見出し画像

いま、パレスチナ詩を読む

 パレスチナでは子ども、女性を含む民間人が多数、イスラエルによって殺傷され続けている。これはまがうことなきジェノサイド(大量虐殺)であり、ユダヤ人によるホロコーストとなるだろう。
 70年以上続く非人道的な占領のひとつの帰結にほかならない。
 わたしたちにパレスチナの人々の困難な状況を伝えてくれる一つとして「現代詩手帖」は5月号で「パレスチナ詩アンソロジーー抵抗の声を聴く」と題した特集を組み、大きな反響を呼んでいる。
 同特集の朗読会「「わたしが死ななければならないのなら」-いま、パレスチナ詩を読む」が2024年6月20日(木)、文喫六本木(東京都港区六本木6-1-201-1F)にて開かれたのに参加した。


 まず、進行役のジャーナリスト金平茂紀さんがこの集いがいかにして実現したかを話した。「この5月号を届けてくれて読んだら、いてもたってもいられなくなったのです。そしてこの集まりを提案しました」。
 この朗読会に参加している人は「今起きていることに何らかのことをしなければならないと思っている人たちだと思います」。
 そして金平さんより英BBC、カタール・アルジャジーラ、米独立系メディアDemocracy Now!それぞれのパレスチナ報道が紹介された。
 金平さんによると、詩の訳者の一人にこういわれたそうだ「特集が反響を呼んで、それで分かった気になってはいけない。ガザの絶望的状況は今も続いているのです」と。
 ここから詩の朗読となった。まずは俳優の斉藤とも子さんが4篇の詩を読んだー「わたしが死ななければならないのなら」(リフアト・アルアライール)、「人間ー動物の日記」(アリア・カッサーブ)。この2篇は2014年7月から8月にかけての51日間戦争の時に集団虐殺が起こったガザから発信された作品である。
 あと斉藤さんが朗読したのは「もういいんだ私たちは、誰にも愛されなくても」(サーメル・アブー・ハウワーシュ)と「逃げることを命ずる」(レーナー・ハラフ・トゥッファーハ)だった。

斉藤とも子さん


 この後、自らが訳した散文の朗読を早稲田大学文学学術院の岡真理教授(現代アラブ文学、パレスチナ問題)が行った。
 3篇の作品を読んだ。まず「ガザで子どもは作らないとぼくが心に誓った理由」(オマル・グライエブ)と「12秒間の電話」(匿名)。
 そして、「レイチェル・コリーがガザから家族に宛てた電子メール」(レイチェル・コリー)。
 これは、3月16日にパレスチナ人の住居を破壊しようとするイスラエル軍のブルドーザーを制止しようとして轢き殺されたレイチェルがそのおよそ2週間前に家族に送信したメールである。

岡真理教授

 岡教授のあとは再び斉藤とも子さん
 。読んだのは「おなまえ かいて」(ゼイナ・アッザーム)と「夜明けの歌/ジャンナ」(ネオミ・シハーブ・ナイ)。
 前者は自分の足に自分の名前を書いてくれと母親にせがむ子どものことを詩にしている。そうすれば「万が一の時」に数字で呼ばれることなく、名前が分かることで、家族だと分かってもらえるだろうとのことらしい。
 続けて、翻訳者・通訳者の佐藤まなさんによる朗読となった。
 翻訳をした佐藤さん自身が選んだ作品だ。ー「ガザ/ラファハ」(サヘイル・ハンマード)と「あやまる/死海の亡霊たちが溺死の歴史を書き直す」(ジョージ・エイブラハム)。

佐藤まなさん


 朗読が終わって、マイクを握った進行役の金平さんは「こんな後に解説をやるんて野暮なのでやめますね」と一言。
 ここで訳者2人から発言があった。
 まずは松下新土さんーー「ガザの北部はイスラエルによる人為的な飢餓が起こっています。そして10分に一人よりももっと早いペースで人が亡くなっています」。
 山口勲さんは「正直怒ってます。どの怒りから出していいのか迷っています」と話し始め、「毎回こういうイベントをやる度に思うのは、戦争が終わって集客に苦労するようになるといいなということです」と述べた。
 さらに朗読をした3人からも話があった。
 斉藤さんは「はねのけられるようなすごい力を感じて、読んでいいんだろうかと思いました」という。岡先生の本で勉強をしたが「自分は全く甘かったなと思いました。本当のことで知らされていないことってたくさんあるんだなって」。

詩は声に出して読むもの
 岡教授は「詩は声を出して読むものでそれを聞くものだと思った」という。「パレスチナは常に最悪を更新しているといわれます。どこかで誰かが殺されているのです。(ハマスが越境攻撃した)昨年10月7日以前からそういう状況が続いていて、(イスラエルの)ジェノサイド政策が今ガザで起きていることです。10年前の51日間戦争がスケールアップして繰り返されているのです」。
 「このイスラエルのアパルトヘイトを廃絶して、川から海までパレスチナを自由にしてほしいのです・・・よくメディアなどで”これからパレスチナはどうなるのでしょうか、注視されます”というけれど(そうではなくって)、私たちがどうするかなのです」と岡教授は話した。
 一番最後に翻訳者の佐藤さんが話をした。
 「私が一番辛いのは、焼け石に水のようなおカネを送って”明日送れるかは約束出来ないけど全力を尽くします”というと(パレスチナの人々は)”私たちの声を聞いてくれてありがとう、そこにいてくれてありがとう”っていうんです」と話すと嗚咽をもらした。
 そして、「そんなことで喜んでほしくないし、死んでほしくもない。みなさんで出来ることを、手をあと10センチ延ばしてください、お願いします」と観客たちの協力・支援を呼びかけた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?