Kusojinji

仕事は人事。趣味は漫画。

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最近の記事

「JKハルは異世界で娼婦になった」の感想を書く

昨今のラノベ〜なろう系タイトルの長文化を考えると、比較的短い中で「JK」「異世界」「娼婦」というキーワードをまとめた優秀なタイトルだと思う。「異世界JK娼婦」でも良いのかもしれないが、それだとエロ漫画っぽい。何故なったのか、そしてどうなるのかを想起させる点でも、やはりこちらの方が良い。 同じタイミングで異世界に転移した同級生の男子はチート勇者スキルを持っていた一方、主人公ハルには戦う手段も生活のための伝手もなかった。だから娼婦になるしかなかった・・のだが、作中での悲壮感は薄

    • 「しまなみ誰そ彼」の感想を書く

      開幕アイスピックで突き刺してくる系の作品である。 突き刺され、血が噴き出す。でもそれは淀んだ血。穴が塞がった後にはスッキリ爽快、新しい世界が見え始める。リストカッターの快感に近いのかもしれない。 LGBTQがテーマではあるけれど、それはあくまでも視点として。表現されているものはもっと普遍的なものだ。 「世界を敵にしてでも君を愛する」なんて荒唐無稽なSF設定でしか成り立たなそうな、誇張極まりないこの表現は、彼ら彼女らの人生には当たり前のように現れる選択肢でもある。その「世界

      • 「ご飯は私を裏切らない」の感想を書く

        女性版「鬱ごはん」と雑に言ってしまうのもありだが、こぼれ落ちるニュアンスをどうにか伝えたい。施川ユウキのしんみりするそれに比べると、こちらの読後感はとてもすっきりしたものだ。ダウナーなトーンの裏腹、とてもポジティブな姿勢が通底している。 かつてピーキーな感情を持て余していたが、いろいろあって折り合いの付け方を学んだ・・ みたいな背景を感じさせる作品は大抵好きになっている気がする。ともすれば人を殺しかねないような、もしくは自らの手首を掻っ切りそうな危うさをコントロールし、日常

        • 「異世界迷宮でハーレムを」の感想を書く

          端的に言って、面白くない。では、なぜ読んでいるのか。言語化が難しい。エロいからだとまとめてしまうのが一番楽ではある。でもエロいパートなんて実際そう多くはない。全体の数パーセント程度だろう。残る9割以上を無為に過ごしてもおつりが来るほどエロいというわけでもない。その9割には確かに何かがある。 本作の主人公は良くも悪くも平凡な人格をしている。「キャラクター」と称すほどのキャラ性すらない。そんな人が異世界に転移した。では、その人は何をするだろうか。 それはおそらく大半の読者が想

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          「ふたりエスケープ」の感想を書く

          締切りに追い詰められている時、仕事に行き詰まった時、誰だって現実から逃げ出す誘惑に駆られる。でも実際に逃げ出せることはそう多くはない。逃げたところで最後には追い付かれることは分かっている。だから結局は逃げない。しかし不思議なことに、そんな逃げない自分は誇れるものではなく、むしろ逃げられなかった自分を情けなく思ってしまう。 ふたりエスケープはそんな葛藤への清涼剤だ。メールを見たくない。スマホをぶん投げたい。金沢に行きたい。主人公の漫画家とその相棒の「先輩」は、そんな願いを代わ

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