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荻原 浩 『海の見える理髪店』 読書感想

こんばんは、ジニーです。

昨年読んだ本の読書感想、これでいったん全部となります。
年が明けて1か月以上かかってようやく書けました。

今回紹介するのは、荻原浩さんの「海の見える理髪店」です。
以前にも荻原さんの「噂」の読書感想を書いたことがありますのでこれで二冊目となります。

前回がミステリ小説だったので、勝手にミステリ専門の作家さんという印象を持ってしまっていましたが、改めて作品のラインナップを見るとミステリ以外にもほのぼのした作品やほっこりした作品も広く手掛けていらっしゃるのだなと思いました。

そんな中で気になったのが今作「海の見える理髪店」でした。

■本書の簡単な説明

本作は表題でもある「海の見える理髪店」をはじめとした
全6篇からなる短編集です。
胸の中に秘めた悩みや秘密を持つ主人公がそれぞれに登場し、転機を迎えていく過程を切り取ったようなそんな物語が収録されています。

時に優しく、時に心苦しく、その転機は訪れます。
すべてに共通しているのは、人との出会い、そして動き出そうとした自身の覚悟。
新しい一歩が生んだ変化。
バタフライエフェクトというと少し言い過ぎのようにも感じますが、変化は新しい視点をもたらし、それが主人公の胸に深く刻まれていきます。

■「成人式」という話が特にお気に入り

特に好きなのは、「成人式」という作品。
少し重たいテーマなのですが、荻原さんの筆力が素晴らしく、いつの間にかそんな重たい空気が、面白くて思わず笑ってしまうようなそんな内容に空気が切り替わっていきます。
まさに本書の魅力が凝縮されているように感じられる物語なんです。

新しい変化を生むためには、これまでと違った行動を起こさないといけない。
その行動は、必ずしもいい結果をもたらすというわけではないのでしょうが、どんな結果になろうとも、そういった勇気をもっていることが大切なのかもしれません。
そんな気持ちになれる1冊でした。

■記憶の片隅に残る既視感

ところでこの作品、初めて読んだつもりでしたが、そこかしこに既視感が。
どうやら忘れてしまったとうの昔に読んだことがある作品だったようです。
それがいつだったかわからないし、読み終わっても思い出せませんでした。
でも、確かに記憶の中にはそれぞれの物語に触れた思い出が残っている。
こういうのも読書の楽しみの一つなのかもしれませんね。

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