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プロジェクトの運営(Project Management)

2025年に開催予定の大阪・関西万博の準備が遅れていることが報道されています。特に海外参加者のパビリオン建設の遅れが指摘されています。原因は万博を管理運営する組織と建設関係者間の交渉が十分にできないことにあるようです。海外の参加者からは不参加表明も出てきています。不参加表明は、パビリオン建設費用の予算確保ができない参加国の国内事情によるところが大きいようです。
現在、木製大屋根が施工されていますが、リンクを作ると中央部のパビリオン建設用資機材の搬出入アクセスに制限が出て、さらに遅れるという懸念もあるようです。万博の予算は総額が2度増額されました。当初は1,250億円で1回目の変更は1,850億円、今回の見直しで当初予算の1.9倍の2,350億円となりました。
万博の前に開業する予定だった大阪IRの開業が早くても2030年になる予定という報道もありました。多くの課題を抱えている万博もIRも予定通りの開催・開業は危ういのかもしれません。
振り返りますと、これまで多くのイベントは工程が延びたり費用が膨らんだりして、当初の計画通りには終わっていません。2021年の東京オリンピックでは数々の不祥事もありました。ビッグイベントが計画通りに進まなかったということは、開催計画が十分に検討されていなかったのか、イベントを実行する組織の運営管理に不手際があったのか、あるいは両方に原因があったからです。少なくとも組織の運営手法に課題があったことは間違いないようです。
私たちは毎日仕事をしています。仕事は大きさには関係なく、どの仕事にも始まりがあって終わりがあります。始まりがあり終わりのある仕事は、一つひとつがプロジェクトです。私たち一人ひとりが仕事をしているということは、仕事の担当者としてプロジェクトに参加しているということです。参加者は集まってプロジェクトチームを組んで、プロジェクト(イベント)の進行を管理運営しているのです。
プロジェクトチームは計画通りにプロジェクトを完了するために、計画に基づいて工程と費用を管理運営します。チームが組織力を最大限に発揮するためには、チーム組織を立ち上げるとき、組織内ポストの業務(義務)と権威(責任)を明確にするこが最も重要です。チームメンバーの一人ひとりに能力があったとしても、各ポストの仕事内容が明確に規定されていなければ、プロジェクトチームとしての組織力は十分に発揮されません。
江戸時代の幕藩制度から続く社会の統治には、階級や年功を背景とした「力」による組織の運営がありました。将軍や藩主による「力」による統治は「民はこれを由らしむべく、これを知らしむべからず」を旨として行われていました。武士の「力」による社会の運営は、責任者が組織を合理的に運営しなくても、組織を思いどおりに動かすことができました。
今ではICTが叫ばれ情報公開が進んでいますから、プロジェクトの責任者が立場の「力」でプロジェクトチームを動かそうとしても、自由に動かすことはできません。プロジェクトも計画通りに進めることはできないのです。責任者は組織を運営する「コトの営み」の技術を理解しなければ、プロジェクトの工程も費用も管理できないのです。責任者がプロジェクトチームを江戸時代的な立場上の「力」に頼った運営をしていては、組織もプロジェクトも運営管理することはできません。
私たちの社会は誰もが自分の仕事に責任を持って組織に参加者しています。責任者はそれぞれの人が仕事をしやすいように環境を整える責任があります。責任者は「力」による組織の運営ではなく、組織の参加者を対等に扱う公平な運営を目指さなければなりません。チームが持てる力を十分に発揮するために、責任者にはフェアな組織の運営を心掛ける義務があります。参加者にはいろいろな違いがありますが「力」による組織運営が通る時代ではありません。
ズルズルと後れ続ける今の日本を、コトコトした歩みでも、前へ前へと進む日本へ変えていく時がきているようです。

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