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【イベントレポート】「おいしい!たのしい!いごこちがいい!を考える!」in 岡村本家 (前編)

こんにちは!彦根市でフリーライターをしている林由佳里です。

いつもは「まちづくり診療所」さんが運営しているこのnote。今回は、ご自身が10月30日(土)に開催されたイベント「おいしい!たのしい!いごこちがいい!を考える!」のレポート記事ということで、私が一時的にnoteをジャックして当日の様子をお伝えします。

なお、書いているうちに盛りだくさんになり過ぎたので、記事は前編・後編の2本に分けました。それでは、さっそくスタート!

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会場は、江戸時代から続く酒蔵!

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イベント会場は、犬上郡豊郷町にある「岡村本家」。創業160年を超える酒蔵で、蔵の中には歴史を感じさせる酒瓶や酒造りの道具が並びます。

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案内を見て2階に上がった途端、食欲をそそるいいにおいが。

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キッチンカーで滋賀県内をまわる「スープのけんちゃん」の屋台が出迎えてくれました。ちょうどお昼どきとあって、あたたかいスープとおにぎりのセットが嬉しい!

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近くに座った人と、「おいしいですね」「あったまる〜!」と話してるうちにまわりが静かになり、いよいよイベントが始まります!

はじめに

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始まりは、このイベントを主催する「くわくわ企画」の代表、徳田嘉仁さんの挨拶から。(ちなみに、「くわくわ企画ってなに?」と気になった筆者がイベント前の徳田さんに直撃した独占インタビューはこちら!

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「僕は普段、医者をしています。これから独立して診療所を始める予定で、そこをおもしろおかしく楽しい場所にしたいと計画中です。今は、いろんな企画を実行しながら少しずつ仲間になってくれる人を増やしているところで、実は今日のイベントもその一環です」

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「でも『診療所をつくるイベント』と言ってしまうと一気におもしろくなくなっちゃうので、今言ったことは一旦忘れてください(笑)今日は、僕がシンプルに『この人と話したらおもしろそう!』と思ったゲストと素敵なアーティストをお呼びしているので、ただ純粋に、トークやライブを楽しんでもらえたら嬉しいです!」

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総合司会は、兵庫県尼崎市にある「株式会社ここにある」の代表、藤本遼さん。「街の人達と一緒につくる」をテーマに、さまざまな活動や事業に取り組んでおられます。

「今、同じテーブルにいる人は知り合いですか?知らない?それじゃせっかくなので、ひとり1分ぐらいで自己紹介をしてみましょう」

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どこから来たんですか?えっ、学生さん?などとお互いのことを聞いて話して場が温まったところで、いよいよゲストトークがスタート!

レクチャー1「楽しい!について考える」

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一人目のゲストは、兵庫県三田市で開催されているキャンプイン野外フェス「ONE MUSIC CAMP」の主催者、深川浩子さん。「楽しい!」から始める場づくりの観点で、過去に開催されたONE MUSIC CAMPの映像を見ながらお話を聞きます。

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「一般的にフェスというと、若者や大人が楽しむイメージですが、うちのフェスは家族連れが多く、大人から子どもまでみんなが一緒になって楽しんでくれています。会場はもともとキャンプ場なので、ライブが行われているすぐそばで、子ども達がアスレチックで遊んでいたり、プールで泳いでいる人がいたり。あまり音楽に詳しくない人でも、思い思いの方法で楽しめるフェスになっています」

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「フェスの運営は、熱すぎる男、自由すぎる男、そして私の3人で行っています。始めたきっかけは、3人ともフジロックが大好きだったこと。フジロックって、行くたびに『めちゃめちゃ楽しい』『帰りたくないな』って心から思うんです。それを自分達でもつくりたい!と思ってONE MUSIC CAMPを始めました」

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「来場者は、2日間で3000人ほど。でも、10年前に始めた時はたった30人でした。続けていく秘訣は、『ブレないこと』。あと、主催者3人で決めている、大事にしたいこと、絶対にやりたくないことがいくつかあって。例えばアーティストについては、有名でも無名でも並列に必ず自分達が聴いて『かっこいい!』と思った人を呼ぶこと。そして、会場には毎年新しい発見ができる仕掛けを用意しておくこと」

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「自然の中で五感を使うと、すごく研ぎ澄まされる感じがしますよね。そういう体験ができる場を、提供し続けたいなと思っています」

来場者やアーティストはもちろん、自分達も楽しむこと。そのための努力や工夫は惜しまない姿勢が、ハッピーな場づくりにつながっていることがよくわかりました。

レクチャー2「美味しい!について考える」

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二人目のゲストは「ハッピー太郎醸造所」の店主、池島幸太郎さん。彦根市で、発酵食品をベースにした場づくりをする糀(こうじ)屋さんです。

「糀って、いきなり言われてもピンとこないですよね。この中で、お味噌を作ったことがある人!」

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パラパラと数人の手があがります。
「うーん、お味噌が好きな人!」

今度はたくさんの手があがりました。
「じゃあ、ほぼ皆さん僕のお客さんになってもらえますね(笑)糀づくりとは、お米に糀菌をつけて成長させること。それでできるのが米糀です。お味噌、日本酒、お酢など、多くの日本の発酵調味料には米糀が関わっています」

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「昔は、糀屋さんが各集落に1軒ぐらいありました。地域でとれたお米を麹屋さんに持って行くと、糀に替えてくれたんですね。冬になると、その糀を使ってみんなで一緒に一年分のお味噌を作るのが年中行事のひとつでした」

