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全宅ツイ不動産チンパンジー情報 第18号

■はじめてでもわかるクソ物件オブザイヤーの歴史


 はじまりはただの大喜利だった。

 「次世代に語り継ぎたい不動産プロジェクト100選」。不動産クラスタが自身の感慨とともにネタを放り込む。ツイッターにありがちな業界人だけがわかる面白ハッシュタグで終わるはずだった。
 ところがこのハッシュタグをまとめようと言い出した者がいる。まとめるだけでなく、集計してアンケートまでしようと言い出した。そしてそんな面倒くさいことをすいすいとやってのけてしまった。
 翌年の2015年にそれは「クソ物件オブザイヤー(KBOY)」と名前を変えた。当時は折りしもリーマンショックで痛手を蒙った不動産業界が再び潤い始めたタイミング。クソ物件(※)の種はそこかしこにあった。
 KBOYは2016年以降も続いた。毎年のように起きる不動産事件も相俟って、不動産クラスタの枠を超えて注目を集めるようになっていった。規模は年々拡大し、スピンオフ企画も続々と生まれ、今やツイッターの風物詩となりつつある。
 そんなKBOYももう6年目。インターネットを代表する奇祭へと育てるため、今年はさらに多くの人に参加してもらいたい。そんな思いから、KBOYを良く知らない人のために過去のKBOY優秀作品を紹介する。

(※)クソ物件とは、「オリティ高く、ンタクせずに、物件が与えたインパクトを表現していく」の略語である。(毎年コロコロ変わる)


過去のイベントの傾向とチャンプ物件

2014年 
 KBOYの前身にあたる「次世代に語り継ぎたい不動産プロジェクト100選」。第1位は男性陣の圧倒的な支持を集めた「例のプール」。

注目すべきは、「朝鮮総連中央本部」(2位)、「六本木TSKビル」(3位)といったきな臭い案件が上位に食い込んでおり、不動産にまつわる事件を笑いで供養するKBOY精神の萌芽を感じさせる。
 業界を震撼させかけた「グーグル不動産」(4位)にも注目したい。黒船面してやってきては撤退する不動産テックの様式美がここにはある。

2015年(エントリー数:82件)
 栄えあるKBOY第1回のチャンピオンは「コニファーコート成城学園前Ⅱ」。

旗竿地の「竿」に建てられた細長い形状から〝自然薯ハウス〟という異名がついた。投稿者の哲戸氏は、物件が出来た経緯を調査し、間取り図や周辺写真を逐次投下することで素材の味をさらに際立たせた。KBOYを勝ち抜くには、ネタの面白さだけではなく、「ビジュアル」と「ストーリー」が重要であることを証明している。
 この年の2位だった「ルサンク小石川」は今年(2019年)ようやく建築確認取り消しが決定。〝ゆかいなおとなりさん王国〟こと文京区で開発することの難しさを知らしめた。また「airbnb」(4位)は、その後の民泊法制定につながるなど、資料性という観点からKBOYに注目してみても面白い。

2016年(エントリー数:168件)
 投票数が倍増し、一気に競争率が高まった第2回は「メルカリアッテ」が受賞した。

メルカリのプラットフォームを活用し、不動産業者を介さないC2C賃貸市場が誕生……するわけもなく泥棒市場のような惨状となった(メルカリアッテは2018年にサービス終了)。ハッシュタグ(#メルカリアッテ不動産無限地獄)によって不動産クラスタを飛び出した盛り上がりを見せたのも本エントリーの大きな特徴だ。
 また、この年からサブイベント「クソ物件GO」がスタート。往年のクソ物件を撮影してツイートする競技で、健脚自慢の奇人が不死者のように全国を徘徊する祭典として定着する。優勝者は15箇所を巡ったtnihei氏。

2017年(エントリー数:372件)
 知名度の向上とともに第3回目のKBOYの投票数はさらに増加。そんな中、第1位に輝いたのは彗星のようにTLに現れたぷん太氏の「カーサ桜上水」。

分譲マンションの駐車場だけが売りに出てしまい、そこを購入した不動産業者が戸建てを建てたものだから、マンションが違法建築状態になってしまったという類まれなるクソ物件(その後、管理組合と不動産業者で和解が成立。物件は管理組合が取得)。
 ぷん太氏の受賞は、ニューフェイスでもツイートが面白ければ一夜にしてスターになれることの証左と言える。KBOYはすべての才能に平等である。
 この年は、地面師事件の「海喜館」(2位)、不動産業界のジャーゴンとして定着した「ツーブロックゴリラ」(3位)など豊作。2014年から万年2位に甘んじていた全宅ツイのグル氏はこの年も2位。 
 サブイベントの「クソ物件GO」は、前年優勝者のtnihei氏とようすけ氏が最終日まで鎬を削る熱戦を繰り広げたが、前回王者のtnihei氏が猛烈なラストスパートをかけて111箇所をめぐり勝利した。
 また、不動産営業マンが苦労話を延々投稿する謎のハッシュタグ「不動産営業マンはつらいよ」がゲリラ的にスタート。投稿が300を超える異様な盛り上がりを見せ、その後の書籍化につながることになる。

