【ドラムはじめて物語〜その②】

前回のあらすじ↓
「試しに行ったドラム教室の体験レッスンでおだてられ、どうやら自分はドラムの才能があると勘違いしてしまいドラムを始める…」

こんな恥ずかしい逸話を持つさおりですがレッスンをはじめてから二ヶ月目、とある動きがあった。

そのドラム教室は楽器屋さんの一角で行われていたわけだが、楽器屋さんの隅っこにメン募のコーナーがあり、レッスンの帰りに何気なく眺めてみると…

「女性ドラマー募集」の貼紙が!!!!!

こ、これは・・・さおりのことかぁ!?
早くバンドでドラマーデビューしたかったさおりはそのメン募を見ただけで胸がドキドキ。こりゃ運命だな、絶対連絡しよう。

しかしそのメン募、よくよく読んでみると
「当方、完全プロ指向」
「中級レベル以上の方に限ります」
と、書いてあった。

ドラム教室に通いはじめて約二ヶ月…
「中級レベル以上」ってのに自分も含まれるだろうか?

(含まれねぇよ!!!)

そして「完全プロ指向」

プロかぁ・・・・・・・・・

なってもいいかなっ。

(バカか!)

そんなわけでそのメン募に書いてあった条件はほぼ当てはまらず・・・、唯一あてはまっているのは「女性ドラマー」ってことだけだった。

いま思えばまともに曲も叩いたことないのに、「ドラマー」だと思っていたあの頃の自分…穴があったら埋めてあげたい。

さぁ、みなさん、さおりの立場だったら、どうする?

条件に当てはまらないから諦める??

もしくは 

条件なんてのは無視して、とりあえず連絡してみる??

もちろんバカなさおりはなんの迷いもなく後者を選びました。
だって貼紙のタイトルが「女性ドラマー募集」だよ。
なんだかんだでそこが一番重要じゃね?
とまぁ、都合の良いように解釈し、その日のうちに電話をかけてみた。
行動だけは人一倍早い。

ぷるるるるるる~♪

さおり「あっ、もしもし?ドラム募集の貼紙見たんですけどまだ募集してますか?」

相手「ほんとに?女性のドラマーさん?いやぁ、うれしいなぁ~」

とまぁ、相手の方はさおりの登場を待ちわびていたご様子。
聞くところによると、女性ドラマーはあんまりいないらしく、いろんな所に貼紙をしたが、実際連絡がきたのはさおりがはじめてだそう。

しめしめ・・・。

そういえば書き忘れたけど、さおりがドラムをはじめた理由のひとつに
「ドラマーは一番人口が少ないから、きっといろんなバンドからひっぱりだこになるだろう」
という、またしてもナメた理由も含まれてました。

しかもほら、女性ドラマーなんて珍しくて、「カッコイイ」なんてモテちゃったりして??
と20代半ばにして中学生レベルの妄想をしてたさおり、やっぱりちょっと一回埋められた方がいいね。

そうそう、電話の続き・・・

聞くところによるとそのバンドは女性ボーカルのバンドでポップな感じのロックをやってますと。ボーカル以外は全員男。

ドラムはいまサポートにお願いしてるけど、その彼が多忙によりバンドを辞めるので次のドラマーを探してると。
女性ドラマーを募集したのは、「女性のドラマーさんってなんか華やかだしさ…」と。

まぁそんなことを話しました。

そして最後に…

「で、さおりさん…えっと、ドラム歴はどれぐらいなんですか??」

キター!!!
今回一番の難関!!!
さてさおり、クリアできるのかーっ!?

まぁここは嘘ついてもバレるだろうし
ちいさーぃ声で
「ドラム歴…二ヶ月です」と答えてみました。

すると彼の返事は…
「あっ、そうなんだ…。えっと、明日スタジオなんだけどよかったら見に来ます?」

まままままじでーーー!!
いきますいきます!!

ついにドラマーさおり、はじめてのメンバーと顔合わせをすることに。

翌日…

彼らのリハを一通り見させてもらった。
「そっかぁ…このバンドであたしはドラムデビューするのかぁ……」
まだメンバーになったわけではないのにすっかりその気なさおり。

そこにメンバーからのお声がかかる。

じゃあさおりさん、とりあえずなんか叩いてみてよ!

キ、キターーーーー!!

メンバーから期待の眼差しを向けられたさおり、ドヤ顔でドラム教室で習った4ビートを披露!

(ちーーーーん)

どんな演奏だったかは説明する必要ありませんね・・・。

叩き終わったあとにスタジオ内がシーンとしてしまったのをよく覚えています。

最初に口をひらいたのは電話で話したベースの彼だった。

「えっと…ドラムはじめてどれぐらいだっけ?」

「二ヶ月でーす♡」

あとで聞いた話だが、さおりが電話で「二ヶ月です」と言ったとき、彼は自分の耳を疑い「いま二ヶ月って聞こえたけど…たぶん…二年の間違いだよな…」と思い直したそうです。

そりゃそうだ、「中級以上募集」って書いたのにまさか初心者の勘違いドラマーが連絡してくるとは思わないよね、ごめんなさい。

そんな彼の勘違いから、運よく電話審査は通ったものの、実際のドラミングを見たらまず断られるだろうな…


とは実はこれっぽっちも思っていなくて、
まぁ頑張って練習すればきっとうまくなるし、彼らも貴重な女性ドラマーを手放したくないだろう。

と、このバンドへの加入を確信していたさおり…全く勘違いも甚だしい。

そして…リハが終わり…
「俺ら軽く飲んで帰るけどどうする?」

行きます行きます。てか、そこさおりの得意分野です!!

そして居酒屋にて、いまどうしてもドラムがやりたいこと、彼らの曲が気に入ったことなどを延々と語り

酒好きな彼らと初対面とは思えない楽しいひとときを過ごしました。

その居酒屋トークが良かったのでしょう…

なんと!!!

「じゃあとりあえず、一緒にやってみる?」

と、ドラム歴二ヶ月のさおりは
「完全プロ指向」のバンドに潜り込むことに成功したのです!!!

がっはははーっ!!

バンドマンのみなさーん!
こんな勘違い女があなたのバンドに入りたいと言ってきたらどうしますか?
お断りするのが正解ですよ。
後々、大変な苦労をすることになるからね。

さてさて、初心者ドラマーさおり、果たしてプロ指向のバンドでやっていけるのかーっ!?

つ・づ・く。

てか・・・「プロ指向」ってなんだよ。
あの頃、流行ったよね。笑


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?