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メルマガ1000号!達成記念)「新規事業」と「モチベーション」~僕が「新規事業」にこだわり続ける理由は?

おはようございます、「発明塾」塾長の楠浦です。本日は、「メルマガ1000号達成!」記念で、企業内発明塾「新規事業に対するモチベーション」についてよくいただく質問への、僕なりの答えを配信したメルマガ(バックナンバー)を紹介します。

新規事業は大変!?「モチベーション」に関する質問

例えば以下のようなご質問が、よくあります。

・楠浦さんは(新規)事業に取り組むモチベーションを、どのように維持しているのか?
・そもそも楠浦さんは、技術屋なのに、なぜ(新規)事業にばかり取り組むのか?

なのに、なぜ(新規)事業にばかり取り組むのか?

表現はいろいろありますが、上記の2つに集約できる質問が、それなりにあります。
序盤の「8週間パッケージ」を受講されている間に、いただくこともありますし、「企業内発明塾」終了時にいただくこともあります。
タイミングは様々ですが、やはり、皆さんの疑問や不安には共通点があるということでしょう。

過去の回答を抜粋編集した、「模範解答」(笑)を、以下に示しておきます。
実際には、各自各社の置かれている状況に応じて、言うこと言わないこと、あるいは、伝え方も様々です。
でも、1000号達成記念なので、「僕なりの模範解答」を書いておきます。
企業内発明塾OBOGの中にも、ここまでの話はしていない人もいますからね。

新規事業に取り組むモチベーションを高めるルーティン~モチベーションは「未来の解像度」から生まれる

まずは、新規事業に取り組むモチベーションを高めるテクニックというか、「ルーティーン」的なもの。
これは、たしか「学生版発明塾Blog」のどこかに書いているのですが、「毎週土曜日の午前中」に、以下の作業を行っています。

・2004年の前職ナノテクスタートアップ創業時に開始
一週間の会社(事業)としての進捗の振り返りを、メンバーの全日報をもとに実施
・上記を反映し、「文字ベース(絵を排除)」の事業の企画書(全社員が見れるもの:目的からアクションプランまでを網羅したもの)を改訂
・企画書を音声読み上げソフトで音声変換し、携帯音楽プレイヤーに転送
企画書音声ファイルを、時間があるときに常に聞く(念仏化)、これは土曜日に限らない

文字で解像度を上げておかないと正しく伝わらないし、常にイメージもできない、その結果、アクションにスピード感がなくなる(迷いや確認といった無駄が生まれる)ので、「念仏化」(発明塾用語です)を非常に重視しています。
現在は、音声化はやめ、携帯電話で常に見るようにしています。

僕は、モチベーションは「未来の解像度」から生まれると思っています。
手元の情報にもとづいて、常に解像度を上げていく
毎日情報は増えるので、毎日解像度は上がるはずです。
そうすると、モチベーションは勝手に高まりますね。

「こういう未来を実現したい」「そのために明日(来年)起こることは、これ」が、手に取るようにわかるかどうか。
新規事業の「一丁目一番地」だと思ってます。
これが全社(チーム)内で共有できれば、全員が同じスピードで動けます。

結局は「預言」の話です。
「預言の解像度を上げる」のが、経営者の仕事だからです。
そのためには、実行スピードをあげて、預言に高速で近づいていくことも大事です。
遠くからでは、見えない部分、わからないこともありますからね。
そして、近づいた分だけ上がった解像度で、預言を書き直す。

これの繰り返しを、毎週やるわけです。
「知財活動」と「エッジ情報」の関係でも、実は全く同じなのですが、今日はその話は割愛します。
と言うか、「エッジ情報」は、僕の経営ノウハウから生まれた調査法/発明法なんですね、実は。

技術屋なのに、なぜ(新規)事業にばかり取り組むのか?

