日本の英語教育を果たして打ち破れたのか 二つの英語教育メソッドを対比するPart23
日本の英語教育が目指している到達点と、《草の葉メソッド》が目指している到達点を対比させてみよう。日本の英語教育が三年間の英語の授業で中学生たちに到達させる地点とは、次のようなテストに正答させることだった。
問一 次の各文の ( )内の動詞を適当な形に変えなさい。
Tom sometimes (go)to school by bus.
問二 次の各文の ( )で適切な方を選びなさい。
The light went out when I (took, was taking)a bath.
問三 次の各文を動詞の形に注意して和訳しなさい。
My sister is walking to school this week.
問四 日本文の意味に合うように( )内に適語をいれなさい。
あなたは週に何回ぐらい図書館に行きますか。
( )( )do you ( )( )the library ( )a week?
日本の中学生たちはこのようなテストに高得点を挙げるために英語の勉強をする。かくて九十九パーセントの日本人は、英語が話せないどころか、英語の新聞も本も読めない。
一方、「草の葉メソッド」のレッスンは次のように展開される。生徒はまず毎時間配られる日本文を、翻訳ソフトを作動して自分の英文をつくる。そしてその英文を完璧にそらんじて、英語の授業にのぞむ。
英語の時間は机が一対一で対話できるように並び替えられ、対話者と向き合った生徒は、まず課題で出された英文を交互に発表していく。その日のテキストは次のようなものだった。
第三課 いただきます──文化の発信
私の住む町品川とアメリカのポートランドは姉妹都市で、毎年交互に中高生の交換研修ツァーが行われている。私はそのツアーに参加することになった。私がホームスティしたのはピーターセン家だった。ピーターセン家は、私と同じ年齢のアンと、二歳下の弟ジョン、そして彼らの両親の四人家族だった。
食事のとき私はいつも胸の前に掌をあわせて、「いただきます」というのがとても不思議がられて、それはどういう意味なのだときかれた。私にもその言葉の本当の意味がわからなかったけれど、多分それはごはんが食べられることへの感謝の気持ちを伝える言葉ではないかと言った。「いただきます」という言葉は、ピーターセン家の人々の共感することとなり、食事のときは五人そろって、「いただきます」と言って食べるようになった! 私は日本語と日本の文化をポートランドに伝えたことになる。
対話レッスンは、まずこのテキストを翻訳した英語を互いに発表する。ノートに記された英文を読むのではなく、そらんじている英語を話す。そしてそのあとにフリートーキングになる。中学二年生の鏑木七海と杉本詩織が対話した会話を採録してみるが、筆者には彼女たちの会話をとらえる文体を創造する力がないから、ここは英語という文字に強引に引き寄せて記すことになる。さらに繰り返しや意味不明の発語はそぎ落とし、しばしば日本語がでてくるがその部分は日本語表記にする。
さて二人の中学二年生は三十分間、英語だけでどのような会話をしたのだろうか。
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