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「サステナ・フォレスト」

 毎年話題を呼ぶTBSドキュメンタリー映画祭が今年もやって来る。そのなかでも重要な作品のひとつ、川上敬二郎監督「サステナ・フォレスト~森の国の守り人たち~」を観る機会を得た。
 みなが薄々感じている森林にまつわる問題に焦点を絞り、分かりやすい言葉と数字で理解させる、啓蒙的なドキュメンタリーだ。
 私も新潟の親戚から聞いていたー雪が降ると裏山の木が倒れて危険、片づけてもらおうにも山の持ち主が地元におらず手が付けられない、山からカモシカなどが下りてくるようになり畑を荒らし池の魚を食べてしまうーー。
 その背景と理由が理解出来た。

 

 木こりという言葉を聞かなくなった。今の世の中にはカタカナ職業があふれている。偏見を怖れずに言えば、そういい「仕事」というのはたいがい必要がない、いわゆる「ブルシット・ジャブ」だと感じることが多い。
 その一方で社会に必要不可欠な仕事「エッセンシャル・ワーク」がある。世の中がおかしいと思うのは、必要不可欠な仕事のほうが「クソのような仕事」より給料が低いことが多いことである。
 介護職もそうだし清掃職員もそうだ。
 そして木こりではないが林業従事者もそうだろう。1960年に68万人いた林業従事者は今では4万4000人にまで減少したという。
 必要でなくなったのか。否。日本の面積の約7割は森なのである。それを維持管理する必要は変わらないのだ。

 維持管理の問題にとどまらない弊害が指摘される。適切な伐採がなされないことによる土砂災害、倒木などのリスクの高まりである。昨今の大雨で土砂災害がしばしばおこる背景には森林の荒廃があるという。
 森林を守ることは二酸化炭素を吸収し地球温暖化対策にもなるなど、単に自然保護ということだけでなく、人間が生活するうえでの危険の除去にもつながる。経済的な観点から大切な要素があるとも指摘される。
 ドキュメンタリーでは丁寧に森林にまつわる問題をすくいあげていく。そして現状はどうなのか、未来を見据える人々を描いてゆく。

 川上敬二郎監督は1973年、東京都出身。96年、TBS入社。2023年の映画祭では「サステナ・ファーム トキと1%」を初監督。著書に「なぜかいじめに巻き込まれる子どもたち」(ポプラ新書)がある。
 TBSドキュメンタリー映画祭は、2024年3月15日(金)から28日(木)までヒューマントラスト渋谷、3月22日(金)から4月4日(木)まで大阪のシネ・リーブル梅田、名古屋のセンチュリーシネマ、アップリンク京都、3月29日(金)から4月11日(木)まで福岡のキノシネマ天神、3月30日(土)から4月11日(木)まで札幌のシアターキノで開催される。 
 上映スケジュール、登壇イベント、チケット販売情報は映画祭公式ホームページ https://www.tbs.co.jp/TBSDOCS_eigasai/  SNSで。
 

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