持ちから思い立った。
留学するなら、まずは英語力を身につけなくてはと、週3、4回イングリッシュラウンジに通うことにした。ネイティブスピーカーの先生や参加している学生と英語で会話しながら、コミュニケーション能力も磨いていった。
参加者のなかで、スペイン留学を控える先輩と出会い、留学に向けた準備についてアドバイスをもらったり、不安な気持ちを打ち明けたりしてみた。留学への一歩を踏み出すことができたのは、その先輩との出会いで刺激をたくさん受けたからかもしれない。
世界遺産の街・ベネチアで暮らすことができたら、素敵だろうな。
それがイタリアを留学先に選んだ理由だった。
英語圏ではない国で、多様な人たちと交流したいという気持ちも強かった。島国の日本では味わうことのできない、国を超えた往来が盛んな、地続きのヨーロッパに留学するからには、イタリアだけにとどまらず、いろいろな国にも行ってみたい。そう思うと、特別な体験ができるのではないかとワクワクしたのを覚えている。
いよいよ迎えた出発当日。飛行機に乗り込むと、楽しみと同時に不安な気持ちが急にふくらんできた。
海外にはほとんど行ったことがない。英語もあまり自信がなく、イタリア語などほとんど学んでいない。友達はできるだろうか。まさか本当に1年間行くことになるなんて…。いろんな思いが胸をよぎる。
留学生活のスタートは、友達づくりへの不安で押しつぶされそうだった。不安と孤独に耐えきれず家族に電話したが、心配をかけまいと必死で涙をこらえた。
人との出会いから広がった新たな世界
そんな自分を変えてくれた出会いがある。
コスタリカから留学してきているルームメイトだ。彼女は、あまり上手に話せない自分の英語を一生懸命聞き取ろうとしてくれる。そして、いつも伝えたいことの意図を汲んで理解を示してくれる。
自分が話す英語がどう思われるのか、理解してもらえないのではないか。その不安で自分から話しかけることができず、殻に閉じこもりがちだった。コミュニケーションだけでも苦労しているのに、毎日出される課題の山。苦戦し、弱音を吐く自分に、彼女はそっと寄り添い、話を聞いてくれた。
「あなたならできる」
あるとき、彼女にそう言われた。
失敗してもいい。自分から話しかけなければ、出会いは広がらない。せっかく留学に来たのだから、悔いのないようにしようと、心に決めた。
それからは、寮で共に暮らす留学生たちに話しかけ、授業で出会った学生たちとコミュニケーションを取り、話せる人が少しずつ増えていった。一度、殻を破ってみたら心が軽くなり、毎日が楽しくなっていった。
イタリア人の友達もできた。留学生向けに開催されたパーティーで知り合った、日本語を学ぶ学生だ。イタリアと日本の食文化について教え合ったり、彼の実家に遊びに行ったりしながら、交流を深めた。家族で過ごす時間を大切にするイタリアの人たちの生活を垣間見て、自分も家族を大切にしようという思いが募った。
人と関わることで、こんなにも世界は変わるんだ。失敗を恐れずに行動を起こすことができるようになった。留学を終えて1年ぶりに接した大学の友達には、まるで別人のように積極的になったね、と驚かれたぐらいだ。
社会に出てからも、いろいろな人と関わり合って、視野を広げていきたい。将来は、世界と日本をつなぐような仕事がしたい。
そんなふうに考えられるようになった自分に、少しだけ自信がついた。
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