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訪れた国

Episode 25 – Scotland 1
 
 イギリスが四つの国の集まりだと知ったのは、イギリス人と一緒に仕事をするようになってからです。ユニオンジャック(イギリス国旗)は四つの国の旗が重ね合わせてできていることを教わりました。それまでイングランドやスコットランドなどの名前は地図で見て知っていましたが、それぞれが別の国だとは理解していませんでした。
 イギリス人は自分たちの国のことをUKと呼びます。USがアメリカを指すことは常識でしたがUK(United Kingdom)は聞きなれない言葉でした。でも銀行や郵便局でUKという表示をよく見かけましたから、イギリスをUKと呼ぶことにはすぐ慣れました。
 ウィスキーにスペイサイド産やハイランド産、島嶼産などがあり、モルト酒はそれぞれが全く違う独特の香りや味があるのを知ったのもその頃です。
 ロンドン人がニューカッスルを紹介して「borderの手前」と言われたので、「えっ、国境?」と思いました。彼らにするとスコットランドは国境の向こうなのですね。
ローマ帝国がブリテン島南部を征服(civilised)したころ、文明の届かない北方ではケルト人の侵入に悩まされていました。そこで、ハドリアヌス皇帝は国境線に防御壁(リメス)の建設を命じました。防御壁の遺跡はハドリアヌス帝の長城と呼ばれて、ほぼEnglandとScotlandをわけています。だから境界をborderと呼んでいました。
 ケルト人と言えばダブリンの空港にはケルト文化のお土産品がたくさんあります。おそらくスコットランド人とアイルランド人は同じケルト民族なのですね。スコットランドのフットボールリーグに、かつて中村俊輔が活躍したセルティック(Celtic)というクラブがあります。Celticはケルトと読めますよね。
男のスコットランド人が公式の場ではくキルトはケルトが訛ったのでしょうか?よう知らんけど・・・。キルトは素肌に直接はきます。バグパイプの音楽隊で御存じの通り、イギリス軍のスコットランド人部隊はキルトが軍服にもなります。ある時、歩哨がはいていたキルトが風にあおられて捲くれ上がったのを見たことがあります。
 グラスゴーにある町工場を訪れた時のことです。その町工場は新空港や地下鉄駅の化粧天井を製作していました。直径50㎜くらいのアルミパイプを、間をあけて並べた天井用の内装材です。天井に取り付けて真下から見上げると、隙間にコンクリートのスラブが見えます。前方を斜め上方向に見るとパイプがきれいに並んで見えます。
 町工場の普通の製品が外国へ輸出できるのは、コモンウェルス(イギリス連邦)のなせるわざでしょうか。日本の中小企業ではこうはいかないだろうな、と思いました。でも、東大阪や大田区の中小企業には人工衛星やハイテクに必要な製品を作る技術とワザがあります。後継者と職人さんの高齢化が心配ですが。
 郊外のゴルフのクラブハウスへお昼に行きました。なかなか立派なレストランで、夜は近所の人が集まる社交場になっているそうです。広い敷地にはキツネなどが出るそうで、ゴルフの他に狩猟もしていたと聞きました。ヨコの人間関係が根付いているイギリスならではのクラブでした。スコットランドはイングランドと全く違う雰囲気でしたが、社会の運営は同じ手法だと感じました。

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