「指が痛い。ちょっと色変わってる」
それは昨日フライパンの持ち手の根元、鉄の部分を握って火傷をした彼女からのメールだった。
けれど恐らくそれだけの意味合いでは無いだろう。
「そうか。大丈夫?」
心配をする言葉は必須だ。でなければ、何度でも同じ文章が送られてくる。用件はそのあとで良い。
「今日の夕飯は?」
「なうぃ」
"ナウい"ではなく、"ない"の意味だ。想像はついていたので、コンビニに寄ってカップ麺を買って帰る。
僕がタイマーをセットしていると、彼女はヤカンからカップ麺に沸騰したお湯を注ぎ始める。と同時に、盛大に左手目掛けてぶっかけた。
どうやら、彼女が使える調理器具はないようだ。
了
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