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第14回 ほんまる神保町の棚主として

 2024年(令和6年)5月26日、ほんまる神保町が、オープンして、ちょうど1ヶ月が経ちました。

今回は、僕の棚(30章1節)の売れ行きは、どうなったかを振り返ります。

はじめに売れた本は、網野善彦『無縁・公界・楽』(平凡社ライブラリー)です。

そのことは、既に「第8回 ほんまる神保町の棚主として」に書きました。

そして、その次に何が売れたかです。
なんと、同じく網野善彦の『「日本」とは何か 日本の歴史00 』(講談社学術文庫 1900 日本の歴史 0)だったのです。

出品したのは、文庫版ですが、実は、この本の親本となる単行本は、今でも大切に持っています。

網野善彦は、本書の冒頭『「日本論」の現在」で、

日本列島の社会において山野河海の世界、そこで主として生きる人々を、本気で調査・研究しようともせず、一言の下で「少数派」「基本的な生産に関わりない」として切って捨てたうえで構成された社会のとらえ方が、まったく事実に基づいたものにならないことだけは、強調しておきたい。しかしこうしたさまざまな弱点を克服し、広い視野に立った新しい歴史像がいかに豊かな姿をわれわれの前に現すのか、大変に楽しみな課題が無限にひろがっているということができよう。

と記しています。
本書の発行が、2000年10月24日であるように、シリーズ「日本の歴史」は、20世紀最後の歴史書であり、記念すべき「第00巻」が網野善彦の『「日本」とは何か』だったのです。この記念碑的な本が文庫で読めるのだから、幸せですよね😌

そして、3冊目は
ブリュノ・ブラセルが著した
『本の歴史』(創元社 知の再発見双書)

残念ながら、版元では品切れでしょうか?
amazonでは、少し高額で取引されています。

この本は、荒俣宏が監修しています。
読書ノート📖に残していた序文から引用します。

本書は、愛国家の国フランスらしい,まことによく練り上げられた書物史である。ふつう,書物の歴史というと,グーテンベルクから始まるのだが,そこは書物の概念が広く深いフランスのこと,なんとマニュスクリプト(手書き本)時代の物語を重要なテーマのひとつにしてしまっている。
かつて書物は,読むというよりも書き写すものであった。最初の世界的書物収集場となったアレクサンドリアでは,旅人が持参した巻物を一時あずかり,それを筆写して,コレクションを殖やしていったといわれる。古代から中世にあって,最も興味ぶかい書物とは,書物はなぜ,オリジナルよりもコピーに意義を有するのか?現代の出版物を考えればすぐに分かるように,書物の本質は伝えられることにある。「伝える」とは,つまり「メディア(媒介するの意)」であるといい換えることもできる。この「伝える」という行為は,まず,「他人に伝える」ことを目的とする。単に伝えるだけなら,本人の肉声でもいいわけだが,本人が死んだら肉声は消滅する。そこで未来に向けて「伝える」という第二の役割が生まれてくる。
こうしたメディアの機能を最も良く理解したのは、古代ギリシャの総合知を実現したアリストテレスだった。ー中略ー
書物自体はメディアであるから,厳密には叡智の「容れ物」といってよい。するとそこに,容れ物を作る人の別な趣味や思いが投影される。原著者とは関係なく,筆法を工夫したり,装飾を加えたりし始める。現に,イタリック体だのゴシック体だのといった書体や,中国でいえば楷書のような文字の形は,書物を書き写したり活字に組むための「文字デザイン」として成立するのである。
これに装幀や挿絵などを加えると,書物は原著者の肉声から離れて,独自の工芸品としての価値を有するようになる。この段階で生じる「工芸品化した肉声」への偏愛を,書物愛と呼んでよい。ー中略ー
本書のもうひとつの読みどころは,書物を販売する人々にかかわる歴史である。最初はどの業種もそうであるが,呼び売りや行商が主体であった。その結果,行商に適した軽い小冊子が民衆のあいだで売られ,「チャップブック」や「青表紙本」の誕生につながった。またその一方で,リヨン,フランクフルト,パリなどの大都市で定期的に開催された書物市も,重要な販売ルートであった。こうした書物市に,グーテンベルク自身も参加して自作の活字印刷本を売ったこと,などのエピソードも知ることができる。現在も国際ブックフェアの会場として栄えるフランクフルトなどの歴史的因縁もよく理解できる。
ー以下略ー

日本語版監修者序文 荒俣宏より

こうして序文を読み返すだけでも、ちょっと手離して残念な一冊でしたね💦

パピルスに書かれた『死者の書』
カエサル『ガリア戦記』の写本
グーテンベルク印刷機
本を売る行商人
フラゴナール「読書する若い女性」

著者のブリュノ・ブラセルは、フランス🇫🇷国立図書館司書長。
この本の参考文献も、いつか揃えたいと思っています。
え!揃えるって、どこに?
それは、いつか開業する自分の店ですよ😉

さて、その次は、

マクニール『世界史 上巻』中公文庫
マクニール『世界史 下巻』中公文庫
が揃って売れました!

マクニールの『世界史』については、
「第3回 ほんまる神保町の棚主として」を
お読みください。

そして、6冊目に売れたのは、
阿部謹也『ハーメルンの笛吹き男』ちくま文庫
著者の代表作です。

こちらは、『第8回「本を売る」ことに魅せられて』で紹介されていますので、ぜひチェックしてください。

そして、7冊目に売れたのは、
またしても網野善彦『日本の歴史をよみなおす』ちくま学芸文庫です。

本書のタイトルですが正確に書くと『日本の歴史をよみなおす(全)』です。なぜかと言えば、先に『日本の歴史をよみなおす』が1990年に出版され、『続・日本の歴史をよみなおす』が1995年に出版されました。この2冊を合本としたのが、本書(ちくま学芸文庫)なのです。したがって、読むとわかるのですが、以下の目次のとおり、「はじめに」「あとがき」が2回あります。

【目次】日本の歴史をよみなおす(全)
ー日本の歴史をよみなおすー
はじめに
第一章 文字について
第二章 貨幣と商業・金融
第三章 畏怖と賎視
第四章 女性をめぐって
第五章 天皇と「日本」の国号
あとがき
ー続・日本の歴史をよみなおすー
はじめに
第一章 日本の社会は農業社会か
第二章 海からみた日本列島
第三章 荘園・公領の世界
第四章 悪党・海賊と商人・金融業者
第五章 日本の社会を考えなおす
あとがき

また各章のタイトルのとおり、古代、中世などの時代区分とは違う区分で書かれていて、どの章から読んでも、日本の歴史にあらたな光をあてています。

この本は、網野善彦の本の中でも一般向けの著作であり、僕が現役時代、書店で「売った」本です。

ほんまる神保町に来るお客様で、未読の方は、ぜひぜひご一読ください。

それにしても、網野善彦さん強いですね。

7段ある棚の1段目

それにしても、自分の棚は、1段目(地上180㎝より上)なので、昇降台🪜に乗らないと取れないのですが、お引き取りいただいた方々ありがとうございました。

売上金額は5,830円💰となり、
棚代5,390円を上回りました。

計算上は、年4回転のペースですが
開店景気だから長くは続かないかな?!

でもオーナーの今村翔吾さんが
頻繁にテレビに出て宣伝しているので助かります。
(たまには自著を宣伝してください🙃)
今村翔吾さんの最新刊は『海を破る者』文藝春秋です。

つづく

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