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訪れた国

Episode 10 – Iran 2
 
先日(2022年3月23日)アメリカのマドレーン・オルブライト元国務長官が84歳で亡くなりました。オルブライトさんはチェコスロバキアのユダヤ系のお生まれです。彼女はクリントン政権で国連大使(1993~1996)と国務長官(1997.1.23~2001.1.20)を務められました。要職にあったときの彼女は、強硬な方だったと記憶しています。亡くなる前はロシアのウクライナ侵攻を鋭く責めておられました。
彼女が国務大臣だったころに、中央アジアのトルクメニスタンからイランを縦断してペルシャ湾へ出る鉄道建設計画について、日本とイランの間で円借款による事業化構想が話し合われていたことがありました。イラン縦断鉄道が開通しますと、中央アジアの他の国々からもインド洋へ出るルートが確保されるようになるのです。ロシアを利する可能性もあることが想定されるプロジェクトの計画でした。
2000年の頃イランに駐在する関係者から聞いた話によりますと、米国の国務長官から川口外務大臣宛てに「ロシアを利するようになるかもしれない鉄道建設を、日本の援助で行うことはいかがなものでしょうか」という電報が送られて来たそうです。この外交電報はオルブライト国務長官からだったと記憶していましたが、小泉内閣で川口順子さんが外務大臣を務められたのは2002.2.1~2004.9.27で、オルブライトさんとは重なっていませんでした。川口外務大臣の相手はブッシュ政権のパウエル国務長官(2001.1.20~2005.1.26)でした。
イランは経済制裁下でしたが、日本がイランの友好国であることに変わりはなく、1978年のイラン革命時も業務を続けた商社を中心に石油事業の権利は守られてきました。しかし、鉄道建設への援助は見送られて円借款プロジェクトは消えました。
イラン東南部の見渡す限りの土漠地帯に位置するラフサンジャン州はピスタチオの原産地で大規模なピスタチオ農園や銅の露天掘り鉱山があり、ラフサンジャニ氏(1989年~1997年の大統領)の出身地ケルマン州の隣になります。乾燥地帯のピスタチオ栽培には地下水を利用しますから、塩化物蓄積による塩害がありました。
 塩害緩和のために雪解け水が豊富なイラン西部の山岳地帯から500~600kmのパイプラインを引いて水を運ぶ計画がありました。プロジェクトを「ピスタチオ大作戦」と名付けて実行可能性調査に行きました。現地調査の報告書には、工事は施工可能ですが経済制裁が続くなかでの資金調達は不透明で信頼性に乏しいと書かざるを得ませんでした。もしも、支払いがピスタチオや銅で行われることになりますと、とても採算が合わないという結論となり「ピスタチオ大作戦」は幕を閉じました。
 時代が昭和から平成に代わる頃、代々木公園や上野公園周辺でたくさんのイラン人を見かけた時期があります。日本とイランには長い交流があり、1974年に締結された観光協定(1992年に一部停止)によって双方がビザ免除で入国し滞在できたのです。いろいろなイラン人がビザなしで日本へ来ていたようです。現在行われているイラン核協議にアメリカとイランが再合意するまで、今も制裁下のイランでの事業には厳しさがあることに変わりはないようです。

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