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日本の課題(Present Issues from The Prime Minister’s General Policy Speech)

首相の所信表明演説は社会の運営責任者が日本の進む道を示すことが目的で、個別の事項に関する具体的な方策が述べられるわけではありません。日本が抱える課題を取り上げて、取り組む姿勢を見せるのが所信表明演説です。
私たちの生活にかかわる課題は、成長を伴わない経済、少子高齢化、地方の衰退、生活圏の社会資本整備、地球温暖化対策、多様化する社会に対応できていない教育など社会の全分野にわたっています。
過去4回の所信表明演説では具体的に次のようなことが話されました。
1        労働生産性の改善
持続的に成長する経済を目指すためには、労働生産性の改善が欠かせません。
2        少子高齢化
OECDの先進国では子供・子育て支援に対する公的支出がGDP比3%以上ですが、日本は2%に満ちません(OECD平均は2.34%、2017年)。
3        地方の衰退
東京一極集中のため、地方は都会と同じような生活をすることが望めません。
4        社会資本整備
今求められている社会資本の整備はビッグプロジェクトではなく、歩道や自転車道など生活圏の整備と水害や降雪の対策と施設のメンテナンスです。
5        教育と研究
OECDによると、2019年の日本の教育機関への公的支出のGDP比は2.8%で37か国中の36位でした。OECDの平均は4.1%です。
などです。
日本経済を継続的に伸ばすためには、最先端の分野に投資して「モノつくり」の新しい技術を開発することは必要です。しかし、新しい技術の導入によって日本の労働生産性が先進諸国なみに改善されたことはありません。課題解決の方策はいろいろありますが、令和の時代は高度経済成長期とは違いますから戦略の立て方と戦術の選択に昔と同じような方法を繰り返せばいいというものではないようです。
確かに昭和時代の成功した手法は忘れられませんし、前例を踏襲しておけば少なくとも責任逃れの口実になるかもしれません。経済が好調だったころを復習することは大切ですが、過去の成功体験は思い出でに過ぎないことを忘れてはいけません。高度経済成長のころと同じ手法では後れは取り戻せません。社会は変化していますからから新しい手法の導入が必要なのです。
また、人口減少時代を迎えて少子化対策が挙げられていますが、家庭が子供を育てることを基本にした現在の制度は根本的な見直しが必要です。異次元の少子化対策と言われている政策ですが、具体的な制度の修正はほころびが見えた所の手当てに終始しているように見えます。対応策は遅すぎるし少なすぎるようです。子供は国の宝ですから、社会が育てることを基本方針にした制度に変更していかなければなりません。
日本社会が抱えている課題への取り組みは待ったなしですかから、解決を先送りしている時間はありません。日本は今先進国脱落の崖っぷちに立っていますから、一つひとつの課題に対して速やかに行動を起こす時なのです。
課題の解決には痛みを伴うこともあるかもしれませんが、既得権を守ることが保守と勘違いしてはいけません。ただ長く続いているから伝統ではありませんし、伝統文化を守り続けることが保守というものではありません。保守とは時代に合わせて変化し続ける伝統を守り続ける文化のことです。新しいものを取り入れて変化し続ける伝統を長らく守り育て続けることが保守の文化と言えるのです。
さて、1月26日に召集される予定の通常国会で行われる5回目の所信表明演説では何が話されるのでしょうか。もし、裏金問題等の影響で喫緊の課題(Present Issues)への対策が遅れるようなことがあれば、日本はますます後れて先進国から脱落してしまいます。

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