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「ワタシタチハニンゲンダ!」

 「私たちは動物ではない。人間だ!」
 人権侵害に苦しむ外国人が異口同音に言う言葉だ。
 逆に言えば、日本人は外国人を人間扱いしていないということになる。
 2024年7月17日(水)、映画「ワタシタチハニンゲンダ!」が新宿区四谷区民ホールで上映されたのを観た。
 前作で朝鮮学校差別問題に焦点を当てた高賛侑監督は本作で、全ての在日外国人に対する差別政策の全貌を浮き彫りにしている。
 主催は高麗博物館(東京都新宿区大久保1-12-1第2韓国広場ビル7階)で、後援が新宿区。
 2021年3月、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(33)が名古屋入管で死亡した。
 彼女の死は長年ベールに包まれてきた「ニューカン」(入管)の闇を明らかにし、これは公権力による外国人差別の歴史を象徴する事件となった。

花に囲まれたウィシュマさんの遺影


 戦後、日本政府は、在日外国人の9割を占めていた韓国・朝鮮人の管理を主な目的として外国人登録法などを制定した。
 「入管の出自は戦前の特高警察なのです。そもそも朝鮮人を収監し、追い出す組織だった」と映画の上映後に行われたトークで、長年外国人研修生の問題などを追いかけているジャーナリストの安田浩一さんはいう。
 そして後年、他国からの在留者が増えると、全ての外国人に対する法的・制度的な出入国管理政策を強化してきた。
 ●在日コリアン/高校無償化制度から朝鮮学校を排除。幼児教育・保育の無償化制度から外国人学校を排除。
 ●技能実習生/長時間・低賃金労働。暴力・不当解雇・恋愛禁止等の人権侵害事件多発。
 ●難民/難民認定を極端に制限。認定率は諸外国の20〜50%に比べ、日本は1%未満。
 ●入管/被収容者に対する暴言・暴行・劣悪な処遇が常態化。
 また今年5月には改悪入管法が施行されている。
 歴史的に日本は外国人を労働力として活用してきた。安田さんによると、「日本のインフラは朝鮮人が作ったんです」。
 朝鮮人は「日本人のために働いて、日本人に殺されて、これが私たちの歴史です。それなのに国際化などと言っている。まずはケリをつけようっていう話です」と安田さんは語る。

安田浩一さん


 そして日本は今も外国人を「安価な労働力」としか見ていない。
 「もし明日、外国人労働者が一斉に消えたとしたら、コンビニ、居酒屋、縫製工場など多くがストップしてしまいます」。
 そして、「「国産」の多くは外国人産ですよ。Made in Japanかもしれないが、Made by Chineseであり、Made by Vietnameseなのです」。
 安田さんは例として、栃木のブランドいちご「とちおとめ」を作っているのは中国人、北海道の海産物加工はベトナム人とミャンマー人、茨城や千葉の野菜や今治のタオルも外国人実習生が作っているという。
 トヨタの工場では外国人を雇用していないが、二次や三次下請けは外国人を使っていると安田さん。「そういう人たちによって日本の社会、地場産業、伝統を作っている生産現場を支えているのです」。
 それなのに「そういう外国人を差別、排除の対象にしてきたし、今もデモ、街宣、ネットでのヘイトが続いている。それを止めようとしないのが日本の社会なのです」。

入管職員たちに暴力を受ける外国人


 「歴史を否定するだけでなく、人間を人間と見てこなかった。戦前型差別を引き継ぎ、そこに新たな差別も生まれている。差別の向こうには虐殺と戦争が必ず待っている。そんな社会に生きたくない」。
 安田さんはいう「私たちは殺さない。私たちは殺されない。私たちは殺させない。差別を許さない。そんな社会を作っていきたい」。
 次のような有名な言葉があるー「我々は労働力を呼んだが、やって来たのは人間だった」。
 「映画のタイトルと同じように「ワタシタチハニンゲンダ!」と繰り返したい。人間を殺すなと」(安田さん)。

 

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