これは結構不思議に思う人が多いようです。
技術屋は、技術の研究や技術開発をするのが仕事、と思っている人が多いのかもしれません。
答えは、ケースバイケースでいろいろありますが、頻度が高いものを挙げておきます。
全部話すと、本が一冊書けると思います(笑

技術屋の仕事は、「その技術 ”でしか解決できない” 課題の解決」だと、僕は思っています。
これがまず一つ、僕にとって一番大事なことです。
他が良ければ、他でいいんです。
発明塾の教えでいうと「課題の独占」の話になります。

そもそも経済合理性がないことは、決してやってはいけない。
資源は有限ですし、無益な競争(戦争)が起きますからね。
村田製作所の創業者が、父親から「他の人の仕事を取るようなことは、絶対にするな」と強く言われたそうです。
まったく同感です。

そして、「世の中に出なければ、まったく意味がない」と僕は考えているんですね。
残念ながら、事業・実業の世界に「努力賞」はありません
世に出なければ、社会にとって、顧客にとって、価値はゼロだというのが僕の感覚です。
ちょっと極端で誤解を招くかもしれないけど、あくまでも僕の感覚として、こうなんだということを明確にしておきます。

事業とは、「顧客の不の解消」を通じた「社会の不の解消」(「顧客課題の解決」を通じた「社会課題の解決」)であり、その結果の総和で価値が測られる、と僕は考えています。
でも、それらを直接測定するのは難しいので、仕方なく「売り上げ」「利益」「企業価値(時価総額)」などの代替指標で測っているわけです。
売れて、儲かって、株価が上がってくることが、あくまで(精度の低い)「代替指標」だけど、顧客課題の解決を通じた社会課題の解決の「進捗の指標」だ、と僕は考えているわけですね。

繰り返しですが、あくまでも僕の考えであり、感覚です。
他に何か良い指標(数値)があれば、ぜひ世界中の経営者にご提案ください。
どの社長も、そういう提案を待ってると思います。

「技術が磨かれる」とか「技術として面白い」「難しい技術開発だからやりがいがある」とかは、僕にとってはあまり大事ではない
それよりも、「これ、世に出るんか?」が、僕にとっては大事
僕にとってはこれが全てだ、といってもよいかもしれません。

ついでに言うと、「技術」はむしろ「簡単」な方が、僕にはありがたいです(笑
僕は技術屋なんですが、できるだけ技術開発はやりたくない(笑
まぁ実際は、なかなかそうもいきませんけど。
そこに「他社にとっての」技術課題があるから、やられてない、ということも多いですしね。
しゃーないな、そしたら自分(たち)でやろか」という感じです。

個人的には、世の中に出ない技術・製品開発をやるのは、虚無感が半端ないと思います。
とにかく、世に出て、顧客の課題と社会の課題を解決するものを作る
そのためにどうするか
僕はこればかり考えてきました。
もちろん、今でもそうです。

「売れる」「勝てる」「儲かる」は、その一つですね。
まず、お客様に喜んで買っていただけるか。
そして、それが広がるという意味も含め、社会に受け入れられるか。
それに取り組むことを、会社として認めてもらえるか。

平たく言うと、顧客と社会と会社がOKすれば、世に出るわけです。
シンプルですね。
これをとことんまで追求するのが、発明塾です。
本当にやるべきことは、突き詰めると、いつもシンプルなんですね。
そして、シンプルでないと実行できません。

自分がなにがしか手掛ける技術・製品・サービス「でしか」解決できない課題を解決し、お客さまに喜んでいただき、社会に広く受け入れられ、会社が認めるもの。
それって、新規事業しかないんじゃないの?

僕が、カワサキ、コマツで技術を突き詰めて出した「僕なりの答え」が、これです。
ただ、人に押し付けるつもりはありません。
共感いただける方が、発明塾に取り組めばよいと僕は考えています。
事業が嫌い、数字が嫌い、とにかくサイエンスを追求したい、そういう人も大切です。
サイエンス(発見)があるから、技術や発明、事業があるわけですから、結局は役割分担です。

僕の場合、技術屋として技術を突き詰めると、新規事業をやるしかなかったわけですね。
実際、この話をすると、参加者からは「自分の技術開発の成果が世に出なくて、とてもむなしい思いをした」というお話が、数多く出てきます。
こういう人は意外に多いんじゃないかなと思っています。
少なくとも僕の場合、「使われなかった」「役に立たなかった」「見向きもされなかった」というのは、技術屋として最も悔いが残ります。

