ドラムはじめて物語その⑦〜バンド人生スタート〜

~前回までのあらすじ~
「とうとう自分が心から気に入ったバンドが見つかった。その名も悪影響。ヘンテコリンな名前だけどこれから頑張っていくでいっ!」

さてさて運命のバンド「悪影響」、翌週からスタジオリハ開始。
しかしそれはリハというよりも、ひたすら「さおりのドラム特訓」な日々だった。

クリックなんて聞いたこともなかったさおり、まずクリック練習からスタート。
しかしこれがまた難しい。
クリックに合わせてドラムが叩けない。
ギターとベースが入るとさらにクリックどころじゃなくなる。

そこでクリックを大音量でモニターから流し、三人でそれを聞いて演奏したり、とにかく特訓な毎日だった。
それは正直決して楽しいものではなかった。

リズムおたくの金髪ひろゆきはさおりの下手くそなドラムに日々イラついていてスタジオ内は険悪だった。

物こそ飛んで来なかったが、毎回のように罵声が飛んできた。
「もう帰る!一人で練習しろ!」とスタジオに取り残されることもしばしば。

よくあの時、辞めなかったなぁと我ながら思うが、彼の楽曲センスと歌声、やっと苦労して見つけた自分好みのバンドなのでとりあえずしがみついた。

(あの金髪め、今に見てろよ・・・)

そして悪影響加入から約半年後…特訓の甲斐あって、ついに初ライブ!

その頃、船橋にあった伊藤楽器の小さいライブスペース。
緊張しすぎてベース君のジーパンのお尻に刺繍してあったラングラーの「W」の文字をずっと見つめながら叩いたのを昨日のように覚えている。

それをきっかけにライブの本数はどんどん増えていき、ほぼ毎週ライブをやるようになった。
そしてさらに実力をつけるためにストリートライブを開始。

毎週土曜日、代々木公園に生ドラムを叩持ち込んで叩いていた。
今じゃありえないけど、あの頃はまだそれが許される時代でもあった。

ストリートはほんとに楽しかったが、代々木公園はしばらくするとポリスマンの取り締まりが厳しくなったので今度は千葉の柏駅前に移動!

SNSがなかったあの頃、ストリートは知らない人の前でバンドを宣伝出来る唯一の手段だったのだ。

興味を持ってくれた人は立ち止まって聴いてくれ、最初は2~3人だったそのお客さんもどんどん輪が大きくなりライブハウスにまで足を運んでくれるようになった。

さおりのドラムは相変わらず酷かったがそれにもかかわらず、悪影響は少しずつ大きくなっていった。

しかし、下手くそドラマーの他に問題児がもう1人…
こともあろうに、それはバンドの要でもある金髪ひろゆきだった。

とにかく彼はあの頃、頑なでヤンチャで難しい人だった。
浮き沈みが激しく、気分が乗らない時は最悪だ。

ライブのあとせっかく来てくれたお客さんに挨拶もせず膝を抱えて楽屋の隅っこで息を潜めていたり、ライブ中、暴言を吐くこともしばしば。

そんな問題児だらけの悪影響だったが
なぜかライブは毎回大盛況だった。

生意気にもマネージャーがついた。

深夜の音楽番組にも何度か出演したし、バンドマンの憧れ「日比谷野音」への出演依頼もあった。

しかしその日比谷野音に関しては直前になって企画者が行方をくらまし、お流れになるという悲しいオチがあるのだが…。

それから「学○へ行こう」の出演依頼もあった。
テレビ出演とはどんな形であれ、世間に名前を知ってもらう絶好のチャンス。

もちろん出ます出ます!!

…とノリ気だったのはさおりとベース君だけで金髪ひろゆきが「出たくない」と言い出した。

その番組「学○へ行こう」の出演条件は自分達の楽曲の歌詞を変えて歌うという決して音楽番組ではなくバラエティー番組だったからである。

「自分が精根込めて作った楽曲をバラエティーに出すなんて、そんなチャライの冗談じゃねぇ!」

作曲者がイヤがるならしかたない。
その番組への出演はお断りしました。

そしてその頃からひろゆきは自分のチャラついた金髪は棚にあげ、チャラついた活動をする悪影響に少し嫌気がさしていたようだ。

バンドのためならなんでもやってやる、というさおりとベース君とは打って変わって金髪ひろゆきのテンションは下降気味だった。

なので営業活動はもっぱらさおりとベース君と二人でやっていた。 

ある時はなぜか笑っていいともの「美少年コンテスト」にまで目をつけ、さおりとベース君とでアルタに並んでオーディションを受けにいった。

オーデションはあのスタジオ!
いつもテレビで見ていたテレ○ォンショッキングのあの場所に立ててちょっと感動。

美少年コンテストはもちろんシャレだが、もし選ばれて「悪影響ってバンドやってま~す」なんてお茶の間に放送されればそれなりに知名度が上がるのでは?などと考えたのだ。

オーデションは笑っていいとも放送の午前中に行われ、受かればそのままその日の生放送に出演!
というものだった。

こ・・・、これは!!
絶好調のチャーンス!!

しかし。

あっさり落ちたw

いまいちチャンスを掴みきれない悪影響だったがそれなりにファンも増えバンド活動は上昇!

しかしあの問題児、金髪ひろゆきだけはただ1人、ひたすら下降し続けるのでありました…。

さてさて今後の悪影響、一体どうなる!?

つ・づ・く。

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