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 あんなに雨ばかりな天気にぶつくさ言ってたのに、
8月に入って晴れ続きになって、土が渇いてきたとたん、
雨を待つようになった。

雨雲が湧いては見送るのが数日続いた後、
1か月ぶりにようやく降った雨に、
山といっしょに身体も心もスコンと緩んだ。


数回の雨でようやく湿り気のついた土に、
線引き棒で線をを引いて、秋蒔きの葉野菜の種を蒔く。

線引き棒は
鉄棒の長さや太さ、固定の仕方、持ち手の太さなど、
使いやすいように、tokiが改良を重ねて作ってくれたもので、
今は35cm、45cm、60cm幅のものがある。

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畝を立てる場合も、そのまま線に沿って蒔く場合も、
我が家ではこの線引き棒が活躍する。


 
 種蒔きの時は、
利き手の左手に種を握る。
小さな種は必要分、
使い古した割れ目の入ったお椀に入れて、右手に持って、
左手の指の間に種を挟む。

そして引いた線に沿って、
親指、人差し指、中指の3本の間でひねりながら種を落としていく。
そうすると均等に指の間から種がこぼれる。

15cmとか30cmの間隔で点蒔きにしたい時は
しゃがんで蒔く。

葉野菜はすじ蒔きで、種も細かいので、
立ちながら腰を屈めた姿勢で歩きながら蒔く。
その方が種も重ならず、ほどよい間隔にちらばってくれる。

土は足で踏んでかぶせる。
石をどけたりするのに、土を触るのは右手。
左手は種しか触らない。

もしも種が余ったら、
発芽が悪かったり、
あるいは虫にやられて抜けた場所ができた時に、
補填で追蒔きするためか、
次の春や1年後の秋に蒔くために
土が入らないように袋に戻してとっておく。

種蒔きは、
静かに集中する時。

川の音や鳥のさえずりを聞きながら、
秋に向かう少し冷たい風を感じながら、
たまに空を見上げながら、
黙々と蒔いては土をかぶせていく。

 秋の葉野菜は、たっぷり食べたいから、
春の菜の花の分も合わせて何列も種を蒔く。

種蒔きから1カ月ほど経った頃、
緑のグラデーションが畑に広がる。
それが見たくて何種類も蒔いていたりする。


 種を蒔いていると、小さな虫達が自然に目に入ってくる。

突然飛ぶもの
あちこち忙しそうに走り回るもの
土から顔を出しては、またゆっくりもぐるもの
自分の身体より大きな死骸にたかるもの
草の種を運んでいるもの。

畑に残っている雑草の葉の上にも、
じっとしているもの
葉を食べているもの
交尾しているもの。

クモ類、ハチ類、カマキリなど
畑の応援団がいてくれるのは心強く思うが、
作物を食べてしまう虫だって、
この循環の中で必要な存在。

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(ネキリムシ このヒトに随分手こずる)

私が蒔く種も、
この小さな生き物達の世界の中に
混じっていく。

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(秋人参は随分ハムシにやられてしまって隙間だらけ)
 


 ここ数週間、tokiの作業を家族で分担している。

tokiの担当は田んぼと大豆畑なので、
ひとまず田んぼ関係は双葉に託して、
私は大豆畑にまわった。

 大豆畑の管理は今の時期は草刈りくらい。
といっても2反以上、それも2か所に分かれているから、
畝間、畔や柵周り、土手草と、合わせると結構ある。

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土手草刈りの1か所は、湧に頼んだ。

この土手は、奥に行くほど急斜面になっていき、
刈るのに邪魔な切り株もあちこちにあって、
終わりと思うと奥があって、案外広い。

そんな厄介な土手の1つなことを、初めて刈る湧は知らない。

案の定、想像よりハードだったらしく、
「草集めまでやったら、半日もかかっちゃった」と
汗だくで笑っていた。

私は最近、ここはもう1回で終わらせるのはキツくて、
2回に分けて刈っている。

若さだな~とひそかに思う。

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 3兄弟が一斉に不在だった数日間、
田んぼの水管理を任された時は、
4件でやっている7枚の田んぼのどれもに水を入れるのに、
慣れないため何度も足を運ぶことになり、
次の日から、末っ子えがくに託した。