せっかくやるんだったら、世に出るものがやりたい。
たとえ裏方であっても、要素技術であっても、部材であっても、工場のラインの目につかないところにある部品であっても、誰の目にも触れない企業内のITシステムであっても、とにかく世に出したい。
そう思うのは、むしろ技術屋として自然な感覚なんじゃないかな、と僕は思います。
もちろん、多くの人の目に触れたほうが、満足感は高いかもしれませんけど、僕はそこまでの贅沢は言わないですね(笑

僕の場合、最初に手掛けたカワサキの「W650」(大型オートバイ)は、幸運にも多くの方の目に触れる製品でした。
今でも、街中や観光地で、とてもよく見かけます。
当時、よく売れましたからね、あれは。
久々の大ヒット製品でした。

しかしその後の「風力発電用コンポーネント」「ナノインプリント装置」「細胞培養容器」などは、その筋のプロしか知らない製品です。
外から全く見えなかったり、クリーンルームやラボの中でしか使わないものです。
それでも、別にいいんですよね。
誰かの「困りごと」解消のお役に立っていれば、それでOK。

なんで「独占」「高収益」と言うか。
これも結構、聞かれますね。
答えは簡単で、「その続き」「そのまた続き」が、どんどんやりたいんですよね。
「続き」をどんどんやろうと思ったら、実際のところ、かなり儲からないと出来ません。
もちろん、「ダントツ」「世界初」「顧客が泣いて喜ぶ」「ヤラレタ」であれば、独占・高収益にならざるを得ないので、結果論の部分もありますけどね。
でもまぁ、僕は「続きをどんどんやりたい」ので、やるなら、「めちゃくちゃ儲かるように」したいといつも思います。

ちょっと儲かったぐらいだと、経営者として次のリスクは取れないんですよね。
メンバーにも、良い給料も払えない。それだとやってても「オモロくない」ですよね。
そもそも「新規事業やってみたけど、あんまり儲かりませんでしたね」ってなったら、次、誰か新規事業やりますかね?
当事者も周囲も、まったく盛り上がらないですから、たぶん、誰もやらないですよね。
「新規事業や!とかいうて最初はよぅ騒いどったけど、結局何ひとつ儲かってへんらしいで、どう思う?」(大阪弁)と、陰口がまん延して終わりです。

実際に事業や企業を経営して、「オモロく」していくには、まず圧倒的に儲かる必要があるんですね。
儲かって、盛り上がって、みんなでリスクを取って(取れる気分になって)、「その続き」を実現してく。
ただ、それだけなんです。
決して「がめつい」(すごく強欲で抜け目ない、の意)わけではありません(笑
自分で言うのもなんですが、僕はかなり控えめだと思いますよ。

最終回であるとか中間報告会であるとか、あるいは、お会いして雑談ができる時なんかであれば、よくそういう話をします。
こういう雑談は、意外に大事ですね。
「技術屋」談義、と言えばいいのでしょうか。
企業内発明塾参加者で、こういう話が聞きたい方は、積極的に質問ください。

前職ナノテクスタートアップ設立から20年、コマツでの風力発電新規事業から22年、新規事業にこだわり続けている理由の、ごく一部をお話ししました。
気が付いたら、社会人として大半の期間、新規事業に入りびたりになっていますね(笑
「そのまた続きがやりたい」とは、そういうことですね。

だから僕の場合、「さっさと儲けて会社を売っ払いたい」とかは、まったくないんですね。
これもよく聞かれます。
さっさと儲けて、とっとと会社を売り払って引退しないんですか、と。
「FIRE」(ファイヤー)というような言葉も、ちょっと流行ってるみたいですしね。

でも、僕はそういうの、あんまり考えたことが無いんですよね、実は。

常に「この続きどうなるんかな」「続きはどうしたろかな」「もっとオモロならへんかな」と続きが常に気になってしまう(笑
ずっとそう思えるオモロいこと、オモロくて大変で終わりがないことを、そもそもやりたいんですよね。
弊社TechnoProducer株式会社の創業時に、あり得ないぐらい大変お世話になった顧問の先生が「この会社は、要するにライフタイムベンチャーですね」と仰っていました。

当時僕はあまりピンと来てませんでしたが、先生は僕の性格を見抜いておられたんだなと最近つくづく思います。
年の功ですね。
そういうのが分かる年齢に、僕もなってきたようです。