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「お味噌作りは、朝、豆を炊くことから始まります。火の番をしないといけないので、その間にいろんなおしゃべりをするんですね。おばあちゃんから若いお母さんまで、いろんな世代の人が集まって楽しい話や愚痴を聞いたり、悩み相談をしたり。味噌作りはそんなストレス発散の場でもあったんです。そうやって地域のお味噌の味が伝えられてきました。

今日は、僕が定期的に開催している『手前味噌の会』をみなさんに疑似体験してもらおうと思います」

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各テーブルに蒸し大豆の入った袋が配られ、柔らかい大豆を手で揉んでペースト状にしていきます。袋を開けると、ふわっと広がる大豆の香ばしいにおい。

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「みなさん潰せましたか?はい、バッチリです!ではここに糀とお塩を混ぜていきます。味噌作りってハードルが高いと思われがちですが、誰でもできるんですよ」

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「お味噌は同じ場所、同じ材料で作っても決して同じ味にならないのがおもしろいところ。みんな『自分が作ったのが一番おいしい』って必ず言います。それが“手前味噌”ってやつですね(笑)」

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「混ぜ合わせたお味噌は、空気が入らないように押し込みながら桶に詰めていきます。そして次がポイント。ここ岡村本家でも買える酒粕を、お味噌の上に敷くんです。そうすることでアルコールがお味噌を守ってくれて、カビを防ぐことができます。これは、この近所に住むおばあちゃんから教わった方法なんですよ。あとは涼しい場所で、来年の夏まで置いたら完成です」

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きっと昔の味噌作りも、こうやってコツや裏技を教え合いながら伝わってきたんだなぁと思いました。会場からは「お味噌って作れるんだ」「意外とシンプル!」といった驚きの声が。みんなでワイワイ何かを作るって楽しい。それがおいしいものならもっと楽しい!と改めて知ったひと時でした。

レクチャー3「居心地がいい!について考える」

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続く三人目は、栃木県の那須高原で直売所、レストラン、ゲストハウスを兼ねた場所「Chus-チャウス-」を営む宮本吾一さん。

「東京から栃木県の那須に移住して、今年で22年になります。今は那須でチャウスお店をやっているんですが、そのお店ができるまでのことを、今日はお話ししたいと思います」

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「25歳の僕は、できることが何もなかった。その上お金もなかったので、農機具屋さんでリヤカーを買ってきてコーヒーの屋台を始めました。結果的に上手くいかなくてすぐ辞めることになるんですけど、そこで得たのが“コミュニティーづくり”の経験でした。

屋台って全部カウンター席なんですよね。他人同士が強制的に隣に座ることになって、それで仲良くなって帰っていった人達が、次は一緒に来るようになる。結局事業としては成り立たなかったけれど、そうやってコミュニティーがつくれることを学びました」

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「次にやったのがハンバーガー屋さん。とりあえずやってみようと思って始めたら、全然おいしくなかった(笑)でもここで気づいたのが、『わからない』と素直に言えば、教えてくれる人がいること。パン、肉、経営、それぞれの専門家を見つけて相談していくうちに、みんな他人事に思えなくなって協力してくれるようになりました。これが、僕が今でもやっている『聞く・頼る・巻き込む』の三段活用です」

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「当時の僕は、自分がいつも食べている目玉焼きの卵がどんな鶏から生まれてどうやってここに来ているのかを全然知らなかった。だからそれを知るために、農家さんを集めて朝市を始めました。最終的には1日5000人ぐらい来るイベントになったんですけど、僕自身が頑張り過ぎて疲れちゃって。

それで代わりに始めたのが、今やっているChusです。要は、大きなイベントをひとりでやるんじゃなくて、小さなマルシェを、人を雇って毎日続ける方向に切り替えました。売っている野菜を使った料理を出したり、遠方からも来てもらえるようにゲストハウスを併設したり。場づくりは一時やって終わりじゃないので、疲れないで続ける方法を考えておくのは本当に大切です」

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「僕は『自分の食卓がおいしいもので溢れていたら幸せだな』という思いから農家さんとつながっているんですが、同時に農家さんが抱える問題を解決したいと考えていて。そのひとつが、酪農家さんと組んで作った『バターのいとこ』というお菓子です」

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パッケージの左上に、04という数字が書いてありますね。実はこれ、牛乳から採れるバターの分量を表しています。牛乳からバターになるのはたった4パーセント。残りの90パーセントはスキムミルクになります。酪農家さんと話しているとよく『スキムミルクが余って困っている』と聞きますが、その事実はほとんど知られていません」

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「その課題を解決するために、余ったスキムミルクでお菓子を作りました。バターのいとこという名前は、バターとスキムミルクの関係がいとこっぽいなと思ったから。スキムミルクの存在と、こんなにおいしく食べられることを知ってもらい、それを那須の銘菓として売り出すことで、生産者さん、観光客、地元の方みんながハッピーになれたらいいなと思って始めたプロジェクトです」

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僕が事業を始める時にまず考えるのは、『自分が幸せになりたい』ということ。考えるだけでワクワクするようなことが、いつも行動を起こすエネルギーになります。最初の目的を間違えないこと。そうすればハッピーは広がるし、広がったハッピーは自走していくというのが、僕がみなさんに伝えたいメッセージです」

誰かのためと言うのはかっこいいけど、まずは自分が幸せじゃないと続かない。そんな飾らない言葉がむしろかっこいいのは、いろんなことにチャレンジしてきた宮本さんのまっすぐな本音がそこにあるからだなと感じました。

【イベントレポート】「おいしい!たのしい!いごこちがいい!を考える!」in 岡村本家 (後編)に続きます。


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