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真夜中の攻防

ふっ、と目が覚めてカーテンの影が目に入った。
まただ。意識ははっきりしているのに、俺の身体はびくともしない。足元には女の影、実体もないくせにずっしりと居座って自由を奪う。たかが金縛りと寝直してしまえばすむのだが、こう何日も続くといいかげん腹が立ってくる。
(今日こそやり返してやる)
ぐぎぎ、と力をこめると顔のない女の笑う気配がした。馬鹿にしてんのか。こうなったら徹底抗戦だ、手足にありったけの念を送り込み、とうとう力づくで縛りを解いてやった。
『なにするの』
「ほんとやめてくれよ、母ちゃん」
いくら心配だからって、生霊になってまで追ってこられても困る。その過保護が反発を呼ぶのがわからんのか。安眠の夜は遠い。

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