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腕枕

背を向けたままの新に、アーサーは困り果てていた。人として暮らしてまだ三年余り、女心どころかちょっとした感情の機微すら彼にはまだ難しい。
「新」
「なに」
腕枕をしたい、と言ったらへそを曲げてしまった。その華奢な背中がアーサーには愛しく、そして。
「……寂しいです」
彼女の横顔がちらとのぞく。
「腕枕は囲われてるみたいでイヤなの」
「新は愛人ではありません」
「そうなんだけど」
そこで思いついた。
「なら、お互いにしませんか。構造上は可能なはずです」
「メカじゃないんだから」
やっと新が笑った。お互いをお互いの腕のなかに迎え入れ、ようやく二人は眠りにつく。
翌朝、痺れた腕を相手から引き抜いて、しばらく悶絶しながら笑った。

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