見出し画像

横山秀夫 「64」 読書感想

こんにちは、ジニーです。


またまた溜め込んでしまいました、読書感想。
少しずつ書いていかないと大変なことになっちゃいそうです。

さてさて、本題に入りましょう。
今回は横山秀夫さんの「64」を読みました。

ついに、ようやく、手にしました大作です。
実は恥ずかしながら、横山さんの作品は初めて読みました。
特に今回の「64」は2013年版の「このミステリーがすごい!」で1位を取っていた作品なので、必ず読みたいと思っていました。
でもね、上下巻の2冊読まないといけないことにちょっとためらっておりました。
そんな躊躇する僕に、ふとしたきっかけがあり、読むチャンスが巡ってきたためこれも縁だということで意を決して読みました。

まずは簡単にあらすじ説明。
舞台はD県警。
広報官である主人公三上は、記者クラブとの匿名問題や、家出して行方不明となった娘のことなど、公私にままならない状況が続いていました。
そんな中に舞い込んだ14年前に発生した未解決誘拐事件に対する警視庁長官視察の話。
被害者遺族に遺族宅訪問の調整を任されることとなりますが、この警視庁長官の視察がD県警ないに不穏な空気が漂い始めます。

刑事部と警務部の対立。
警視庁と県警の対立。
被害者遺族と警察の遺恨。

そしてタイミングを重ねるかのように、動き出す14年前の誘拐事件。
その真相は・・・



様々な軋轢の中に身を置く三上の葛藤を通じて組織人としての苦悩と苦労。
人と人との関わり。
いろんなものが押し寄せてくる、まさしく大作でした。

少なからず20年近く社会人を経験してきた僕にとっては、やはり組織人としてのやり場のない気持ちなどがダイレクトに伝わり(三上ほどの苦労はないですが)、何時しか読み進むうちに、自分の中に三上が住み着いたような感覚を感じるようにもなっていきました。
多分、これを読んでいる最中はいつにもまして使命感を胸に行動したり、
妙な熱感が言動に出ていたような気がしますw

上巻、下巻ともに400ページを超える大作ですので、気軽に読めるという作品ではありませんが、それだけのボリュームがあるからこその圧倒的な
没入感もありました。

そして、ラストを迎えるあたりで押し寄せてくる伏線回収の波。
警察という特殊な組織と人間関係、記者クラブとの対立、14年前の事件の邂逅、それらが物語として丁寧に編み込まれているうちに、知らぬ間に紛れていた「真相」に迫るための糸。
見てるんですよ、その糸。読んでいるうちに何回も。
でも気付かなかった。

直接的に真相を表しているものではないので、多分これに気付ける人はいないと思うのですが、そこにたどり着いた時に「そういう共通点があったのか」とその共通点に気付けなかったのが「やられた!」という感想に繋がり作者の掌の上で転がされているというミステリ小説の醍醐味を味わうことが
できたように感じます。

本作は、非常に丁寧に三上という主人公の心情をなぞっていきます。
いつの間にか自分に三上が憑依するほどです。
それだけに、真相に気付いたときの驚きが言葉では表せない臨場感として体感できるのだと思います。
なるほど、上下巻に分けていく必要性は確かにあるなと、そう納得できるのです。

今更僕がお勧めするまでもない超有名な作品ですが、僕のようにこのボリュームにためらってしまっている方がいるとしたら是非勇気を出して読んでみてください。
読んでよかったと思える、読書の楽しさを味わってもらえるだけの面白い小説でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?