見出し画像

ヒューマン・ドラマ『イ・サン』

毎朝の楽しみはテレビの『イ・サン』。
ウォーキング・タイムに重なっているので、最近は7時に家を出るか、ドラマの終わる9時10分に家を出る。ビデオもセットしているが、やはりテレビ生タイムで楽しみたいし、その価値があると思う。
実在の有名な王『イ・サン』。
父親が王である自分の父(イ・サンの祖父)に殺されるという悲劇が実話だけに政権闘争の凄まじさを実感させられる。
祖父、父、孫の間の愛情と葛藤。妃たちの闘いと悲しみ、画舫で働く下っ端役人、画員たちの心情も細かく描かれている。
カメラもコピーもない時代、
橋を架ける工事一つでも画員がその情景を画に書き、その複写画も描いていたのだ。
画は数字のように簡単に改ざんできない。重要な証拠となってイ・サンを窮地から救う。
感動しました~

『チャングムの誓い』では料理人や医女たちの仕事ぶりが少しは分かったが、イ・サンでは記録係としての画員たちの仕事が感動的だった。
もう三度目だが、見るたびに新たな発見と魅力がある。
けさ見ていて気付いたが、強烈にジェンダー差別を告発しているのだ。
イ・サンが「女性が画を描いてなぜ悪い。才能のある女性を登用してなぜ悪い。身分が低いから宮廷画を描かせない慣習が間違っているのだ」と痛烈に宮廷の慣習を批判。
現実のイ・サンがそう考えていたかどうかは問題ではない。
脚本家はイ・サンの口を通じて、現代に通じる差別、弱者排除を告発しているのだ。背景を現代にするとあちこちから面倒な批判が浴びせられることもあるだろうが、250年近く前を舞台にすると、「差別はいけない」というメッセージが抵抗なく心に染み入るのではないか……。
名もなく消えていった多くの女性絵師の象徴としてイ・サンの想い人ソンヨンは描かれているのではないかと、ふと気づいたのだ。
痛烈に身分社会を批判するイ・サンが身分社会の最高の地位の王であることは、ちょっと辻褄が合わないし、可笑しいとも言えるがそれはどうでもいい。
ひたすら理想社会を求め、身分の低い人や女性が正当に評価されることを目指すイ・サンはかっこいい。ステキだ。見ているだけで幸せな気分になる。
演じる俳優があまりイケメンではないこと、超美形でないこと、見るからに善良で誠実なフツーっぽい外見であることも親しみが持てて、毎朝会えるのが楽しい。
なぜ韓流時代ドラマが面白いかというと、王朝衣装に身を包んだ現代ヒューマンドラマであり、現代の見えない身分差別を告発し、また女性活躍社会の旗を掲げているからだ、と私は思う。
もちろん、まったく違う見方があって当然。どんな切り口で見ても楽しめる筋立ての巧みさ。
ああ、今朝もイ・サンに見とれてしまった……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?