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三日月町の境界線シリーズ

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シリーズ小説です。基本1話完結型。 1話以外は、今のところ以前の小説を書き直したものです。
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記事一覧

一:『鏡池』

「すみません。お水をいただけますか?」  手を挙げると、すぐ近くにいた背の高い男性店員が…

二:『隙間から』

 隣に座る浮浪者が語り始めるのを、聞くか、聞かないか。  話を聞くくらい、本来なら些細な…

三:『やる気を食う怪物』

 教室に入ってきたのが誰なのか、顔を上げなくても分かる。教室にいた女子生徒達の囁き声には…

四:『人魚すくい』

 金魚すくいは『ゲーム』だ。  取れるか、取れないか、何匹取れるのか。そういう『ゲーム』…

五:『海洋学者の疑問』

「私は、海洋学者だ」  声をかけるとこの人はいつもそう答える。聞いてもいないのに毎回そう…

六:『ねがいごと』

 カウンター席に腰掛ける男に抱いた印象は、少しばかり挙動がおかしい、というものだった。 …

七:『盆にかえらず』

 盆休み。避暑を求めて俺は山間に車を走らせていた。助手席では幼馴染の宇佐木月光が、この辺に詳しいのか、道案内をしていた。後ろの席には月光の後輩である雨宮窓次郎が座る。山道で揺れるというのに、前のめりで時折俺達に語りかけ落ち着きがない。  山道の出入り口付近には、同じく避暑を求めたであろう人々が大勢いたが、月光の案内に従ううちに段々と人気がなくなり、次第には他に車は一台もなくなった。驚きはしない。やはりこの辺に詳しいんだな、と思う程度だ。  しばらくすると、右側の視界が広がり、

八:『奇数の月』

 幸せとは恐ろしいものなのか。そう感じたのはその日が初めてだった。  その日は夜に、幼馴…

九:『忠告する者』

 時刻は16:30過ぎ。高校時代にはいくつかの文化部を掛け持ちしていた。演劇部とか、美術部だ…

十:『月見酒』

 満月は夜は、あの日のことを思い出す。どんなに美しくても、あのときの月には及ばない。次に…

十一:『天文学者の悩み』

 三日月町の東にある星見ヶ丘。そこに知らない建物が立っていた。昨日見たときにはなかったは…

十二:『欠けているモノ』

「教頭先生、最近の若者にはろくな奴がいない。そうは思いませんか?」 「まあまあ。どのよう…