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ダウン症のユーキくんと僕

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ダウン症のユーキくんと僕 (6)

ダウン症のユーキくんと僕 (6)

1)習慣をつくるドライブへ行く前に、お風呂に入る。

この流れが習慣化してきた。
声をかけなくても、僕の顔を見ただけで脱衣所へ行って服を脱いでいることもあるし、僕がやってくる前から自主的にお風呂へ入っていることだってある。
当初は早くドライブに行きたいがために、シャワーを浴びることしかできなかったけれど、いまではゆっくりと湯船にも浸かることができるようになった。
自分で洗体をすると洗い残しがあるた

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ダウン症のユーキくんと僕 (5)

ダウン症のユーキくんと僕 (5)

お母さんと僕とユーキくんの3人で、ドライブには行けるようになった。
1時間ほど、お母さんの車で市内を巡っては家に帰る。
そんな行程を、しばらくの間、繰り返していた。

だけど、「そもそも、お母さんとユーキくんとの関係が崩れていることも要因だったんだから、お母さんが支援に介入しないほうが良いのではないか」と考えるようになった。

改めて、僕とユーキくんの関係性を構築する必要があるのだ。

果たして、

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ダウン症のユーキくんと僕 (4)

ダウン症のユーキくんと僕 (4)

「ありがとう」

相手に感謝の気持ちを伝えるのに、とてもストレートで明快な言葉だ。

お母さんといっしょに、ときには拍手をしたり声を上げたりと、大げさなほど、僕らはユーキくんに「ありがとう」の気持ちを伝え続けた。

ユーキくんの表情も、少しずつ柔らかくなってきているのが分かった。

いっぽうで、昼夜逆転生活の要因になっていたiPadを使う時間を制限させてもらった僕は、ユーキくんに対して「代替品」を

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ダウン症のユーキくんと僕 (3)

ダウン症のユーキくんと僕 (3)

現在の姿から想像できないくらい、小さい頃のユーキくんはとても活発な子どもだった。

学校やスーパーで姿が見えなくなったり、自転車に乗っていなくなったりすることも頻繁にあったそうだ。

ドライブが大好きなユーキくんは、両親の車に乗るときは、いつも助手席に座っていた。窓から外の景色を眺めたり好きな曲を聴いたりと、長時間のドライブが何より好きだったという。

そんな話をお母さんから聞いているうちに、

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ダウン症のユーキくんと僕 (2)

ダウン症のユーキくんと僕 (2)

ユーキくんがYouTubeで観ていたのは、「ゴールデンボンバー」のミュージック・ビデオだった。お母さんの話によると、他にも「ポケットモンスター」や「お母さんといっしょ」、そして「志村けんのバカ殿様」などが好きで、よく観ているという。すべてユーキくんが学生時代に観たり聴いたりしていたものだ。

障害のある人たちは、余暇を自分で広げていくことが難しい。どんなに好きな音楽でもずっと聴き続けると飽きてしま

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ダウン症のユーキくんと僕 (1)

ダウン症のユーキくんと僕 (1)

現在、アウトサイダー・キュレーターを自称し、「アウトサイダー・アート」と呼ばれる独学自習の表現を追い求めている僕は、もともと福祉畑の人間だった。

2000年から、知的障害者の福祉施設へ就職し、がむしゃらに16年間働いてきた。いつも考えていたのは、「その人がどうすれば毎日を楽しく、プライドを持って過ごすことができるようになるか」ということ。

福祉施設を飛び出したあと、僕は地域で暮らす障害のない多

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