日本職業リハビリテーション学会第51回島根大会で『誰もが働きやすい職場環境づくり』について登壇しました。

令和6年8月24日 松江テルサ4階大会議室にて行われた日本職業リハビリテーション学会第51回島根大会に中小企業の経営者として登壇しました。
会議室は、全席満員で立ち見の方もおられるくらいの中での講演でした。

<誰もが働きやすい職場環境づくりとは>

 株式会社KUTOの新規事業としては、病気や障害で着替えに不自由を感じる人を幸せにしたいと言う思いから、身体に麻痺を起こしてしまった人や、身体が思うように動かない人、痺れなどで指先に力が入りにくい人、様々な要因でストレスを感じる方が着替えを楽に行えることにより、全ての人がファッションを楽しむ事が出来るようにする事業です。


 脇下に伸びる生地を使い、腕を通しやすくしました。ゴム式の袖口カフス、前立てにマグネットボタンを採用して簡単に自分で着る事が出来るスルースリーブシャツを開発し、製造販売しております。
 障害の有無に関わらず、みんな同じ目線でファッションを楽しめるという観点から、昨年、国際ユニバーサルデザイン銀賞を受賞しました。今年の春から、レディースデザインも販売も始めております。

 私が、障害のある方と一緒に仕事がしたいと思う理由の一つは、うちの子供は知的障害があります。そのことで、私たち家族は、楽しかったことも、悔しかったこともたくさん経験しました。今は、松江市内でB型の就労事業所で楽しく働いています。
スペシャルオリンピックスなどの活動で、色々な障害のある子供たちと活動をしています。沢山の障害のある子供たちと接する中、一般就労で働けるようになる子が増えれば良いなと思います。


 島根県と言う地域は、64万人と人口が少なく東西約230kmあります。隠岐の島もあります。若い人は、私もそうでしたが、県外へ行くのが当たり前のようになっています。人口減少と若者の人口流出は、私だけではどうしようもない問題なのですが、島根に残って仕事がしたいと言う人に、働く場を提供することは出来ます。
スルースリーブの仕事のように我々の仕事は、誰かが喜んでくれる服。それを未来へ繋げ夢を広げてゆく事業と思っていますので、島根でもこういう仕事が出来るんだと言う事を伝えてゆきたいと思っています。
そして障害をお持ちの人は、なかなか一人で県外の生活をすることは難しいと思います、生まれた地域この島根で生活し、仕事をしてくれる貴重な存在だと思います。だから、やりがいのある仕事、活躍できる仕事をしてもらいたいと思います。

 仕事の面では、いかにシンプルにして、本当に難しい仕事以外は、ある程度、誰がやっても出来るように改善していかないといけないと思います。
そして仕事の切り出しは、当社は、縫製ですので、工程の中で自動ミシンを使う工程を作る、そうすることで、布をミシンにセットして、スタートスイッチを入れると縫える、完成すると言うやり方をいくつかの工程で行っています。
仕事を工夫することで、障害のある人も、クオリティの高い仕事が出来るようになり、他の社員も、仕事を休む時も、代わりに入ってくれる人が出来やすいというメリットもあると思います。彼女の場合も、自動ミシンでの作業を行なってもらっており同じクオリティの商品を製造することが出来ます。

 何のために障害のある方を雇用するのか。障害者雇用率達成のために雇用することが目的なのか?仕事で役に立つことが目的なのか。
障害のある方は、障害者雇用率のある会社に雇われると思われる人が多いのではないでしょうか。島根県には、人が少ないそして雇用率のある企業も少ない、我々中小企業には、求人しても中々人が来ないと言う現状があります。障害のある方に来てもらって活躍できる環境を作って行かないといけないと思っています。
当社では、学校や就労移行事業所などから就職を目指さない実習受け入れも行なっています。第一歩を踏み出す人にはこれが大事なのではないかなと思っています。

私が思う働きやすい会社とは、
 私たちのようなものづくりを行なう会社は、取引企業の下請け仕事をしていることが多いと思います。下請けを行なうことが悪いわけではありません。私は、自社の事業を如何に行っているのか、自社の事業の役割をしっかり把握していることが大事ではないでしょうか。一方的な下請け仕事でなく、自社の考えで事業を行なっている会社は、自社に価格決定権がありますので、付加価値の高い仕事が出来るようになると思います。
では、障害のある人を雇う考え方ですが、一番は、先ほど話した仕事だと思います。
 付加価値の低い仕事をしていると、働く意義を見失なってしまうのではないかと思います。
 働く意義を見失うと、目先の売り上げを立てるための事業になり、納期や単価をこなすための仕事となってしまいます。
時間外労働を必要とする事業になってしまうと、だんだんと会社が疲弊してしまうんじゃないか。この疲弊した中(ギスギスした中)では、障害のある方が働くには、とても働きにくいというか、他の社員もみんな働きにくい会社だと思います。
 これで障害のある方に働いてもらえるのでしょうか。
弊社は、自社事業と異業種転換により、付加価値を上げ、残業ほぼ0時間、有給休暇年間平均10日以上、年間休日116日となり、働きやすい労働環境に向かっています。
 障害のある方と接するときに、社員同士がぎすぎすした関係の中であれば、上手くいかないと思います。
 まずは、今いる社員のみんなが働きやすい会社になるには、どうしたらいいのかを経営者が考えるところから始まるんじゃないかと思います。

当社では、社員とマネージャーが1on1ミーティングで会社の事自分の事を伝えあい、共有することで気持ちを伝える事が出来る心理的な安心安全な職場を目指しています。
 全体セミナーでは、私が1時間くらい理念とビジョンを社員に語ります。社長の言葉で社員に仕事を通じてあるべき姿ってこういう世界だよね。みんなどう思うと、社員に考えてもらい討論する。それにより、少しずつ自社の事が解ってきていると思っています。
社員に理念やビジョンなど浸透させていくのは、砂漠に水を撒くようだとよく言いますが、地道に水を撒いていれば、10年後には、そこにオアシスが出来ている。
 働きにくさを感じる人も、同じじゃないかと思いますが、毎日または定期的に、会社に来る事が出来れば、認めてあげて、少しづつでも、前に進んでいたら。目に見えなくてもちょっとづつ成長していっていると思います。
社員と一緒にどう育ってゆくかと言う共育の考え方で、障害をお持ちの方や働きにくさを感じる人が一人の人として活躍できる事業にしてゆきたいと思っています。


 人が少ない地域だからこそ、働きにくさを感じる人など多様な方々に如何に働いてもらえるか、そしてその人達に働き甲斐のある仕事を提供できるかが力になり、
今後、そういう企業が増えてくれば、島根の企業の魅力になると思います。


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