マガジンのカバー画像

単発の小説

61
単発の短編小説・ショートショートはこちらにまとめています。
運営しているクリエイター

#ショートショート

『同僚の馴れ初め話』

「嫁さんとはどうやって知り合ったの?」  飲み屋のカウンターで、既婚の同僚に何の気もなし…

『招いた幸せ』

 初詣の長い列に並んでいると、後ろに並んでいた中年の男が声をかけてきた。 「少しいいです…

『特別な公演』

 K氏はここ数日、パソコンの文字カーソルが点滅するのを眺めるだけの日々を送っている。早い…

『最後の雨雲』

 ライトの光で道を照らし、集合場所へと向かう。道中で空を見上げると、雨雲が空を覆った。暗…

『君に贈る火星の』

『やあ、荷物は届いたかい?』 『ええ。これはワインかしら』 『火星産の特別なね。それで、前…

『数学ギョウザ』

「博士、今度の発明はなんでしょう」 「うむ。しばし待て」  そう告げると、博士はキッチン…

『金持ちジュリエット』

 ジュリエットはその町一番の、金持ちの家の生まれだった。彼女の周りには生まれる前から財、物、使用人、全て揃っていた。  だからといって、彼女は人を貶むこともなく、優しく、正義感にあふれた性格だった。  そのため彼女は家族や友人達にも恵まれていた。  ある日意地悪な男の子がジュリエットに言った。 「お前はたくさん持っているようだが、お前にも持っていないものがあるぞ」 「それは何?」 「努力だよ」 「何ですって!」  彼女は負けず嫌いであった。 「それなら見てなさい!これ以上な

『アナログバイリンガル』

 最近、娘は謎の独り言を呟く。 「おはようウヨハオ今日は寒いねネイサナシウコッカイカタタ…

『違法の冷蔵庫』

「君達にはこの新型冷蔵庫を大阪支社まで運んでもらう。運び方は自由。費用はこちらで負担する…

『空飛ぶストレート』

 僕の胸に黒い羽が生えてきた。羽は重くて、痛くて、苦しい。僕は取りたくてたまらないのに、…

『コロコロ変わる名探偵』

「犯人はお前だ!」  そう言って、探偵はAを指さした。 「え?違う違う」 「犯人はお前だ!…

『株式会社リストラ』

 スーツ姿の男は礼儀正しく辞儀すると名刺を差し出した。 「『株式会社リストラ』。まさかう…

『しゃべるピアノ』

 児童施設にある古いピアノは生きている。  鍵盤蓋をカタカタと鳴らして、今日も子供たちに…

『運命の出会い』

「あ、すみません」 「こちらこそ、よそ見をしていて……」 「……あれ、何処かでお会いしたことありますか」 「え、あなたも? 私も今、そんな気がしていたんです……どこかで会ったことがあるな、って。でも全然思い出せないんです」 「僕もです…………もしかして、“前世”とか……」 「そうかもしれません……いえ、きっとそうですよ!」  2人は手と手を取り合った。  こんな運命的な出会い、きっと恋人同士だったに違いない。そう確信した。 「そうだ、この近くに前世を見てもらえる占いの店がある