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今村昌弘 『屍人荘の殺人』 読書感想

こんばんは、ジニーです。


今回は、今村昌弘の「屍人荘の殺人」。

2017年に発表された本作。
今村昌弘のデビュー作でありながら、第27回鮎川哲也賞をはじめ、各賞を総ナメ。新人ながら、綾辻行人や有栖川有栖を唸らせるなど、嫌が応にも気になってしまう作品でした。

僕は基本的に文庫本しか読まないので、ハードカバーは読みません。
ここ最近、こんなにも文庫本化を待ち望んだ本は本作くらいでしょうか。
そんなことを考えて幾数日過ぎたのち、ふと立ち寄った本屋で文庫本化され発売されているのを見たときは、すぐに購入しました。

前評判が大きすぎて、自分の中で期待が大きすぎてしまっていないかと少し心配にもなりましたが、全く問題ありませんでした。

面白い!

読み始めも、読み途中も、読了後も、この感想は変わりませんでした。


■前代未聞のクローズドサークル

ネタバレはしません。
が、本作の最大の仕掛けの一つが、前代未聞のクローズドサークルの設定。
人によっては、邪道ととられるかもしれませんが、割と説得力のある設定背景がちゃんと描かれていたので、僕は意外とすんなり受け入れられましたし、こういうのもありだなと感じました。
この状況が、「なぜこの状況下で殺人を?」というミステリーの効果も出しています。
それだけでなく、密室、連続殺人、ペンションなど、ミステリ好きにはたまらない要素がいっぱい詰め込まれています。

至る所にある伏線に、なんとなく気付く場面もありましたが、犯人を決定づける部分については、全く気付けませんでした。


■キャラクターが面白くて引き込まれる

キャラクターの魅力も良いですね。
主人公の葉村 譲。
どこをどうしてもワトソンとしか見れない、永遠の助手役に対し、明智 恭介という、名前からしてその雰囲気を醸し出す、主人公が所属する大学のホームズと呼ばれる先輩。
そして、剣崎 比留子。
危険な匂いしか感じない、女性探偵。こちらも大学の先輩。

それ以外にも、物語を演出するキャラはしっかりと個性が持たされ、何よりもそういった個性が名前からなんかイメージできるのが本作の読者への気遣いのようにも感じられます。


■練られた設定に唸るミステリー

物語はとあるペンションが、前述のとおり特殊なクローズドサークル設定によって閉ざされた巨大な密室になります。
その中で、さらなる密室にて人が殺される。
フーダニットに目を向けつつも、作中ではホワイダニットに目を向けさせてきます。
それは動機につながるわけですが、この辺は若干凡庸かなと、

しかしですね、作品全体を見渡した時、その練られた設定に唸るばかり。
あれやこれやが、なるほど、意味を持ってくる。
いわゆる伏線の回収という点においては、無駄がなく、気持ちよさを感じるほど。
また、特殊なクローズドサークルを設定する意味や、必要性をちゃんと持たせて文句のつけようのない、エンターテイメント性を発揮しています。

ようは、めちゃくちゃ面白かったということです。
本作に絶大な評価を寄せる綾辻行人や有栖川有栖が、一度は落ちかけたミステリーに新本格というジャンルで風穴を開けたように、すべてが出し切られたかのような新本格の新たな担い手として今後も期待されます。

いまさら僕が宣伝するまでもないですが、本当に面白い作品です。
まだ読んでいない方がいましたら、ぜひその手に取ってみてください。

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