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山頂を目指さない山登り ~北八ヶ岳にて~

 学生時代から毎年必ず八ヶ岳に登ることにしています。昨年は、南八ヶ岳の編笠山と西岳に登りました。昨年は、南八ヶ岳でしたので今年は北八ヶ岳方面を夏頃から考えていました。  
 以前、八ヶ岳関連の書籍で目にした佐久側にある「しらびそ小屋」が気になっていました。目的地を山頂では無く小屋にするのは、どうなのかと自問してみるものの、山頂を目指さない山登りもきっと良いのではないかと思い、いざ決行。カラマツの黄葉が美しいこの季節を狙い先日、新幹線と電車を乗り継いで八ヶ岳の麓、小海駅に降り立ちました。
 小海駅から町営バスに乗り、約50分で登山口のある稲子湯に着きます。稲子湯までバスに乗っていたのは私1人だけ。バス下車後、午後の日差しが木漏れ日となって降り注ぐ北八ヶ岳の森を歩き始めました。

 黄金色に色づいたカラマツが西日に照らされ、私の歩く空間全てが黄金色に包まれていました。カエデ類やミズナラの黄葉も良いアクセントになり、黄金色の空間を彩ります。 標高が上がっていくと、カラマツは見られなくなり、モミ類の森へと変化していきます。そして、やや急な登り坂を登りきると、まるで童話に出てくる木こりの家のようなしらびそ小屋に到着です。

 小屋の脇にあるミドリ池のほとりで、しばらく疲れを癒します。風で池の水面が波打ち、周りの木々がざわめきます。時折、森の中から鳥たちが鳴き、静寂が破られます。この空間にいることに喜びを感じ、贅沢な時間を過ごすことができました。 

 夜、テントで早めに夕食を取り、寝袋に潜ります。寒い。体に入り込むような寒さです。また、口の中がよく乾燥しました。乾燥しているがゆえにより寒く感じるのかもしれません。今晩は眠れるだろうか。
  
 トイレに行くために脱皮でもするかのように寝袋から抜け出し、外に出ました。ふと空を見上げると、木々の間から星々が光り輝いています。寒さをもたらす八ヶ岳の乾いた空気は同時に、この満天の星空を映し出すのだなと思ったとき、不思議とこの寒さを乗り越えられそうだと感じました。 

 翌朝、今日は下山するだけでしたので朝食を済ませた後、ミドリ池でゆったりコーヒーを飲むことにしました。たくさんの鳥たちが、静寂の間を無くすかのように鳴き続けます。小屋の方がバードフィーダーに餌を置くと、鳥たちが一斉に近寄ります。その鳥たちを眺めていた時、私の1mぐらい手前に一匹のリスが!つぶらな瞳で私をちらっと見た後、森の中に消えていきました。朝の挨拶をしてくれたのでしょうか。嬉しさいっぱいの中、残りのコーヒーを飲み切りました。

 帰りは、行きと同様に稲子湯に下山。趣のある稲子湯に入り疲れを癒し、小海駅に戻りました。そこから小海線で小淵沢駅まで向かい、周辺のホテルに泊まりました。翌日、小淵沢から薄っすらと白くなった八ヶ岳を眺めながら帰路に就き今年の八ヶ岳登山は終了。山頂を目指さない山登りは、その分余裕ができ山の自然をじっくり味わえると感じた山旅でした。

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