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運命の女神

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小説「運命の女神」完結済。 ー「聡子の話ではノストラダムスの予言通り、1999年に世界は滅亡していたらしい。」 総治と聡子。そしてそれだけでは終わらない世界。
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2021年11月の記事一覧

運命の女神 (1)

運命の女神 (1)

「運命の女神」

  あの頃のそれしかなかった世界

 生きる。とにかく課題は山積みである。
 状況は慌ただしいというより、全てが自分の処理能力を上回っている、という方が正しく、「大丈夫か?」と問われれば、何も考えずに「大丈夫」と答えてしまいそうな程余裕がない。「だめ」と答えて、「何が?」と問われても、きっと答えることなどできない。だから「大丈夫」。
 身体はまるで何かに密閉されているようだ。どこ

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運命の女神 (2)

運命の女神 (2)

   二、

 誰かにこの気持ちを伝えられれば、楽になるはずなのだ。
 それは計算と言うよりも、そうであってほしいという希望で、頭の中では何度も誰とはなしに自分を表現する瞬間を思い描いている。頭の中の自分はとても雄弁で、感動されたり受け入れられる。何らかの変化が起こる。そういう欲求。
 だいたいは叶えられない。
 「本当のこと」は話そうとしても言葉にはならず、また、誰もそんなことを聞きたいとは思っ

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