『不器用で』感想 面白くてしびれた
ラランドが凄い
最近、お笑いコンビのラランドにハマっています。
YouTubeやラジオ、出演番組を漁っています。
サーヤさんとニシダさんのコンビ。
一番最初のきっかけは、私の好きなアイドルである江籠裕奈さんが、SNSでサーヤさんが好きだと言っていて、顔も少し似てるなと思ったことです。
サーヤさんは発想がぶっ飛んでて面白いです。
面白いし歌もうまいし個人事務所の社長だし、天才だなと思います。
ニシダさんはいわゆるクズ芸人で、サーヤさんにボロクソに言われてるのがコンテンツとして面白いです。
実際に引いちゃうようなエピソードもあります。
ツッコミがうまくて、言語化もうまくて、頭の良さがうかがえます。
作家のニシダさん
ニシダさんは、作家でもあります。
「普通はネタ書いている方が小説を書いて、ネタ書いてない方が音楽活動をするけど、ラランドは逆」とのことです。面白い。
2023年7月に出版されたニシダさん初の短編集『不器用で。』を、遅ればせながら読みました。めちゃめちゃ面白かったです。友達にもおすすめしました。
ご自身でnoteにあらすじや裏話を書かれているので読んでみてください。
5つのお話から成る短編集。トーンはどれも似ていて、『不器用で』というタイトルも納得です。どれも本当に面白かったです。
共通して言えることとして、情景描写のたとえが豊かで、きれいでした。
回想シーンと現在進行形のシーンがなめらかにつながっているからか、入り込みやすかったです。
難しい言葉や漢字が多いのに、読みづらくないのも良かったです。
突飛なことは起きないけれど、じんわりと変わっていく心情がしっかりと描かれていて、私の好きな重松清さんの小説に似た雰囲気を感じました。
ニシダさん、天才肌なんだろうなと、ときめきました。
こういう本が読めて嬉しいです。
それぞれのお話の感想
ぜひ読んでほしいので、ネタバレを抑えながら簡単に感想を書きます。
『遺影』
中学生の時って、よく分らないままいじめられてたり、いじめてたりするよなあと思い出しました。途中で出てくる先生が、事情を察して導こうとしているのか、単純に思いついたことを言ってるのか微妙なところが良かったです。
『アクアリウム』
ちょっとグロいシーンがあり、生々しく映像が浮かんできて頭に焼き付きました。いちばん事件性があったかなと思います。主人公が同級生を見下してる感じと、先輩チームにあたるその二人と後輩チームの距離感(後輩も先輩を慕わない)がリアルだなと思いました。
『焼け石』
主人公が自分と似た属性だからなのか、いちばん印象に残って、面白かったです。嫌だと言わないし、そもそも嫌だと思っていないつもりでいる事象が、何かを削っていることは、自分も心当たりがありました。ニシダさんがその心模様をキャッチする人なんだなと知って、ニシダさんの人間性にハッとさせられました。
『テトロドトキシン』
書き出しがとてつもなく良かったです。絶対読みたくなります。序盤、主人公は、女性について、誰でも良いもしくは万人に好まれるような人が好きなように見えたけれど、実は、一般的に変わってるとされる人に惹かれることが分かって、すてきだなと思いました。
『濡れ鼠』
立場のある人の動揺が滑稽という意味で面白かったです。最後、たくさん走るシーンが目に浮かぶようでした。いちばん実写化してほしいです。
余談
実は私は数か月前から、仕事で知り合った50代男性Aさんが書いた小説を読んでいました。プロではなく、書籍化されていないのでデータをもらって読みました。その人ならではのテーマでしたし、小説を書いている知り合いは珍しいので、興味深かったです。
ただ、私と同じ20代の女性である主人公が痴漢にあうシーンから始まり、生理のトラブル、「モテモテ大作戦」、性暴力を受けるシーン、などが出てきて、そのうえにその方から感想を聞かれ、「どう?そういう経験あった?」とか聞かれていました。若干モヤモヤとしていました。
そのAさんの小説をちょっとずつ読み進めて、ようやく後半に差し掛かったところで、並行して『不器用で』を読み始めました。『不器用で』はページをめくる手が止まらず、そこそこ忙しい期間でも3日で読み切りました。
そして、ああ、Aさんの小説は正直あまり面白くなかったし、内容も、それを読ませてくるということ自体も、絶妙に気持ち悪かったなと気づきました。『焼け石』の主人公の気づきのように。
ニシダさんとAさんの力量のギャップにクラクラし、「Aさんの小説、何やねん」と反骨精神がわいてきました。そして私も小説を書いてみたいななんて思いました。
ニシダさん(の小説家の面と面白さ)に感謝とリスペクトをお伝えしたいです。