その他、イノシシよけの電柵のスイッチの入り切りもある。
朝夕2回、これがなかなかどうにも忘れてしまうので、
これも早々にバトンタッチ。

えがくはこの日々、
私の代わりに3食のごはん作りや
兄弟で飼っているインコの世話も合わせて
くるくると動いてくれた。


「明日は学校に行こうかと思ったんだけど、なつ1人で大丈夫?」

そんなことを言う。

最近は週一ペースくらいで、プールや家庭科など、
お気に入りの事があると
ランドセルに筆箱とお弁当を入れて出かけて行く。

この日はみんなと川に入る予定だったらしい。

だいじょぶだよ、と言った翌朝、
「電柵のスイッチは消しといたから。
 田んぼの水は、あと○○さんのとこだけだから、
 お昼前に止めてね。じゃ、後はよろしく~♪」


などと言い残して出て行った様子は、
下に3人弟妹を引き連れつつ、
よく私の助手になって手助けしてくれた幼い頃の双葉と重なって、
微笑ましかった。


 来年の田んぼの肥料用のぼかし作りは、
糠とおからともみがらを原料に作っている。
その切り替えし作業も、田んぼの仕事の1つ。

自分でもぼかしは作ったことがあるけれど、
一度に作る量が多くて、固まりをほぐす時間を
どこまでかけるか迷ったが、
おからの発酵した香ばしいにおいは、
以前暮らしたなかやの畑を思い出して、
なんだか懐かしかった。

 tokiの担当作業は、醤油のもろみの天地返しも だった。
醤油の麴作りまでは私の仕事だが、
もろみの管理はすっかりtokiに任せているので、
これまた久々。

春に私が作った醤油麹の出来は、
私の中で、悪くないけど良くはない、
というものだったので、
その後の具合は気になっていたから、
どうやら一応醤油になりそうなことを
自分で確かめられて、ひとまず安心した。



 そんな中、
アカバチ(キイロスズメバチ)の巣の下を
うっかり通ってしまって、
あっと思った時には頭を1か所以上刺されたのを感じた。

草刈りをしていると蜂の巣に近づくことが多いので、
毎年蜂には2~3回刺されている。

今年もすでにアシナガバチに2回刺されていたが、
痛みは5分くらいで抜けて、私の場合ほとんど腫れない。

ただ今回はアカバチで、痛みがなかなか抜けず、
しかも頭、というと不安になる。
翌日起きたら、顔がパンチクリンになってたらどうしよう!

「う~ん、多分2か所だね。もう1つはどうかな、はっきりしない。」
刺された頭を観てくれた湧が、
そのまま夜ごはんを作ってくれることになったので、
お願いして、その日はそのままおとなしく過ごせたおかげで、
翌朝には痛みも腫れもなく済んだ。


 こんな感じで、家族お互いカバーし合いながら、
暮らしは続いている。

普段しない作業というのは、
懐かしかったり、新鮮だったり。

こんなことをやってもらってたんだ、
ということも気付けてよかったと思う。


 雨が降るようになって気温が下がるにつれて、
田んぼも随分色づいてきた。

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 畑の方も、雑穀、小豆、えごまと
順番に収穫期を迎えている。

今年は長雨の影響で、全体収量が減りそうで、
その分販売量は減るけれど、
畑の収入は我が家の収入の全体からしたら一部。

春から秋の私の労力はそこにかなりそそがれているが、
そこそこお金を介在させなくて成り立つ暮らしが、ここにある。

秋の間家族の食べる分、
冬越しのストック分も残せる分は、おそらく採れる見込み。

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(雑穀収穫中)

自分達の食べていくものを心配しなくてよい、
という状態はそれだけで
暮らしに、気持ちに、安定と安泰、
広い意味での豊かさをもらたしてくれる。


それって具体的には、世の中になにが起きても大丈夫って
どこかで思えてるってことで、

それってすごく強くて大きいし、
ありがたい。

これからもずっと、私はそのことを
大切に、愛おしく、暮らしてゆく。


 友達の家の大工仕事の手伝い&勉強に呼んでもらい、
2週間近く家を空けていた自流が戻ってきて、
また家族6人が揃った。

狭い居間にごちゃごちゃと人がいる感じ、
大好き♪

もうすぐ稲刈り。
新米、楽しみだね。

                      (なつめ)





 




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