#4 勇者たちの中学受験を読んだ話
話題になっていた「勇者たちの中学受験」(おおたとしまさ)を読んだ。
3つのお話で構成されていて、3人の受験生とその家族がどんなふうにして2月1日を迎えるか。そこまでの道のりと家族の背景。どんなふうに受験日程を組んで、どんなふうに進学先を決めるのか。主人公の兄弟(兄・姉)も含めた中学受験のストーリが描かれているので受験の話は3つだけではない。
塾名も学校名も偏差値も実際と同じなので、とてもリアルでそこもまた読み応えがある。こんなに優秀な子が転落するの?とにわかには信じがたいけれど、実話を元にした創作(創作部分は登場人物のキャラ設定や心情描写など)で受験に関する事実関係はそのままとのことなので、やはり本当に存在するんだと思う。
いろんな家庭やいろんな親の考え方があるよね、と思いつつ、どの親御さんにも自分を重ねることができてしまう。子どもの成績なのに、自分の成績ではないのに、成績が良ければ天狗になるし、悪ければ悶々としてしまう。時に感情的になって怒鳴り散らしたりする。成績を伸ばすために、あのクラスに入るために、あの子に負けないために、子どもに過剰なまでに与えすぎてしまう。新小4から小6のどこかでとった高偏差値やA判定B判定に依存し、我が子の学力はもっと高いはず、あの中学だって狙えるはず、本気を出せばうちの子だって、、、と思いながら、なんども模試の結果に裏切られていく。あぁーーーーーー、なんて予想できる未来だろうか。これは本当に中学受験の「悪」の部分でしかないと思う。でも子どもが中学受験生になったときの自分がそうならないとは言い切れない。反面教師として心にとどめておきたい言葉がたくさん出てくる。
「中学受験は第一志望に合格できるのは3割」と言われているが、まさにそうで、第一志望とは?中学受験の成功とは?と考えさせられる話ばかりだった。2月1日の入試スタートから合格発表・進学先が決まるまでの描写はいずれも息を止めて読んでしまうほど。いずれ自分にもこの日が来ると思うと胃がぎゅーっとなる。
受験をするまえに、本格的な中学受験世代に突入する前に、読んでおいてよかったと思える一冊だった。
おおたとしまさ先生は、「なぜ中学受験するのか?」という本でもそうだったけど、中学受験の沼にハマらないように警告している。受験必勝法ではなく、受験必笑法が大事。負荷が大きすぎて子どもが潰れてしまったらそこまで。家族が崩壊してしまったらそこまで。受験が終わっても、子どもの人生は続いていく。
中学受験の価値は合格という結果にあるのではない。中学受験を通して、結果ではなく、本当に身につけてほしいものはなんなのかをよく考えたい。結果ではなく「過程」がなによりも大事。そういうスタンスで子どもたちと一緒に中学受験を戦っていきたい。
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