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若竹七海 「ヴィラ・マグノリアの殺人」 読書感想

こんにちは、ジニーです。

あっという間の梅雨明け、太陽照り付ける猛暑が続く中、久しぶりの小休止のような雨模様。
少しは涼しくなるかと思いましたが、ジメジメした感じは変わりませんね。
畑のお野菜には恵の雨です。



さて、読了した本の感想文を書いていきましょう。
今回読んだのは、若竹七海さんの「ヴィラ・マグノリアの殺人」です。

若竹七海さんと言えば、当ブログでもよくでてくる作家さんおひとりなので
言うまでもなく、大好きな作家さんでございます。
しかし今回読んだのは、いわゆる僕が良く読んでいる「葉村晶シリーズ」ではなく「葉崎市シリーズ」の作品です。
その、「葉崎市シリーズ」の始まりとなるのがこの「ヴィラ・マグノリアの殺人」です。

です。
とあたかも知っていたかのように言いましたが、読んでいる最中は全くそのことは知りませんでした。
というか、この感想文を書くにあたり、本書のことを調べていて知った感じでして、勉強不足ですねー。

■簡単に作品紹介

では、簡単に物語の説明をしましょう。

神奈川県葉崎市。
舞台とこの葉崎市は、架空の都市です。
ご丁寧に、物語が始まる前に「お断りするまでもありませんが~架空のものとお考え下さい」という但し書きまでつけてくださる辺りが若竹さんらしいなと、ニンマリしてしまいます。

この葉崎市の某所にある集合住宅「ヴィラ・マグノリア」。
海を臨むその住宅の、空き家となっていた1棟で、死体が発見される。
容疑をかけられるのはもちろん、周辺住民。
いわゆる「ヴィラの住人」。
警察もクセのあるその住人たちに振り回されて事件は解決の糸口もつかめない。
そのうちに第二の事件が発生する。
果たして、犯人はいったい誰なのか?

■若竹作品いハマっている人「あるある」かもしれない

「クセのある住人」。
もうこの文言を見るだけで、面白さを期待してしまう。
若竹さんの書く小説には、大概クセのある人物が出てくるのですが、これは本作においても安定のクオリティ。

このヴィラ・マグノリアは10棟からなる集合住宅なのですが、空き家になっているのは1棟のみ。
とある老夫婦が入院と旅行で名前しか出てこない以外は、結構な人数が登場します。
その一人一人が、まあクセだらけ。
割と複数人数が集まって会話をする場面も多いのですが、その話しぶりでわざわざ誰が話しているかという説明がなくても判別できるほど。

思わず笑ってしまうような掛け合いもあり、このテンポが若竹さんの真骨頂ですね!

物語は空き家の1棟に内見に来たカップルが、住宅に案内される
所から始まります。
そして、死体が見つかり、阿鼻叫喚の様相を呈するわけですが、まあ、ここでもなんという絶妙な緊張感のスカしかた。
余計な情報が独り歩きして主張が強いんもんだから、読み手としてもなかなか欲しい情報が入ってこないw

節々から感じる若竹節。
こいつは読む手が止まらないぜ。

■ありきたりだけど、みんなが怪しく見えてくる

事件は謎を含んだまま、奇妙な人間関係があらわになっていき、そして新たな被害者が生まれてしまいます。
非常に陳腐な表現ですが、誰もが怪しく見えてくるんですよね。

そして徐々に明らかになる事件の真相。
最後まで読んでみると、ひとり一人のクセの強さが、物語の一つの伏線にもなっているところがあり、読み手としてはやられたと感じるところもあります。

そんな最後まで読者を楽しませるという著者のサービス精神すら感じる本書。
コージーミステリーと紹介されるだけありますね。
ミステリー好きとして、心してかかってもいいですし、一つのエンターテイメントとして気楽に読むのもあり。
そんな読み手を選ばない懐の広さを感じられる作品でした。

是非、コテコテゴツゴツのミステリーはどうも苦手という方も手に取ってみていただければと思います。

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