2018年(エントリー数:687件)
 2018年のKBOY優勝はやっぱり「スルガ銀行(エビどう?)」。

かぼちゃの馬車に端を発し、TATERUを巻き込んだスルガ案件は得票数が集まりすぎる懸念があるため、事務局で総量規制(関連エントリーを3つに分割。「かぼちゃの馬車」は4位入賞)をかけたにもかかわらず1位を奪取する横綱相撲ぶりを見せた。
 2017年2位だった「海喜館」は5位に。ポテンシャルはチャンピオン級ながら、事件発生のタイミングが2017年末だったことやスルガショックが勃発したことから、いまいち成績が振るわず不遇を囲った気の毒なクソ物件である。
 一方で注目したいのが「宗教ラブホがピストン脱税」(2位)、「ドリフうどん屋」(3位)というマイナー&地域密着系のトピック。マクロの不動産事件だけでなく、その人でなければ投稿できないツイートが上位に食い込んだことは今後のKBOYの新たな方向性を示しているかもしれない。
 サブイベント「クソ物件GO」は、絶対王者tnihei氏とライバルようすけ氏、ニューフェイスのrea氏による三つ巴の展開。チキチキマシン狂人レースは238カ所巡ったrea氏がまくって初のチャンピオンに輝いた。
 もう一つのサブイベント、不動産で稼ぐためのウル技を集結した「不動産大技林」にも多数の投稿が集まり、不動産業界のコンプライアンスの高さをうかがわせた。大技林の書籍化によって当局が動いているという噂があり、大技林の主幹であるようすけ氏の行く末に目が離せない。

見どころ

 面白間取りの祭典であるKBOY。今年はどんな面白間取りが集まるのだろうか。エントリーが始まる前から楽しみで仕方ない。
 さて、昨年はスルガに始まり、スルガで終わった1年だった。その余波はなお続いており、今年もスルガおよびアパートローン関係に関する投稿が上位に食い込むことは想像に難くない。エントリーを間近に控え、ネタを書き溜めている人も少なくないであろうから、これ以上の予想は控えるが、今年も人智を超える面白間取りにお目にかかれることを期待している。
 いよいよKBOYも6年目を迎えた。KBOYの集合知による資料的価値という点に着目したい。将来、今の不動産バブルが弾け、全宅ツイおよび不動産クラスタのアカウントが消滅した世界において、KBOYが学術的価値のある資料として注目される日が必ず来ると信じている。将来のバブルを検証するのは、貴方達が投稿する面白間取りにかかっていると言える。健闘を期待している。

参加したいけど投稿するネタが思いつかない貴方へ

 KBOYで優勝すると、不動産ツイッタラー業界における最大の名誉「ツームストーン」が贈られます。

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また、2位以下の入賞者にも副賞としてさまざまな豪華景品が与えられます。広いツイッター世界で一夜にしてスターの座に上り詰める1年に1度のチャンス、それがKBOYと言っても過言ではないでしょう。
 「参加したいけどネタが思いつかないんだよなぁ…」。そんなことでお困りのアナタにおすすめしたいのが、ウェブマガジン「全宅ツイ不動産チンパンジー情報」。今年の2月から月2回刊行されている本誌には、今年ファイナルにノミネートされるであろうトピックが盛りだくさん。バックナンバーはこちらからご購入いただけます。

 さあ、全チンを読んでアナタもスターになろう!

(文:かもめ君 @kamome81

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■特別対談 #全宅ツイの食卓


[11/1 お昼]

全宅ツイのグル(以下、グル):たまにはゆるい回もええかなと思って、今回は不動産屋さんがどんなもん食べてるかというお話をしたいと思います。まずはメンバーのご紹介。
肥えてるんは舌だけやぞ! デベ夫人!!
デベ夫人(以下、デベ):……グル、あとで手ぶらで全宅ツイ会館の裏に来てくれるかな?
グル:そして、餃子一人前500円で頑張る中華料理屋さんを立ち退かして、儲けたお金で一人5万円のランチを貪る! しらいしさん!
Yohei Shiraishi(以下、しらいし):感じ悪いw
グル:こないだ松川行ってましたね。昼間っからこれはあかんやろ。

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