メロンパンのふち
最初からちょっと嫌な感じはしたんだよ。
何か気の強そうというか意地悪そうというか、
キスティス先生の第一印象のまま30年の月日が経過した感じというか、
まあそういう感じのお姉さんがレジ打ちの担当だったから。
ちょっとだけ嫌な予感はしてたんだ。
西宮北口駅の阪急ベーカリーでね、
俺はメロンパンを買ったんだ。
ちなみに阪急ベーカリーてのは文字通り阪急が運営しているパン屋さんで特段美味しくもなければ新規性があるわけでもないコンビニで買うよりは辛うじてマシな程度のパンを一律100円という安価で売り続けている庶民の味方だったんだけど昨今の物価高の煽りを受けて結局150円くらいで売るようになってしまったつまらないパン屋さんなんだけどまあそれは本題ではないのでこの部分は読まなくてよい。
それでメロンパンをレジにもっていって、そのお姉さんに袋詰めしてもらうんだけど、そのときにお姉さんのトング捌きが匠のそれとは言い難いものであったがために、メロンパンのふちの部分がポロポロと割れてしまったんだよね。
わかるかな、メロンパンのふち。
あの、一番美味しいところね。
あ、割れちゃったな、なんて思いながら、お姉さんの動きをさらに見ていると、なんとそのふちの部分をトレーに残したままで袋をとじちゃったってわけ。
俺がちいかわなら、アッ、ワッ、てなきべそをかいていたんだろうけど、あにはからんや、俺ってちいかわじゃないからさ、黙ってじっとそれを見ているしかできなかったんだ。
俺がショターにゃだったら、おばちゃん、そのふちのところもいれてーや!って無邪気に要求できたんだけど、やんぬるかな、俺ってもうおじさんだからさ、できるだけ釣り銭のないように小銭の計算をするくらいしかできなかったんだ。
しかたがないから大人のふりをしてふちのかけたメロンパンを受け取ったら、お姉さんは一瞬の逡巡の表情すら見せることなくさも当然の権利であるかのように、ひとかけ残さずメロンパンのふちをごみ箱に捨ててしまった。
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