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オプジーボと間質性肺炎

先日 オプジーボに原発不明がんに対する有効性が確認されたとのトピックがありました。

オプジーボの重篤な副作用に間質性肺炎があります。そして、まだ感染終息の見込みがみられない新型コロナ感染症の症状の一つに間質性肺炎があります。どちらにも共通するキーワードに”免疫”があります。

がんと免疫

がんは体の中の正常な細胞の遺伝子が変化を起こして異常な細胞(がん細胞)となり、異常に増えてある程度の大きさになったとき”がん”として発見されます。そしてがん細胞は私たちにとって、細菌・ウイルス同様に異物です。体内に異物があれば排除しようと免疫が働きます。しかし免疫が弱まった状態や、がん細胞が免疫にブレーキをかけることで免疫が弱まったりするとがん細胞を排除しきれません。

最近ではがん細胞は健康な人でも1日に5000個できるという説もあります。それでも皆が全員”がん”にならないのは、体内の免疫細胞ががん細胞を異物と認識して攻撃して死滅させているためです。このパワーバランスが崩れたときがん細胞が増えてゆき”がん”になります。

オプジーボとは・・

オプジーボは抗がん剤です。従来からある化学療法ではなく、免疫療法のなかに入る治療です。免疫療法とは薬ががん細胞を直接攻撃するものではなく、もともと体内に備わっている自身の免疫の力を利用してがん細胞の攻撃力を高める治療法です。

オプジーボの効き方を一言でまとめると、免疫細胞リンパ球のT細胞の働きを活性化させてがん細胞への攻撃を助けます。

免疫細胞は活性化された方が異物排除のためにはいいのですが、活性化しすぎると自身の細胞を攻撃する自己免疫反応を起こしてしまいます。免疫細胞の働きを調整するために細胞の表面に免疫反応をブレーキをかけるシステムが備わっていて免疫チェックポイントと呼ばれています。

がん細胞の中には免疫チェックポイントに働きかけて免疫の働きを抑えることで生き延びているものがあります。オプジーボはこの免疫チェックポイントが働かないようにして(免疫チェックポイント阻害薬)、結果的に免疫細胞のT細胞の働きを活性化させてがん細胞への攻撃を助けます。

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間質性肺炎

間質性肺炎の原因としてあげられるものに、①自己免疫疾患に伴うもの(全身性エリテマトーデス 強皮症などの膠原病)②アレルギー反応の結果に伴うもの(アスベスト 粉じん 羽毛 カビなど吸い込んでアレルギーを起こす)③抗がん剤・放射線による副作用 ④ウイルス性 などがあります。一方、原因が特定できないものもありそれらは特発性間質性肺炎と呼びます。

原因が特定できるものはどれも免疫反応が関わっています。③のオプジーボの副作用の間質性肺炎の場合は、オプジーボが免疫チェックポイントを阻害して免疫の働きが活性化することで、新型コロナウイルスによる間質性肺炎の場合は体にとって未知のウイルス排除のため免疫が過剰に働きすぎることで起きます。

そしてこの好ましくない作用(副作用)は肺だけでなく全身で起こっている可能性があります。

オプジーボの自己免疫反応に関係する副作用には間質性肺炎の他に、重症筋無力症 心筋炎 1型糖尿病 甲状腺機能障害 大腸炎などがあります。一方、新型コロナウイルス感染の免疫過剰反応による合併症は間質性肺炎の他に、脳梗塞 川崎病 血栓症などがあります。

免疫療法のオプジーボ

がんの治療方法は手術療法・放射線療法・化学(薬物)療法の三大療法に加え、新しい治療法として免疫療法があります。がんが局所にある場合は手術 放射線で治療できますが、がんが広範囲に存在したり、目に見えないがんの治療には化学療法が適します。

化学療法の中には、分裂して増殖するがん細胞に作用する薬があります。正常な細胞でも分裂の早い骨髄(血液の成分を作る) 口腔粘膜 胃腸粘膜 毛根細胞などは抗がん剤の影響を受けやすいため、感染しやすくなったり貧血 口内炎 吐き気 下痢 脱毛などの副作用がでやすくなります。

これら副作用の中の骨髄抑制は白血球の減少につながり、白血球から造られるリンパ球の減少にもつながります。このことはがん細胞の死滅のために働くTリンパ球を減らすことになります。化学療法でがん細胞がすべて死滅したときはよいのですが、残ってしまったときリンパ球が少ない状態であるとがん細胞が勢いづいて増えていくことになります。

オプジーボは免疫療法に入る薬です。自身の免疫を活性化させてがん細胞を攻撃させます。その作用から全身性のがんに効果が期待できます。

【オプジーボの開発には 本庶佑 氏 の業績(免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用)が大きく貢献しました。その業績により本庶氏は2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞されました。】

オプジーボは2014年に皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)に対して承認された薬です。その後保険適応が拡大され、手術による切除困難な進行性・再発性のある腎細胞がん、非小細胞肺がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、胃がんなど適応は拡がっています。

化学療法は免疫抑制の方へ働きますが、一方 オプジーボは逆の免疫活性の方へ働きかけます。

免疫を抑制がすぎるとがん細胞が増えることになり、免疫が活性しすぎると自己免疫疾患をひきおこしかねない。治療する上でリスク・ベネフィットの見極めはきっと難しいのではないかと想像します。

最近のトピック

オプジーボ 免疫チェック阻害に関する最近の話題を引用します。


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