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平安貴族の”ガス抜きの日”

かつては1月15日が成人式でした。今では景気対策で「連休を作れ作れ」の方針のもと、由緒ある「日付」が無視され、いったい、いつが「成人の日」なのかわからなくなりました。

なぜ、1月15日が成人の日に制定されたのか。その答えは古典に書かれています。枕草子第3段、一年中の楽しい行事を描いた段に「粥の木」のエピソードがめちゃくちゃ力を入れて書かれているのです。

旧暦1月15日は特別な節供。今のカレンダーでは2月中旬ごろ。梅のほころぶころでしょうか。

「望の日の粥」を焚いて、その粥を焚いた薪で皆でお尻のたたき合いをするのです。この日ばかりは身分差も男女差もありません。奇声をあげ、怒鳴り合い、罵り合い、泣きながら、薪を振り回してたたき合う「天下晴れての無礼講の日」。

かたみに打ちて、男をさえぞ打つめる。いかなる心にかあらむ、泣き腹立ちつつ、人をのろい、まがまがしく言ふも(不吉なことを言う)あるこそをかしけれ。内わたりなどのやんごとなきも、今日(けふ)はみな乱れてかしこまりなし。

15日の節供には「米、麦、粟、キビ、ゴマ、小豆、大豆」7種の穀物の入った粥を焚き、神さまに捧げ、健康祈願しました。

この粥を焚いた薪で女性のお尻を叩くと、子供が生まれると言われていたそうですが、そのうち、男女に関わりなく、上は宮中人から下は庶民まで、薪で殴り合いの大騒ぎ。

出産で母子ともに死ぬことが大半だった当時、子供が7歳まで育つことがとても困難だったこの時代、薪でたたき合いながら、健康長寿を祈ったのでしょう。

そのうち、それは……

身分による礼儀作法が厳しい日常のうっぷんを晴らすべく、上から下まで入り乱れて、追いかけあい、怒鳴り合い、たたき合いのバカ騒ぎになっていったのでしょうか。

「望粥の日」と呼ばれる 節供への思いをこめて、1月15日を「成人の日」にした、と私は勝手に思っていたのです。でも政治家はそんなことにはちっとも関心がないのですね。「連休にするから金使えー」しか頭になかったんでしょうね。

沖縄や九州で成人式の日に若者が大暴れするのは、千年以上の長きにわたるDNAのなせるわざかも、これも私が勝手に想像を膨らませていたことですが。

乳幼児の死亡率を含めると平均寿命が30歳にも満たなかったのではないかと思われる平安時代。そして今私たちは100.歳も珍しくない時代に立っている、なんか不思議です~。

1月15日、宮中勤めの役人たちは帝から小豆粥を賜ったそうですが、私は、出来合いの粒あんをご飯の上にかけて食しました。私なりの健康祈願をこめて。

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