終わりがないことをやる、ってのは、意外と大事じゃないかなと思ってます。
もちろん、芸術とか学問とか、他にも終わりがないことはたくさんありますし、そういうのでもいいのかもしれませんけど。
僕にとっては、それがたまたま、新規事業と発明、そして知財だったということですね。

「技術屋」の新規事業を育成する上で、常に意識していること

あんまり長くなっても、またクレームが来そうですが(笑)、1000号記念として、いつもお話ししていることを、追加で紹介しておきます。
クレームも感想も、大歓迎です。
1000号達成記念ですから。

僕も最初はそうだったのですが、やはり技術屋は事業のことには疎い(笑
新規事業に取り組むと言っても、どうしてもモタモタする。
センスがない、勘所がわからない、「売れる」「儲かる」の知識がない

前職スタートアップで、僕が最初に自身のアイデア(医療ロボット)で企画書を書いた時、書籍「新規事業を量産する知財戦略」で紹介している同僚の後輩はそれを見てしばらくしてから、「労作ですね」とひとことポツリとチャットしてくれました。
当時から、社内のやり取りの大半は遠隔でしたので、こういうやり取りも全部チャットなんですね。
会う時間(移動時間)ももったいないし、会える時間帯にそもそも作業をしていない。

「労作」ってことは「名作」「傑作」ではないので、経営者目線で言うと「ダメ」ということです。
日本語は難しいですね(笑
文字通り昼夜を問わずやり取りして、何度も書き直しました。

こういうのを、僕は「不器用な努力」と呼びます。
書いては捨て、捨てては書く。
調べてはやり直し、考え直し。

わかりますよね、僕の言ってること。

あんまり進んでないけど、一歩一歩、確実に深まってくる。
この「不器用な努力」は、すごく大事なんですね。
これを察してあげることが、発明塾における僕の大事な仕事なんかな、と思ってます。
これを察して、アイデアを育てていく、これが僕の唯一の仕事かもしれません。

まぁ、そうは言うても時間は限られてます。
最終回になると、社長の立場で遠慮なく、企画のロジックと企画書の見せ方の悪いところを、ズバズバ指摘していきます。
頑張ったんやけど「世に出せなかった」という、「悔い」が残らないようにしたいんですね。
ただそれだけです。

ダメなままにしておくと、世に出ない。
「努力賞」は、僕はあげたいんですが、意味ないんです、事業・実業においては。
だから、ワークショップの後半では、かなり厳しいことも言います。
泣く泣く、心を鬼にして、言うわけです(笑

言わないと分からない人も、いるわけです。
やんわりいうと、分からない人もいるわけです。
さじ加減が難しいですが、できるだけズバッと言う。
で、「わかったよね、よろしくね」と。

ふわっと、ぼーっとしてると、ピリッとしなくて、はっきりしない。
ピリッとさせすぎても、育たない。
イメージとしては「育てつつ、絞り込む」っていう感じですね。
なんか、盆栽みたいな話ですけど、実際そうなんです。

いつも不思議なんですが、完成度を高めていくと、それぞれの企画は驚くほど異なってくるんですね。
似かよった企画というのは、企業内発明塾の歴史上、過去数百件を見渡して、まったくありません。
各自が考え抜いてエッジにたどり着けば、発明塾というレベルの高い世界の中でも、互いに差異化されてくるんだなぁと、いつも思います。

これは書籍「新規事業を量産する知財戦略」でも、学生の発明での実験結果として書いてますが、企業でもそうでした。
手法が同じなので、当たり前といえば当たり前ですが。

ホント不思議なんですけど、事実なんです。
それぞれに「ダントツ」になっていきます。
「各社の独自技術」「各自の経験や想い」が、「ダントツ」を後押しする部分もあるでしょうね。

完成度を高めていけば行くほど、「死角を突いた」「尖った」ものになるのが、企業内発明塾で生み出される新規事業の企画なんです。
まぁ、よう考えたら当たり前な気もしますけどね。
発明塾では「これは誰も、まだ考えついてない」「これは誰も、ようやらない」を突き詰めるわけですから。
そういう風に、毎日毎日、育成し指導してますから。

楠浦 拝

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