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もう一度、物語が始まるかもしれないと思って

もう一度、物語が始まるかもしれないと思って、夜のドライブに出かけたんだ。遠い昔、あなたと行こうと約束していたはずの景色の良い神社を目指した。助手席には梨木香歩の新刊と新聞、それから食べかけの菓子パンとあなたが好きだったスヌーピーのキーケースが転がっている。僕はきゅっとさみしくなった。

季節はもう冬の入り口に差し掛かっていて、午前2時を差した時計はジーっと異音を流していた。世界でいちばん美しい時間を今夜なら過ごせるんじゃないか、なんて小っ恥ずかしいことも考えてみる。夜空を見上げたって、オリオン座と冬の大三角しか知らないのにさ。

どこか遠い国では戦争が起きていて、それとは全く関係のない理由で僕は毎日自分を呪っているのに、眠れない夜なんてもうしばらく過ごしていないのだから不思議だ。ばかなんだと思う。

帰り道のことを文章にするつもりはない。毎日の全部を言葉にしない自由は、とても大切だからね。この冬もこんな風に生きてみてもいいのかな。

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