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谷川賢作ジャズライブ

 谷川賢作(たにかわ・けんさく)さんと仲間たちは、弦楽四重奏版スケッチ・オブ・ジャズ(SOJ)公演を2023年6月29日(木)に「雑司が谷エル・チョクロ」(東京都豊島区南池袋3-2-8)で開いた。
 谷川さん以外のメンバーはバイオリンの吉田篤貴(よしだ・あつき)さん、バイオリンの地行美穂(ちぎょう・みほ)さん、ビオラの梶谷裕子(かじたに・ゆうこ)さん、チェロの島津由美(しまず・ゆみ)さんとウッド・ベースの西嶋徹(にしじま・とおる)さん。

谷川賢作さん

 まず、「オリジナル・メンバー」の谷川さん、吉田さんと西嶋さんの3人で一曲「Unreasonable Passion」を演奏した。そのあとは全員が揃った。演奏したのは「Old Grandpa's simple joke」、「I remember Django」、「A chorale for carla」。
 そして「Endless excuse」つまり「終わりなき言い訳」とでもいうのか。谷川さんは「ぼくの曲のタイトルはおちょくりが入っているのです」。
  谷川さんは「左手のピアニスト」として知られる館野泉さんからこの秋に初演予定の新作委嘱を受けた。谷川さんは「3月に館野さんの家に呼ばれて行くと、前倒しで曲を書いてくれといわれました・・・でもまだ一音も書いていない。書いて寝かせてコリコリと直すので時間がかかります。でもそろそろやらないといけないと思うんですが」と言った。
 第一部では「Song After Dark」という曲も演奏された。谷川さんはノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの作品から着想を得たという。
 第二部ではカバー曲も演奏された。まずは「Ultimo Cafe」。続いてはバート・バカラック作の「Soouth American getaway」で、この曲はニューシネマの傑作『明日に向かって撃て』でポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの逃避行とキャサリン・ロスの思いのコラージュとして使われた。 

(左から)地行美穂さん、梶谷裕子さん、島津由美さん

 そして先日亡くなった坂本龍一さんが作曲、谷川さんの父、谷川俊太郎さんが作詞を手掛けた「たかをくくろうか」も演奏された。次に谷川俊太郎作詞、賢作作曲の「かけざん」だったが、演奏前に谷川さんは言った「不穏な時代のなかでねじくれた感じ」だと。
 谷川俊太郎の詩集「よしなしうた」に収められている「かけざん」を息子の賢作さんが歌った。みながそれぞれの楽器を弾きまくり、一種の不協和音のようなものが「不穏」さを表しているかのようだった。
 さらには「JAZZ is」という曲を演奏した。「この曲を聞いた館野泉さんが、まるでショスタコーヴィッチのようだね、とおっしゃたのです。その影響で私がショスタコの交響曲1番を昨年ようやく生で聴いたのだけど、その時、指揮の井上道義さんがおっしゃったのは、ショスタコがこの曲を書いたのはなんと19歳の時だった」のだと谷川さんは話した。
 コンサートの本編最後は「Ya -cha(やんちゃ)」という作品。曲のタイトル通り6人それぞれに音を「めちゃくちゃ」に出しまくり、だからこそ曲のタイトルが「やんちゃ」なのだと合点がいきました。
 アンコールは、まず谷川さんによる「ぼく」という父俊太郎さんの作品の朗読。そして続けて、賢作さんが生まれた時に武満徹さんが俊太郎さんにお祝いとして贈った曲だった。谷川さんはMCで「僕は世界でも数少ない武満徹さんとキャッチボールをした男です」と「トリビア」を語った。

西嶋徹さん

 「雑司が谷エル・チョクロ」は、店主の生家(築82年)を改築し、2010年に開業したアルゼンチン・タンゴを柱にしたライブハウスだ。連絡先は電話090-7739-0777。ホームページはhttp://www.el-choclo.com。メールのあて先はinfo@el-choclo.comだ。


 







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