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【リアルタイムストーリー】熊に傷付けられ価値がなくなった木が、再び市場で復活するまで

はじめまして。株式会社桑木(くわもく)です。
わたしたちは、石川県白山市の白峰地区で林業を営んでいます。普段は木を何十年もかけて真っ直ぐに育て建築商材として卸したり、山林の管理代行の仕事をしたりしています。
そんなわたしたちが、今回初めてキャンプ用の薪作りに挑戦しました

2022年 5月 24日(火)
「くまはぎの薪」販売開始!

実はこの薪の材料は、熊による「くまはぎ」行為によって傷がつき、捨てられる予定でした。
今回はわたしたちのことや、挑戦に至った経緯についてお伝えしたいと思います。

わたしたちについて

冒頭でお伝えした通り、わたしたちは石川県白山市の白峰地区で2001年から林業を営んでいます。自然豊かな白山の麓で、具体的には以下のような仕事をしています。

木を育てる

建築用材として販売するためにスギの木を育てています。木を太くまっすぐ育てるために、下草刈りや、間伐・枝打ちなどを行っています。建築用材として売れる木を育てるには、早くても40〜50年ほどかかります。わかりやすくお伝えすると、おじいさんが60歳で植えた木を、孫が60歳になって刈り出すようなイメージです。

木を売る

スギの木が大きくなったら、建築用材として売るために、山から切り出します。木を一本一本チェンソーで切り倒し、トラックで原木市場まで運んでいきます。木は1本まるごと建築用材になるわけではありません。建築用材として使える部分は、まっすぐで節の少ないA材部分です。A材部分は木の全体の約1/3ほどしかなく、木の中で一番高い値段で取引される部分です。

A材・B材・C材

木を管理する

個人の所有する山林から国が保有する山林まで管理を代行しています。主な作業内容は、下草刈りや、間伐・枝打ちなどです。他にも、海岸林の伐採・虫駆除や、電柱の妨げになっている木の伐採、茅葺き屋根の修理なども請け負っています。

石川県で山林の管理に困っている方は、よければこちらをご覧くださいね。


くまはぎの薪が生まれた背景

くまはぎの被害

くまはぎの被害

2年ほど前から、わたしたちの山の木にこのような状態が見られるようになりました。
調べてみると、「くまはぎ」という熊が樹皮を爪で剥ぐ行為によるものだということがわかりました。
現在、所有している山のスギの約半分がこの被害にあっています。


なぜくまはぎするのか

わたしたちの山がある石川県白山のふもとには、昔からツキノワグマが生息しています。基本的には木の実などを食べているのですが、彼らにとってのご馳走が木の樹皮なのです。とても美味しいらしく、一本で満足することなく、次から次へ樹皮を剥いでいってしまいます。
しかも、困ったことにくまはぎする部分はA材(一番お金になる部分)なのです。

くまはぎをする熊

そしてこのくまはぎがわたしたちの山で急増した背景には、林業従事者の減少放置林の増加があります。
これらについては長くなるので、また次回説明しますね。

くまはぎされた木はどうなるのか

さて、くまはぎされた木はこのままにしておくとどうなってしまうのでしょうか?
木は根っこから水分を吸い上げています。根元をくまはぎされてしまうと、水分を吸い上げることができなくなり、根元から腐ります。そして最後には枯れてしまいます。枯れてしまった木は何にも活用することが出来ません。

枯れて赤く変色した杉(真ん中)

木は腐っても売れるのか

それじゃあもう切るしかないということで、皮の剥がれた成長途中の木を切り出します。
木は根元が腐ってしまっても、腐っている部分を取り除けば、売りに出すことができます。 しかし、一番高値のA材部分がくまはぎによって半分ほどになってしまっているので、それほどお金になりません。
また、木を切り出し、原木市場に持って行くにはそれなりのコストがかかります。
つまり、搬出して市場に売りに行くだけで、ほぼ赤字。それを考えると、結局くまはぎをされた木は捨てるしかなくなるのです。

くまはぎの薪の誕生

折角何十年もかけて育ててきたのに、赤字になるため切って捨ててしまう。こんなに勿体無く悲しいことはありません。
どうにかしてこの価値のなくなった木をもう一度市場で復活させられないだろうか?
そう考え、今回新しく挑戦を始めました。

くまはぎの薪の誕生!

このキャンプ用薪を通して、わたしたちは以下の目標を掲げています。

・くまはぎにあった木を積極的に使ってもらい、くまはぎを知ってもらう
・森で起きていることに興味・関心を持つ人を増やす
・売り上げの一部をくまはぎを減らす活動にあてる

日本の森にはこのくまはぎ被害だけではなく、たくさんの問題があります。くまはぎの薪が森のことを考えるきっかけとなるよう、わたしたちは発信をしていきます。

くまはぎの薪の現在

現在、「くまはぎの薪」は出荷に向けて箱詰めをしています。 今年の夏頃に、みなさまへお届けできるよう目下準備中です。



最後に

このnoteはくまはぎに遭い捨てられることになってしまったスギと、私たちの挑戦をリアルタイムでお伝えしていきます。
今後はくまはぎの詳しい話や、林業の抱える問題、クラウドファンティング準備の裏側などを発信していきます。
ぜひ応援よろしくお願いします!


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