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2月のイチゴが、実るころには。

なんだか、もの悲しい、イチゴの話。

ホームセンターの片隅で


 わたしの知る限り、露地栽培するイチゴの苗は、10月ごろに植え付けるのは一般的だ。

 先の10月ごろに、それをしたい気持ちはあったのだが…。仕事でそれどころではなく…、気づいたころにはホームセンターの売り場から、イチゴの苗は消えていた。

 子どもらに、イチゴが実る様子を見せてやりたいと思っていたので、ちょっと残念に思ったのだった。


 それが、思わぬところから、転回を始めるもので…。


 本日ふと訪れたホームセンターで見つけた。

 ”あれっ。イチゴの苗がある。”

 おっ、と思って調べると…、マイナーな栽培方法ではあるものの、2月の植え付けというのもあるらしい。活着がやや劣るものの、家庭菜園レベルであれば低温遭遇の後の植え付けでも問題ない、ということなのだろう。

 喜び勇んで買い求め、家に連れて帰ったのだった。

子どもたちとイチゴを植える


 プランターを持ち出し、園芸用の培土をつめて、苗を3株植えてやった。苗は、まだ本葉の数も数えられる程度の小ささなので、だいぶんプランターの中身が寂しそうだった。が、まぁ、これから苗が大きくなっていくことも含めて、楽しめればいい。

 子らもずいぶんそれを楽しみにしている様子で、「あしたになったらイチゴたべれるかなぁ~」などと言っている。ほほえましいことだ。


 とはいえ、ちょっとの寂しさは、感じずにはいられない。


 このイチゴが実るころまで、わたしは、この子らと離れなければならないからだ…。

もの悲しきの、その先に


 月曜日に石垣島に向けて出発する。

 戻ってくるのは4月10日だ。


 …。


 あー。文字にすると、厄介感が増す。


 業務とはいえ、そこまでしなければならないのかと思うと、なかなかココロに重さを感じてしまうものだ。


 おおよそ2ヵ月弱も、家を留守にしなければならないのか。


 *****


 正直、この仕事を受けた頃はこんなにも暗鬱とした気分ではなかった。むしろ、「2ヵ月も一人暮らしできるっ!!」 と、内心湧き立ったものだった。毎日好きなように時間を使い、好きなように仕事をし、好きな時間に眠る。


 こんな生活ができるなんて、夢のようだとさえ思ったものだったのに…。

 いまのこの感情は、なかなかに想定外である…。


このイチゴが実るころには


 一緒に過ごす時間が増えるほどに、思い入れも、その分増していくのだろうか。自分はもっと、一人の時間が好きだったはずだ。


 子を含めた家族が、わたしの執着の一つになったということか。それはそれで、悪くないことだ。

 やっぱり家族が大切だ。

 みんなが幸せであればいいんだ。


 そう思って、前の仕事を辞めたはずだったのに…。なぜ、またこんなことになっているのか。

 結局、サラリーマンである限り、そのループからは逃れられないことに、否応なく気づかされる。


 あー。

 個人事業主になりたい。(← 小声で。)


*****

 このイチゴが、実るころには。

 子どもらと一緒に。

 食べたいものだ。


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