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『数学ギョウザ』

「博士、今度の発明はなんでしょう」
「うむ。しばし待て」

 そう告げると、博士はキッチンの方へ向かった。キッチンからは「ウィーン」という電子音が数分した後、「チンッ」という音で鳴り止んだ。

 博士は湯気の出ている餃子が乗った長皿を、両手の指先で摘むように持ちながら戻ってきた。そしてテーブルの上に乱暴に置いた。
「これは食べると数学の学力が上がる『数学餃子』じゃ」
「冷凍していたんですね」
「保存できると思って」
「明日数学のテストがあるので貰ってもいいですか?」
「良かろう。直前に食べるのじゃ。結果も聞かせてくれ」

 次の日。
「博士、確かにテストはスラスラ解けたのですが」
「どうした」
「ニンニク臭いとクラスメイトから総スカンをくらいました」
「やはり水餃子の方が良かったか」
「いや、なぜ餃子に拘るんですか。もっと食べやすいものにして下さいよ」
「親近感が湧いちゃって」
「餃子に?!」
「ほら、包まれてるじゃん。皮に」
「うーん、匂いそう」

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